セイコー プロスペックスの「SBEJ009」を使う! コストパフォーマンスに優れたスタイリッシュなダイバーズ ウォッチ

2023.12.28

セイコー プロスペックスが2023年に発表したダイバーズウォッチ「1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン GMT」 Ref.SBEJ009を着用し、レビューする。ダイバーズとGMT機構を併載するSBEJ009は、ファッション性と実用性を高いレベルで融合させたコストパフォーマンスに優れたモデルだった。

セイコー プロスペックス SBEJ009

名畑政治:文・写真
Text and Photographs by Masaharu Nabata
[2023年12月28日公開記事]


カジュアルなスタイルにピタリと似合うSBEJ009。個性豊かなグリーンのダイアル&ベゼル

 今回、私がインプレッションを担当するのはセイコー「1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン GMT」、Ref.SBEJ009というダイバーズウォッチ。価格は20万9000円(税込み)という機械式腕時計としては、比較的、手頃なモデルである。

1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン GMT

セイコー「1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン GMT」 Ref.SBEJ009
自動巻き(Cal.6R54)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径42mm、厚さ12.9mm)。200m潜水用防水。20万9000円(税込み)。

 さて、編集スタッフから手渡されたセイコーのダイバーズ。過去のデータに基づいて、私の手首に合わせてあらかじめブレスレット調整をスタッフがしてくれていたが、実際に着用すると、ちょっとキツめ。そこで自宅に持ち帰り、まず最初に行ったのはブレスレット調整だった。

 一応、時計ライターの端くれとしてベルジョンの専用工具も持っているし、ブレスレット調整の経験は何度もあるので気楽にコマを足す作業を行ったが、このモデルに付いているブレスレットは中央のコマの穴にスリットの入った細いパイプが差し込んであり、このフリクションによってコマを固定する方式。

 ブレスレット交換用の台にブレスレットを差し込み、穴径にピッタリあったピンを差し込んだ工具をハンマーで叩いてピンを抜いたが、センターのパイプがポロリと落ちて、行方を見失った。幸い、すぐに見つかったのでそれを差し込んでコマを足し、ブレスレット調整は無事に終了したが、一般の方が自分で行うのは、あまりおすすめしない。必ず購入時にお店で作業してもらうようにしていただきたい、と実際に作業してみて痛感した。

セイコー ブレスレット調整

ブレスレットのコマは、古典的なピン式で固定されている。調整の際はピンを叩き、抜くことでコマを外せるが、この際にピンを留める役割を担うパイプが外れやすいため注意が必要だ。

 そんなわけで、やっと着用できる状態になった「セイコー プロスペックス Diver Scuba SBEJ009」だが、ブレスレットの作り込みと時計全体の重量感は、およそ20万円のモデルとは思えない高級感にあふれており、装着したときの満足感はひとしおである。

 まあ、あまり歳のことは言いたくないが、この歳になってくると軽い時計が良いな、と思うことも多いのだが、やっぱり腕時計はある程度の重さがあったほうが、装着したときの充足感が高いように思う。

 そして腕に載せたときのアピアランスだが、これはもう安定のセイコーダイバーズのスタイルであり、もはや伝説的な存在となった1968年に登場した、10振動ハイビート300m空気潜水ダイバーズをベースとするだけあって、日常生活はもちろん、アウトドアでの活動においても何の不安もない。

 そしてなによりこのモデルの大きな特徴はグリーンの文字盤とこれにマッチする艷やかなグリーンのセラミックス製ベゼルリングである。

1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン GMT

もはや時計業界で定番となったグリーンの文字盤。これに合わせるように、ベゼルリングもグリーンが採用される。ベゼルリングに用いられる素材は、高硬度で傷が付きづらいセラミックスだ。

 そもそもグリーンというのは、メンズファッションにおいて最も難しいとされる色。そのグリーンが近年、時計界のトレンドとなり、多くのブランドが採用するようになったのは、グリーン好きの私としてはうれしい半面、「本当にみんなグリーンを着こなしているのだろうか?」と不安にもなるのである。

 ただ、アウトドアの世界ではグリーンは当たり前の色であり、鮮やかなフレッシュグリーンから、くすんだアーミーグリーンまで、あらゆる色調のグリーンがウェアやギアに取り入れられているので、このグリーンのダイバーズも違和感なくそのスタイルに溶け込むに違いない。

 問題は日常での使用やビジネスでの着用だ。ダイバーズウォッチを日常で着用する風潮は、私の知る限り1980年代の頭に始まっているが、やはりそれなりにゴツいダイバーズウォッチをビジネススーツに合わせるのは違和感が拭えない。ましてその文字盤がグリーンとなれば難しさはなおさら。

 なので私としてはこのモデルをビジネスで着用するのはおすすめしないが、日常ではいっそのことイエローやレッド、オレンジなどの相対するカラーとマッチングさせた、メリハリの効いたコーディネートをおすすめしたい。


GMT針とロングパワーリザーブによる高い実用性を兼備した本格ダイバーズウォッチ

 ファッション的にはこんな印象だが、時計としての実用性はどうだろうか? 実はここが、このモデルの最大のアピールポイントなのである。

 まず時刻表示機能は申し分なし。針もインデックスも太く大きく、どんな状況でも時刻をはっきりと確認できるだろう。今回、海に潜ったりしていないのでダイバーズとしての性能は未知数だが、これも多分、大丈夫なはずだ。

1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン GMT

ダイバーズウォッチらしく、高い視認性がSBEJ009の魅力だ。グリーンに光る蓄光塗料によって、暗所での時刻読み取りも問題ない。

 日付表示は4時と5時のインデックスの中間にあり、これは原型である68年のダイバーズとは異なる点(当時のモデルは3時位置に日付があった)。日付窓がデザイン的な調和を乱すと考える私にとって、4時・5時位置の日付は実に理想的であり、「日付を知りたい」と意識したときだけ確認すれば良いのだから、この位置はベストである。

 さらにこのモデルには、いわゆるGMT針が搭載されており、時分針が示す以外の別の地域の時刻を表示させることが可能となっている。

 その操作は極めて簡単。ねじ込み式のリュウズを緩め、1段引いて時計方向に回すとGMT針が1時間ずつジャンプして24時制で他の地域の時刻に合わせることができる。なお、このリュウズ1段引きの状態で時計逆方向に回すと日付を進めることができるようになっている。

 これは前々から言っていることだが、世の中には凝ったGMT表示やワールドタイム機能を搭載したモデルがたくさんあるものの、結局、実際に海外旅行や取材に行った時に便利なのが、このモデルのようなシンプルなGMT針搭載機であることが多い、というのが私の印象。その意味で「プロスペックス Diver Scuba SBEJ009」は、旅行用の時計としても極めて優れた実用性を備えたモデルである。

1968 メカニカルダイバーズ 現代デザイン GMT

SBEJ009のGMT機構は、GMT針(副時針)を単独で調整する古典的なもの。リュウズの2段引きでローカルタイム(今、自分がいる場所のタイムゾーン)を合わせたあと、1段引きでホームタイム(生活の拠点がある場所のタイムゾーン)を合わせる。

 さらに、このモデルは約3日間(約72時間)という長いパワーリザーブが備わっている。私はロングパワーリザーブのモデルを手に入れるまでは、「パワーリザーブが長くたって短くたって、大した違いはないだろう」と思っていたが、実際に使ってみると非常に便利。一度着用し、そのまま放置しておいて別の時計を使い、またこの間の時計を着用しようとした際、まだ動いていて時刻修正の必要がない。これが想像以上に気が楽なのだ。

 この点も含め、この「プロスペックス Diver Scuba SBEJ009」は日常使いに向いた本格ダイバーズウォッチと断言することができるし、ファッション性と実用性を高いレベルで融合させたコストパフォーマンスに優れたモデルとして自信を持っておすすめできるモデルだと言えるだろう。


Contact info:セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012


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