2000年以降、各社がしのぎを削るようになったムーブメントの開発競争。とはいえ、「デザインや外装ではなく、ムーブメントで購入する腕時計を選ぶ」といったユーザーは、決して多くはないだろう。しかし、今回は一部の、ムーブメントのキャリバーナンバーを覚え、その歴史や用いられている技術を知り、魅了されているような“時計オタク”に向けて、「ムーブメントで選びたい腕時計」を紹介する。モデルは時計専門誌『クロノス日本版』編集長の広田雅将、副編集長の鈴木幸也、編集の細田雄人、鶴岡智恵子、大橋洋介が2本ずつ選出した。
『クロノス日本版』編集部おすすめのムーブメント
「時計の名作を挙げよう」というお題があれば、時計愛好家の数だけ、さまざまなモデル名が出てくるだろう。パテック フィリップの「カラトラバ」、オメガの「スピードマスター」、IWCの「ポルトギーゼ クロノグラフ」……。では、「ムーブメントの名作を挙げよう」というお題に対して、喜び勇んで回答するのは、“時計沼”の深みにどっぷり漬かってしまって引き返せない“時計オタク”しかいないだろう。
もちろん、近年では時計市場は成熟を見せており、深い知識を有したユーザーが多い。とはいえ、それぞれのムーブメントについて知っているとなると稀であり、そもそもキャリバーナンバーが覚えづらい。
しかし、語るべき(語りたい?)名作ムーブメントは少なくないこともまた事実。そこで今回は、ややニッチながら、『クロノス日本版』編集部の各メンバーが2本ずつ、お気に入りのムーブメントを搭載した腕時計を選出した。
編集長・広田雅将おすすめのムーブメント
①オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ」(Cal.3861)
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.2mm)。50m防水。123万2000円(税込み)。
ステンレススティールパーツを多く使うクロノグラフはどうしても磁気帯びしやすい。時計好きとしては磁気帯びさせないようにしたいが、ハイテク機器を筆頭に、身の回りに磁石が当たり前のように普及した現在、避けるのはかなり難しくなっている。
というわけで、普段使いのクロノグラフなら、Cal.3861を載せた最新のオメガ「スピードマスター ムーンウォッチ」を推したい。筆者はこのモデルが出たときに購入して、以来満足して使い続けている。
1万5000ガウスの耐磁性能に加えて、クロノメーターを超える精度を持ち、しかも、2万1600振動/時というロービートにもかかわらず、携帯精度も抜群に良い。
どんな環境下でも日差±5秒以内だから、普段使いにはうってつけだ。しかも、Cal.3861はハック機能が付いているため、針を逆戻しして秒針を止めるというテクニックを使わずとも、正確に時間を合わせられる。
前作に比べて時計がかなり軽くなったため、装着感も良好だ。ブレスレットのテーパーはやや付けすぎのように思うが、時計が軽いためヘッドがずれることもない。価格は上がってしまったが、内容を考えればやむなし。エントリーモデルでは決してないが、永遠の定番だ。
②ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・スモールセコンド」(Cal.822)
手巻き(Cal.822/2)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(縦45.6×横27.4mm、厚さ8.5mm)。3気圧防水。154万円(税込み)。
ジャガー・ルクルトのCal.822というムーブメントは、古典的な設計を残した、数少ない手巻きムーブメントである。設計したのは、ジャガー・ルクルトのロジャー・ギニャール。メカクォーツのCal.630系や、自動巻きのCal.899、Cal.975なども手掛けたムーブメント設計の名手だ。
Cal.822のムーブメントがいかに優れているかは、後に、A.ランゲ&ゾーネの初代「ランゲ1」や「1815」などが、Cal.822の設計を改良したムーブメントを載せたことからも明らかだ。おそらく、ジャガー・ルクルトは、A.ランゲ&ゾーネと共用することを前提にこのムーブメントを設計したのだろう。
薄いが、丸穴車と角穴車を受けの下に隠すという古典的な高級機の設計を受け継ぐほか、トルクの弱い主ゼンマイで高精度を出すという、一昔前のジャガー・ルクルトの設計思想を見事に体現している。
最新作のCal.822/2は、従来の緩急針に替えて、ショックに強く、等時性の高いフリースプラングテンプを採用する。そもそも精度の高いムーブメントのため、フリースプラング化のメリットは小さそうだが、緩急針がないため強い衝撃を受けても精度は狂いにくいだろう。受けの面取りが機械によるダイヤモンドカット仕上げに変わったのは残念だが、コストを考えればやむなしか。
副編集長・鈴木幸也おすすめのムーブメント
①F.P.ジュルヌ「クロノメーター・スヴラン」(Cal.1304)
手巻き(Cal.1304)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約56時間。Ptケース(直径40mm、厚さ8.6mm)。3気圧防水。要価格問い合わせ。
「ムーブメントで選びたい腕時計」というお題を聞いて、真っ先に浮かんだモデルが、F.P.ジュルヌの「クロノメーター・スヴラン」である。今やすっかり入手困難な稀少モデルになってしまったが、ブレゲの再来とも称され、しかも同時代で活躍する天才時計師が手掛けた数々の傑作モデルの中でも、シンプルであるが故に、常に精度を追求するフランソワ-ポール・ジュルヌ氏の哲学が最も端的に表現されているのだ。
搭載するムーブメントは手巻きのCal.1304。19世紀のマリンクロノメーターから着想を得たという「クロノメーター・スヴラン」は、当時、英国をはじめとするヨーロッパ列強が制海権を握るべく国の威信を懸けて精度を競ったマリンクロノメーターの本質を体現すべく、香箱をふたつ搭載し、ロングパワーリザーブではなく、精度の安定を目指したものだ。ふたつの香箱に収められた主ゼンマイの役割は、パワーリザーブの長さではなく、あくまでも安定したトルクを輪列へ供給することで、テンプの振り角を安定させることにある。「クロノメーター・スヴラン」がモデル名に「クロノメーター」という名を持つゆえんである。
同時に、高精度をより象徴的に表現するためか、12時-6時方向にシンメトリーを志向したムーブメントは、ふたつの香箱と2番車こそ、ブリッジの間からその姿を見せているが、3番車と4番車は文字盤側に隠されており、結果、比較的大きなテンプが独立して際立って見えるように設計されている。ジュルヌ氏が「30年前にはアイデアがあった。本当に作りたかった時計」と、かつて『クロノス日本版』の取材で語ったように、簡潔ながらもジュルヌ氏の哲学が息づいた、現代において文字通り、唯一無二のどこにもないムーブメント搭載機なのだ。
2005年に発表された「クロノメーター・スヴラン」だが、その前年の2004年には、ジュルヌ氏念願の18Kローズゴールド製ムーブメントの自社製造を実現している。ジュルヌ氏いわく「時計には正確に時を告げる“礼儀正しさ”がなければならない。私が創りたいのは世界で一番“礼儀正しい時計”」。その時計のムーブメントがゴールド製というのは、精度に輪をかけて、“ありがたき腕時計”である。
②グランドセイコー「エボリューション 9 コレクション SLGH005 “白樺”」(Cal.9SA5)
自動巻き(Cal.9SA5)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース( 直径40mm、厚さ11.7mm)。10気圧防水。115万5000円(税込み)。
グランドセイコーが1960年の誕生から60周年を迎えた2020年、画期的なムーブメントがふたつ、グランドセイコーから発表された。メカニカルムーブメントのCal.9SA5とスプリングドライブのCal.9RA5だ。いずれもグランドセイコーが搭載するムーブメントのみが名乗ることを許される「究極」を意味する「9」をキャリバーナンバーに持つ高精度ムーブメントであるが、特に国産機械式ムーブメントのひとつの到達点して、どうしてもCal.9SA5は挙げておきたい。
精度はもちろん、動力の伝達効率の向上など、量産機械式ムーブメントとして、これまでグランドセイコーが搭載してきた9Sメカニカルムーブメントから大きく性能を向上させ、かつ頑強さも与えつつも、ムーブメントの厚さは5.18mmに留められた。これは、通常はムーブメントの上にかぶせるように配置する自動巻き機構を、約80時間の実用的なパワーリザーブを実現するツインバレルと同じ階層に置いた「水平輪列構造」の賜物だ。
さらに特筆すべきは、脱進機の伝達効率を高めるため、広く普及しているスイスレバー脱進機ではなく、グランドセイコー独自の「デュアルインパルス脱進機」を開発し、採用したことだ。マイクロメゾンなどの少量生産メーカーならばいざ知らず、ある程度のボリュームのムーブメントを製造する時計メーカーが擁する基幹ムーブメントとして、スイスレバー脱進機の派生形ではない独自の脱進機を開発するメーカーは、スイスにおいてもほとんどない。量産機械式ムーブメントでは、オメガのコーアクシャル脱進機くらいではなかろうか。
そんな中にあって、純国産時計ブランドであるグランドセイコーが、高効率の代名詞であるデテント脱進機と安全性の高さにおいて揺るぎない信頼性を誇るスイスレバー脱進機の“良いとこ取り”と言える「デュアルインパルス脱進機」の開発に挑戦し、見事成し遂げたのだから、これほど喜ばしいことはない。
加えて、ある意味“日本的な慎重さ”によって、これまで緩急針を持たないフリースプラングは一切採用してこなかったセイコーが、このグランドセイコー搭載Cal.9SA5のテンプでは、初めて緩急針を廃したフリースプラングを採用したことは驚きであった。しかも、これまで平ヒゲを採用してきたグランドセイコー9Sメカニカルが、初めて巻き上げヒゲゼンマイを搭載したことも注目に値する。
これだけ初めて尽くしの次世代基幹ムーブメントは、組み立て・調整も難しく、当初はグランドセイコーの機械式モデルを手掛ける岩手県雫石町の「グランドセイコースタジオ 雫石」では安定した生産体制を確立するのに苦労があったと聞く。だが、今ではそれも改善されたようだ。
間違いなく国産機械式ムーブメントの最高峰と言っても過言ではないこのCal.9SA5搭載モデルでイチオシは、個人的には何と言っても通称「白樺」=「SLGH005」である。上述したように、これほど野心的で意欲的な国産機械式ムーブメントを内包する腕時計には、「白樺」のように、日本的な美意識を体現したモデルこそ、ふさわしい。
細田雄人おすすめのムーブメント
①ブレゲ「クラシック 5287」(Cal.533.3)
手巻き(Cal.533.3)。23石。2万1600振動/時。パワーリザーブ486時間。18KRGケース(直径42.5mm、厚さ12.1mm)。30m防水。生産終了品。
ムーブメントで選びたい時計。胸が高鳴るいい企画だ。
見た目で選ぶならば、やはりキャリングアームの手巻きクロノグラフを選びたい。だったら、やっぱりレマニアのCH27ベースでしょう。この系譜にあって、まだ店頭で買えて、おまけに仕上げがすごくいいやつがいい。
すると自然と、Cal.533.3を載せたブレゲ「クラシック 5287」を選んでしまうわけです。対抗馬としてヴァシュロン・コンスタンタンのCal.1142(フリースプラング式)も挙がってくるけど、やっぱりスワンネック型の押さえバネを備えた緩急針が付いているCal.533.3が正義。
いつまでも見ていたい、操作したい。そんな魔力を持ったムーブメントだと思う。
②ローラン・フェリエ「クラシック・マイクロローター」(Cal.FBN229.01)
自動巻き(Cal.FBN 229.01)。35石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KRGケース(直径40mm、厚さ11.1mm)。3気圧防水。1182万5000円(税込み)。
手首に着けられ、振られたり衝撃を受けたりする腕時計にとって、最も理にかなった脱進機は、スイスレバー式で間違いないだろう。
しかし、ローラン・フェリエのCal.FBN229.01が採用するのは、スイスレバー式ではなくナチュラル脱進機。個人的にはナチュラル脱進機のメリットに挙げられる「高効率」という謳い文句には懐疑的だが、耳を澄ました時に聞こえてくる独特の金属音を持つビート音は魅力的だ。
そしてなにより、かつてアブラアン-ルイ・ブレゲが発明しながら実用化に至らず、今もごく限られたブランドしか使っていないという点に、ロマンを感じざるを得ない。
もちろん仕上げも文句なし。加えて、ここまでオタクホイホイな構成ながら、あえてマイクロローターの自動巻きとしているところも、「我が道をいく」感があってツボです。
鶴岡智恵子おすすめのムーブメント
①ゼニス「クロノマスター スポーツ」(Cal.エル・プリメロ3600)
自動巻き(Cal.エル・プリメロ 3600)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm)。10気圧防水。140万8000円(税込み)。
本記事の冒頭でも述べている通り、ムーブメント自体が購買理由になることはそこまで多くはないし、数字やアルファベットを並べたキャリバーナンバーが、そもそも覚えづらい。しかし、そんな中でムーブメント自体に名前が付いており、かつその名前が広く知られている名作がある。「エル・プリメロ」だ。
エル・プリメロは1969年に誕生した自動巻きクロノグラフムーブメントだ。ゼニスの旗艦ムーブメントであるのみならず、ロレックスやパネライ、タグ・ホイヤーなどといった時計ブランドでも採用されてきた。
エル・プリメロが誕生当時に画期的だったのは、水平方向にスペースを取るキャリングアーム式の水平クラッチでありながらも、自動巻き機構を搭載させた点だ。現在でも、自動巻きクロノグラフと言えば垂直クラッチがメインである中、エル・プリメロはこの古典的なキャリングアームを貫いている。
エル・プリメロは69年の登場以来、大きく設計は変わってこなかった。しかし2019年、誕生50周年の節目に、刷新された“エル・プリメロ2”ことCal.エル・プリメロ3600がゼニスからリリースされた。
このエル・プリメロ2を載せた「クロノマスター スポーツ」を、ムーブメントで選びたい1本として提案したい。みんな大好きエル・プリメロの最新版を載せ、加えて、この“最新”とともに“伝統”も味わえる名品であるためだ。
エル・プリメロ2の進化点は、従来からの3万6000振動/時というハイビートな脱進機を活かして、クロノグラフでの1/10秒計測を可能としたことだ。4番車ではなくガンギ車からクロノグラフの動力を取ることで、10秒で1回転というクロノグラフ秒針の動きを実現している。クロノグラフの楽しさのひとつは、プッシュボタンを押して操作することにある。ひと味違ったクロノグラフ秒針の動きは、その楽しさを倍増してくれるに違いない。パワーリザーブが約60時間と、現代的なスペックとなっていることも特筆すべき点だ。新時代の水平クラッチと言えるだろう。
一方で、裏蓋はトランスパレント式となっており、古典的なキャリングアームの動きもまた楽しめる。また、デザインはモダンだが、インダイアルの異なる3つの配色は1969年に発表されたエル・プリメロの初代モデル「A386」に範を取っている。
惜しむらくは、エル・プリメロに限った話ではないが、価格が上がってしまっていること。かつてはミドルレンジの価格の中で、“語れる”古典的なクロノグラフというところが好ましかった。今では100万円超が当たり前。とはいえ、ムーブメントのみならず外装も質を上げているので、欲しい腕時計のひとつであることに変わりはない。
②ブルガリ「オクト フィニッシモ GMT クロノグラフ」(Cal.BVL318)
自動巻き(Cal.BVL318)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径43mm、厚さ8.75mm)。100m防水。250万8000円(税込み)。
「新時代の水平クラッチ」つながりでもう1本紹介したい、ムーブメントで選ぶ腕時計がブルガリの「オクト フィニッシモ GMT クロノグラフ」だ。
2014年に誕生した「オクト フィニッシモ」は、現在ブルガリの、そして極薄時計というジャンルの代表的なコレクションである。極薄時計として数々のワールドレコードを樹立してきたことは言わずもがな、薄さと実用性を両立することで、ドレスウォッチなどでイメージしがちな「薄型時計は普段使いしづらい」といったイメージを払拭した。
もっとも、極薄時計の名手とはいえ、極薄クロノグラフを製造することは容易ではない(そもそも、クロノグラフムーブメントを内製化できるブランドは、決して多くない)。しかしブルガリは19年、手巻き式を含む世界で最も薄いクロノグラフとして本作を世に送り出した。ちなみにムーブメントの厚みは3.3mmだ。
薄さの秘訣は、類稀な設計だ。まず、自動巻き機構を外周に設置するため、ペリフェラルローターを採用した。また、キャリングアーム式水平クラッチを採用しているが、このクラッチの先端を薄くして、ブリッジの下に潜り込ませている。
12時間積算計やデイト窓は持たないが、代わりに3時位置に24時間表示が備わった。9時側に配された、オクト フィニッシモの立体的な造形になじんでいるプッシュボタンによって時針を単独で動かすことで、第二時間帯表示機能として使うことができる。
オクト フィニッシモはルックスや外装の作り込みの高さも大きな購買理由となる。しかし、同時に“極薄”を実現するムーブメントの存在こそ、時計オタクを魅了してやまない。
大橋洋介おすすめのムーブメント
①セイコー「セイコー 5スポーツ SKX スポーツ スタイル」Ref.SBSA221(Cal.4R36)
自動巻き(Cal.4R36)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約41時間。SSケース(直径42.5mm、厚さ13.4mm)。10気圧防水。4万4000円(税込み)。
「セイコー 5スポーツ」シリーズといった、手に取りやすい価格帯の実用時計が好きだ。というわけで、特筆すべき機構を有したムーブメントを紹介するのではなく、リーズナブルなムーブメントっていいよねという観点から紹介していきたい。
取り上げるムーブメントはCal.4R36。セイコーの4R系ムーブメントの中で、デイデイト表示機能が付いたものだ。極めてハイスペックというわけではなく、特殊な機構が搭載されているわけでもない。
このムーブメントが持つ1番の魅力は、カジュアルな価格帯で新品の自動巻き腕時計が買えるというところにある。
機械式腕時計に興味を持った大学生でも十分に手の届く価格だ。カジュアルな価格帯の機械式腕時計の選択肢は、クォーツ式腕時計に比べるとそう多くはない。その中で、セイコーブランドによる新品という存在は正直大きい。
機械式腕時計に興味を持つファンの裾野を広げるという意味では重要なムーブメントではなかろうか。みんな、もっとファッションに合わせて気軽に機械式腕時計を買おう!
それではこのムーブメントを搭載した具体的な腕時計の紹介をしよう。Ref.SBSA221は2023年にセイコー 5スポーツブランド誕生55周年を記念して発売されたモデルのうちのひとつだ。セイコー 5スポーツの創成期に人気を博したモデルへのオマージュとなっており、本作のほかに2種のバリエーションが展開されている。
本作は1970年代感あふれるレトロフューチャーでカラフルなダイアルが、まずカッコいい。そして、自動巻きムーブメントを鑑賞できるようにシースルーバックになっているところにも注目しよう。初めて機械式腕時計を手にする人には、機械式であることを実感させるうれしいポイントだろう。
ラミーの入門者向け万年筆「サファリ」を思わせる、機械式初心者が気軽に試せる立ち位置の製品ではないだろうか。
②シチズン「アテッサ エコ・ドライブGPS衛星電波時計F950 ダブルダイレクトフライト アクトライン」Ref.CC4016-67E(Cal.F950)
光発電クォーツ(Cal.F950)。スーパーチタニウムケース(直径44.3mm×厚さ15.4mm)。10気圧防水。29万7000円(税込み)。
次はクォーツムーブメントCal.F950を搭載したシチズンの「アクトライン」からRef.CC4016-67Eを紹介する。
取り上げた理由としては、「時刻に正確であり、メンテナンスの手間がかからず、そしてリーズナブルな値段」という、クォーツ式腕時計のヒット以来、国産メーカーが追求してきたであろう理想を体現した腕時計ではないかと思っているからだ。
まずは「GPS衛星電波時計」機能。基地局から発せられる電波を受信し、時刻を正確に修正する電波時計は「アクトライン」には多数ラインナップされている。だが、GPS衛星からの電波を受信し、修正するこの機能を備えた時計は多くない。
この機能の利点は、世界中どこにいても、時刻修正用の電波を受信できる点だ。電波時計は日本国内で使用する分には問題はない。ただ、基地局は世界中どこにでも存在するわけではなく、カバーされない地域もある。その点において、GPS衛星電波時計の方に分があるのだ。
さらにこの腕時計が搭載するムーブメントは、時刻の異なる地域に移ると、自動で修正する「サテライト ウエーブ GPS」を備えた優れものだ。世界中で活躍する人には持ってこいだ。
そして次はソーラー発電機能。1976年の「クリストロン ソーラーセル」より、シチズンは光発電で動く時計の開発を続けてきた。GPS衛星機能を使用するには多大な電力が必要となる。それをソーラー発電という、一般的には微力なエネルギーしか発電できない装置で動かせる。まさにシチズンの培った技術の成せる業だ。
この時計は「正確で、手間がかからない」だけではない。クロノグラフにデュアルタイムなど、多数の機能を搭載している。独自の硬化処理を施したスーパーチタニウムを採用しているので、堅牢性も抜群だ。クォーツ式腕時計界の「全部載せ」的なこの製品、買わない手はない。
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