1960年に初代モデルを発表したグランドセイコーは、年々時計市場でのプレゼンスを高めている。コレクションの幅も広がっており、どれを選んでいいか迷ってしまうこともあるかもしれない。そこで本記事では、グランドセイコーのおすすめモデルを12本紹介する。
「ヘリテージコレクション」
「ヘリテージ(Heritage)」は、伝統・遺産といった意味を持つ言葉だ。グランドセイコーのヘリテージコレクションは、同ブランドのデザイン文法である“セイコースタイル”を確立した1967年発表の「44GS」や、1960年代に誕生して、同ブランドの実用性を押し上げた「62GS」など、特筆すべき名作たちを現代的に解釈したデザインを採用したモデルで構成されている。ベーシックながらも、バランスの取れた王道デザインや正確さ、見やすさが大きな特徴だ。
「ヘリテージコレクション」Ref.SBGA211
Ref.SBGA211は、ダイアルの繊細な模様が特徴的な時計だ。グランドセイコーのスプリングドライブムーブメントが製造されている、信州 時の匠工房。周囲の穂高連邦は冬季に雪に覆われ、ひんやりと乾いた空気の中で、風に吹かれた雪面は繊細な風紋を作る。この雪面を表現したのが、本作の“雪白パターン”である。
なお、スプリングドライブとは、セイコー“第3のムーブメント”。機械式時計のように主ゼンマイを動力源としつつ、クォーツ式時計のように水晶振動子によって調速を行うことで、強いトルクと高精度を両立した同社の独自機構である。本作にもスプリングドライブCal.9R65が搭載されている。
ケースに使われているブライトチタンも、グランドセイコーの独自素材だ。ステンレススティールより軽量で、耐傷性・耐食性にも優れており、毎日使いたくなるグランドセイコーウォッチであろう。
自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R65)。30石。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径41mm、厚さ12.5mm)。10気圧防水。85万8000円(税込み)。
「ヘリテージコレクション」Ref.SBGA375
1967年に発売された「44GS」のデザインを現代的に再解釈した、44GS現代デザインモデルのひとつがRef.SBGA375だ。ザラツ研磨を施した平滑な面で構成されたケースに宿る陰影が、日本特有の美意識を表現する。
ダイアルカラーはミッドナイトブルー。光の加減によってはブラックにも見える色合いは、オンオフ問わず着用しやすい。視認性に優れたシャープなインデックスと時分針、3時位置の日付表示、7時位置のパワーリザーブインジケーター等、シンプルながら機能性に優れているのは、グランドセイコーらしいポイントだ。
搭載するムーブメントは、自動巻きスプリングドライブのCal.9R65。クォーツと同等の高い精度を誇り、耐磁性と耐衝撃性、さらには審美性にも優れている。連続的な時間の流れを体現するような滑らかな秒針の動きも、スプリングドライブの魅力だ。
自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R65)。30石。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ12.5mm)。10気圧防水。70万4000円(税込み)。
「ヘリテージコレクション」Ref.SBGX265
メカニカル、スプリングドライブと並んで、グランドセイコーを代表するムーブメントが9Fクォーツだ。
1988年、グランドセイコーは年差±10秒という極めて優れた精度を持つクォーツ式時計「95GS」をリリース。さらに1993年、ただ高精度なだけではない、“究極”のクォーツCal.9F83を発表し、以降、9Fクォーツはグランドセイコーの基幹ムーブメントのひとつとなる。この9Fクォーツは、「ツインパルス制御モーター」「バックラッシュオートアジャスト機構」「瞬間日送り機構」「緩急スイッチ」など、他のクォーツムーブメントとは一線を画す機構を有するがゆえに、究極といえる。
今回紹介しているRef.SBGX265は、コンパクトな9FクォーツムーブメントCal.9F62を搭載。ケースは直径37mm、厚さ10mmに抑えられており、ヘリテージコレクションらしいベーシックな意匠と相まって、ジャケットの袖口から主張しすぎず、ビジネスシーンにもピッタリの1本だ。
なお、本作の定価は29万7000円と、手の届きやすい価格帯であるのもユーザーにとってはうれしいポイントである。
クォーツ(Cal.9F62)。SSケース(直径37mm、厚さ10mm)。10気圧防水。29万7000円(税込み)。
「スポーツコレクション」
グランドセイコーのスポーツコレクションは、幅広いシーンで高いパフォーマンスを発揮できる。腕時計が本来備える機能の強化に重点が置かれており、クロノグラフやダイバーズウォッチなど、高性能モデルがそろう。
「スポーツコレクション スプリングドライブ クロノグラフGMT」Ref.SBGC253
ブランドを象徴する獅子を取り入れた、ダイナミックなデザインが特徴のモデル。どっしりとした重厚感のあるケースは獅子の爪、有機的なパターンが施されたシャイニーホワイトのダイアルはたてがみをイメージしている。ケース素材には軽量かつ審美性に優れたブライトチタンを採用し、装着時の手首への負担を軽減している。
ムーブメントはCal.9R86。クロノグラフとGMT機能を併載したスプリングドライブだ。パワーリザーブインジケーターとデイト表示も備えた多機能モデルでありながら、使い勝手への配慮は忘れられていない。クロノグラフのプッシャーは、指掛かりの良い大型を採用し、ダイヤルの2時位置と4時位置に積算計を配したレイアウトは、袖口からでも簡単に計測結果を確認できるように考え抜かれたものなのだ。24時間表記のベゼルとGMT針の先端をブラックに統一することで、第二時間帯を瞬時に読み取ることができる。
自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R86)。50石。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径44.5mm、厚さ16.8mm)。20気圧防水。170万5000円(税込み)。
「スポーツコレクション」Ref.SBGH291
グランドセイコー スポーツコレクションの中でも、200m空気潜水用防水を備えたダイバーズウォッチを紹介しよう。
ブラック文字盤にブラックの逆回転防止ベゼルと、ダイバーズウォッチらしい意匠を備える本作。インデックスが浮き立ったように立体感を備えていることにも注目したい。このインデックスは、「かしめ加工」という技法が使われている。インデックスに面カットを施し、ひとつずつダイアルにかしめて固定していく。その後、裏側から接着させることでインデックスに立体感を持たせ、高い判読性を実現しているのだ。また、暗所でも時刻確認できるよう、針やインデックスには蓄光塗料であるルミブライトが塗布されている。
独自のローレット加工によって、いかにも操作しやすいベゼルは、分解可能な構造となっており、メンテナンス性にも優れている。
自動巻き(Cal.9S85)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。ブライトチタンケース(直径43.8mm、厚さ14.7mm)。200m空気潜水用防水。106万7000円(税込み)。
「スポーツコレクション」Ref.SBGN027
GMT機能付きのクォーツムーブメントCal.9F86を搭載した、Ref.SBGN027。24時間スケールが印字されたメタルベゼルや手の甲に当たりづらい4時位置のリュウズ、精悍なブラックダイアルなど、スポーティーな要素を備えたモデルである。20気圧の防水性を有するため、水仕事の多いユーザーも重宝するだろう。
なお、Cal.9F86は「4軸独立ガイド構造」を持つ。時針・分針・秒針・GMT針の4本の針が互いに干渉することなく独立して回転する構造となっており、時計を止めずに時針のみを修正できるのだ。つまり、タイムゾーンの異なるエリアで時刻修正をした際も、9Fクォーツの高精度を損ねない。グランドセイコーの「究極のクォーツを目指す」という姿勢が表れたモデルである。
クォーツ(Cal.9F86)。SSケース(直径39mm、厚さ12.3mm)。20気圧防水。45万1000円(税込み)。
「エレガンスコレクション」
エレガンスコレクションは実用性を備えつつも、エレガントな装いに好適なコレクションだ。厚みを抑えて薄く仕立てたケースや、シンプルながらも華やかさを添えた意匠など、エレガンスを追い求めるブランドの飽くなき姿勢が垣間見える。
「エレガンスコレクション」Ref.SBGW259
1960年に登場した初代グランドセイコー。国産時計史に燦然と輝くそのデザインを復刻したのが、本作だ。ケースサイズや外装の素材には現代的なアップデートが加えられたが、基本的なデザインは受け継がれている。
ダイアルのカラーは、ブランドを象徴するグランドセイコーブルーだ。12時位置にはオリジナルモデルを踏襲したフルスペルのロゴ、6時位置には石数表示が配されている。ケース径の拡大に伴いダイアルも大型化したが、ミニマルなデザインと端正なバランスは損なわれていない。
ケース素材には、ブランド独自のチタン合金であるブリリアントハードチタンを採用している。これによって、軽く耐食性に優れるチタンの性質はそのままに、白く輝く高い審美性を獲得することに成功している。
手巻きムーブメントのCal.9S64を搭載することによって、ケースの厚みは11mm未満に抑えられ、毎日リュウズでゼンマイを巻き上げる操作を楽しむこともできる。
手巻き(Cal.9S64)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。ブリリアントハードチタンケース(直径38mm、厚さ10.9mm)。日常生活用防水。108万9000円(税込み)。
「エレガンスコレクション」Ref.SBGY013
グランドセイコーが得意としているのが、自然の情景にインスピレーションを得た型打ちダイアルだ。その中でも高い人気を誇るのが、本作に採用された“御神渡り(おみわたり)”である。御神渡りとは、真冬の限られた時期に、諏訪湖に張った厚い氷が、気温の上下を受けて膨張と収縮を繰り返し、やがて大きな音とともに隆起する自然現象だ。
白銀の御神渡りをテーマとした本作では、氷結した湖面のようなパターンのダイアルが、太陽の光を受けて繊細に輝く様子を楽しむことができる。
滑らかな曲線を描く上品なケースは、直径38.5mm、厚さ10.2mmと、スーツの袖口にも収まりやすいサイズだ。
手巻きスプリングドライブムーブメントを搭載し、シースルーバックからは繊細なヘアラインが施された受けと、そこに配されたパワーリザーブインジケーターを確認することができる。
手巻きスプリングドライブ(Cal.9R31)。30石。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径38.5mm、厚さ10.2mm)。日常生活用防水。121万円(税込み)。
「エボリューション9 コレクション」
グランドセイコーの「エボリューション9 コレクション」は2020年に登場したコレクションで、「エボリューション9スタイル」にのっとって作られた時計だ。
エボリューション9スタイルはセイコースタイルを発展させたものであり、審美性・視認性・装着性の進化をデザインの方針として定めている。
「エボリューション9 コレクション」Ref.SLGC001
2023年に発表された、グランドセイコー初の機械式クロノグラフ。搭載するCal.9SC5は、毎秒10振動のハイビートムーブメントだ。動力の伝達効率を高めるデュアルインパルス脱進機とツインバレルによって約72時間のパワーリザーブを実現し、フリースプラング方式のテンプによって長期間にわたって安定した精度を保つことができる。
コラムホイールと垂直クラッチによって制御されるクロノグラフ機構は、設計に余裕を持たせるべくダイアル側に配され、耐久性を高めている。
外装デザインは、セイコースタイルを進化させ、審美性と視認性、装着性をさらに高めたエボリューション9スタイルを採用する。ブルーのダイヤルには、グランドセイコーの9Sメカニカルが製造される「グランドセイコースタジオ 雫石」からのぞむ岩手山の、雄大な岩肌を想起させるパターンが施されている。
ケースにはブライトチタン、ベゼルにはセラミックスを採用し、軽量かつ耐傷性に優れている。デザインと使いやすさを両立させた、グランドセイコーらしい機械式クロノグラフだ。
自動巻き(Cal.9SC5)。60石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径43.2mm、厚さ15.3mm)。10気圧防水。188万1000円(税込み)。
「エボリューション9 コレクション」Ref.SLGH005
“白樺”の愛称で知られる人気モデル。ダイヤルに施された有機的な型打ちパターンは、グランドセイコーのメカニカルモデルが製造される、グランドセイコースタジオ 雫石の近くに群生する白樺林に着想を得たものだ。光の当たり具合によって変化する、ダイナミックな陰影が魅力だ。
外装デザインには、エボリューション9スタイルを採用。立体的なインデックスと針による高い視認性、そして重心を低くラグ幅を広げることで生まれた安定した装着感が、実用性を高めている。
本作に搭載されるムーブメントは、毎秒10振動を誇る機械式自動巻きのCal.9SA5だ。デュアルインパルス脱進機やツインバレル、フリースプラング式テンプ等の機構を備えつつ、薄型化を果たしている。山の稜線や川の流れをモチーフとした、精緻な装飾が施されていることもポイント。
自動巻き(Cal.9SA5)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。10気圧防水。121万円。
「マスターピースコレクション」
長野県塩尻市に位置する「マイクロアーティスト工房」では、時計製造の精鋭たちによって、独創的なムーブメントが作られている。この機構を搭載した、至極のタイムピースを展開するコレクションが、グランドセイコーの「マスターピースコレクション」だ。
「マスターピースコレクション」Ref.SBGD202
匠の技を結集して作り出されたハイエンドモデルで構成される、グランドセイコーの「マスターピースコレクション」。その中に属するRef.SBGD202は、3つの香箱によって約8日間のロングパワーリザーブを実現した手巻きスプリングドライブムーブメント、Cal.9R01を搭載するモデルだ。その製造は、複雑時計や最高級品を専門とするマイクロアーティスト工房が手掛けている。
“スターダストダイヤル”と名付けられた満天の星空のようなダイヤルは、めっきや塗装等の複数の手法を多層的に組み合わせることで、漆黒の中に粒子状の煌めきを散りばめた深みのある仕上がりを見せる。
直径43mmのケースは、18Kピンクゴールド製。ザラツ研磨を施すことによって、平滑面とシャープな稜線を両立させている。
手巻きスプリングドライブ(Cal.9R01)。56石。パワーリザーブ約192時間。18KPGケース(直径43mm、厚さ13.2mm)。10気圧防水。583万円(税込み)。
「マスターピースコレクション」Ref.SBGZ003
スプリングドライブの誕生20周年を記念して、2019年に発売されたRef.SBGZ003。ケースには品位ある輝きを放つプラチナが使用されており、針とインデックスは14Kホワイトゴールド製だ。
搭載されているムーブメントは、マイクロアーティスト工房で生み出された手巻き式スプリングドライブCal.9R02だ。デュアル・スプリング・バレルとトルク・リターン・システムを併載することで、約84時間の実用的なパワーリザーブを実現している。
ダイアルの美しさを堪能できるよう、パワーリザーブ表示はムーブメントの裏蓋側に配されている。
手巻きスプリングドライブ(Cal.9R02)。39石。パワーリザーブ約84時間。Ptケース(直径38.5mm、厚さ9.8mm)。日常生活用防水。770万円(税込み)。
自分好みのグランドセイコーを見つけよう
日本発グランドセイコーは、現在海外市場でもプレゼンスを高めている。実用性と審美性を両立させたタイムピースの数々は、シンプルながらも独創性を備えており、グランドセイコーならではの魅力をたたえている。
バリエーションも豊富なため、ぜひ自分好みのグランドセイコーを見つけてほしい。
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