30万円以下で買える最高の腕時計はこれだ! 『クロノス日本版』編集部おすすめ10選

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2024.02.23

時計専門誌『クロノス日本版』編集部のメンバーが、「30万円以下で買える最高の腕時計」をお題に、現行モデルの中からそれぞれのおすすめを紹介する。メンバーは編集長の広田雅将、副編集長の鈴木幸也、編集の細田雄人、鶴岡智恵子、大橋洋介である。


『クロノス日本版』編集部おすすめの30万円以下で買える腕時計

 最近の物価高騰の折、腕時計も例外ではなく、各ブランドの定価上昇が凄まじい。ちょっと良い高級腕時計を買いたいと思った時、100万円、200万円超の定価は現実的ではないだろう。もっとも、値上がりしているとはいえ、ベーシックな価格帯にも良作は多い。30万円の予算があれば、選択肢はぐっと広がるだろう。

 今回は、時計専門誌『クロノス日本版』編集部のメンバーが、現行モデルのうち、30万円以下で買えるおすすめの腕時計を2本ずつ、合計10本選出して、紹介する。


編集長・広田雅将おすすめの「30万円以下で買える腕時計」


①フォーメックス「エッセンス 39」

 アンダー30万円でも魅力的な時計は実に多い。フランスのベルテは、ユニタスをベースにしたガチの手巻きを作っているし、国産メーカーならば、「キングセイコー」を筆頭に、シチズンの「シリーズ8」、オリエントスターなど、傑作が目白押しだ。マイクロメゾンに目を向けても、カナダのブランチホロロジー(セリタの手巻きを載せている)、最近注目のバルチック、コスパの高さが際立つイエマなど、枚挙にいとまがない。ただ今回は、素直な気持ちでアンダー30万の“推し”を選んだ。

 ひとつめは、フォーメックスの「エッセンス 39」。大手のサプライヤーが手掛けるだけあって、質と価格のバランスが非常に良い。また、アンダー30万円なのに、セリタのクロノメーターを搭載しているのも◎だ。スウォッチ グループの各社をのぞいて、この価格帯でクロノメーターなのは、ボール ウォッチとフォーメックスのみではないか。

フォーメックス「エッセンス 39」
スイスの一大サプライヤーであるBIWIは、初代「ビッグ・バン」のケースを手掛けたほか、スイスの名だたるメーカーにラバーストラップや文字盤を提供している。そんな同社の自社ブランドがフォーメックス。外装のほとんどを内製できるため、品質に比して価格は控えめだ。また、ムーブメントにはセリタのCal.SW200のクロノメーター仕様を採用。普通のセリタよりも価格は高くなるが、きちんとした物を選ぶところに好感が持てる。レギュラーモデルのストラップ版は26万円、ブレスレット付きでも28万2500円という価格はかなり攻めている。自動巻き(Cal.SW-200、クロノメーター仕様)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径39mm)。100m防水。28万2500円(税込み)。(問)クロノセオリー https://chronotheory.jp/


②セイコー「プロスペックス ダイバースキューバ」Ref.SBDC101

 もうひとつは、セイコーの王道ダイバーズ「プロスペックス ダイバースキューバ」Ref.SBDC101。価格は控えめなのに、外装の質感が上がり、また全体のまとまりもさらに良くなった。高価格帯のコレクションは文句なしに出来が良い。しかし、量産効果をフルに生かしたベーシックなダイバーズウォッチは、セイコーの独壇場だ。

セイコー「プロスペックス ダイバースキューバ」Ref.SBDC101
1965年のファーストダイバーズを現代風に仕立て直したモデル。直径が40.5mmに縮小されたほか、全長が短いために取り回しも良好だ。実用メーカーらしい配慮をうかがわせるのが、外装に施されたダイヤシールドだ。傷が付きにくいこの仕上げは、なるほど、タフに使うダイバーズウォッチにうってつけだ。文字盤は、インデックスと一体成型したエンボス仕上げ。強いショックを受けても、インデックスが剥がれる心配がない。普通、この仕上げを選ぶと文字盤の平滑さを出しにくいが、セイコーのダイバーズウォッチは、エンボスインデックスであることを全く感じさせない。ムーブメントには、振動数を落とし、パワーリザーブを延ばしたCal.6R35を採用。精度はまずまずだが、今後はぜひ、高振動で長いパワーリザーブを実現して欲しいところだ。自動巻き(Cal.6R35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径40.5mm、厚さ13.2mm)。200m防水。15万9500円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012


副編集長・鈴木幸也おすすめの「30万円以下で買える腕時計」


ティソ「シュマン・デ・トゥレル 39mm」

 新型コロナウイルス禍における世界的な金融緩和の反動による世界的なインフレと、ロシアによるウクライナ侵略戦争の影響によるエネルギーと資源の高騰など、複合的な要因で値上げに歯止めがかからないスイス時計。そんな状況下で出された「30万円以下で購入できる最高の腕時計」というテーマに合致する腕時計はおのずと限られてくる。

 注目すべきは、単に「30万円以下で購入できる腕時計」ではなく、今回のお題目は「30万円以下で購入できる最高の腕時計」という点だ。つまり、価格の上限に加え、「最高の」という条件付きなのだ。

 何をもって「最高の腕時計」とするかは、各人によって基準は異なるだろう。だが、自分にとっての「最高の腕時計」を改めて熟考したところ、外装の質とムーブメントの信頼性、そして、このふたつのバランスの良さということに行きついた。

 結果、第一の選択肢として挙がったのが、ティソの「シュマン・デ・トゥレル 39mm」だ。しかも、より広範に使用できるステンレススティール製ブレスレットを備えたモデルが望ましい。この「より広範」には、天候や季節、場所などの使用する環境に加え、フォーマルやインフォーマルといった腕時計を装着するシーンも含まれる。ステンレススティール製ブレスレットならば、レザーストラップとは異なり、雨天でも真夏でも、水滴や汗を気にせずに着けることができるし、いわゆる“ラグジュアリースポーツウォッチ”の流行以降、今やフォーマルな場であっても、必ずしもレザーストラップでなければならないということはなく、メタルブレスレットであっても、デザインによっては、問題なく着用できる。

 このシュマン・デ・トゥレルは、細長いバーインデックスとドット状のミニッツマーカーを採用し、かつ文字盤に加え、インデックスと秒針までもが外周に向かって緩いカーブを描く。その文字盤を覆うサファイアクリスタル風防までもがドーム型であるため、腕時計のフェイスを見た第一印象は古典的な要素を強く感じさせる。

Photograph by Eiichi Okuyama
ドーム型のサファイアクリスタル風防をはじめ、クラシカルな意匠を備える本作。しかし、スポーティーな要素も取り入れており、さまざまなシーンで使える腕時計である。

 一方で、文字盤の下地にサンレイ仕上げを施したグレーダイアルのモデルは、ステンレススティール製ブレスレットと組み合わせると、洗練された佇まいの中にもスポーティーさを感じさせ、モダンですらある。このクラシックさとモダンさの案配が絶妙だからこそ、フォーマルな場面でも、インフォーマルな場面でも使用できる多目的性を生み出しているのだろう。もちろん、直径39mm、厚さ11.22mmという大きすぎず、小さすぎないコンパクトで小回りの利くケースサイズも、そこに大きく貢献していることは間違いない。

 もうひとつのポイントである内蔵されるムーブメントは、スウォッチ グループが誇るパワーマティック 80である。これは、スウォッチ グループ傘下のETA社が手掛けるCal.2824-2をベースとした最先端の自動巻きムーブメントで、約80時間にも及ぶパワーリザーブを持つことから、こう命名されたものだ。加えて、磁気や温度変化に対して高い耐性を備えるニヴァクロン製のヒゲゼンマイを採用し、かつ緩急針を持たないフリースプラングテンプのため、衝撃によって緩急針がずれて精度に影響を与えることもない。

 良質な外装と信頼性の高いムーブメントを両立しつつも、ステンレススティール製ブレスレットを備えたモデルで、お題の30万円を大きく下回る11万8800円(税込み)だ。これを「30万円以下で購入できる最高の腕時計」と呼ばずして、何をそう呼んだらいいのだろう?

ティソ「シュマン・デ・トゥレル 39mm」Ref.T139.807.11.061.00
写真のグレー文字盤のほか、ブルーやシルバー文字盤もラインナップされる。さらに、ベルトもステンレススティールのほか、レザーストラップから選ぶこともできる。自動巻き(Cal.パワーマティック 80)。23石。2万1600振動/時。 パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.22m)。5気圧防水。12万7600円(税込み)。(問)ティソ Tel.03-6254-5321


セイコー「キングセイコー」Ref.SDKS015

「30万円以下で購入できる最高の腕時計」として候補に挙がるのは、スイス時計だけではない。日本の時計メーカーが手掛ける腕時計の中にも、外装と内蔵されるムーブメントのバランスに優れた、取り上げるべき腕時計は存在する。

 それがセイコーの上位ブランドである「キングセイコー」である。歴史を振り返ると、キングセイコーが登場したのは1961年。今や独立したグローバルブランドとして、欧米でも大きな注目を集めるグランドセイコーが誕生した翌年のことだ。

 ほぼ同時期に世に送り出されたグランドセイコーとキングセイコーであるが、その方向性は当初から明確に異なっていた。当初からスイス時計に比肩する「究極の精度」を追求し、専用のムーブメントを常に開発・設計し続けるグランドセイコーに対し、キングセイコーの多くは、既存の量産ムーブメントをベースに、性能を向上させたムーブメントを搭載していた。

 外装の意匠に関しても、キングセイコーは、歴史的に小型化・薄型化を目指したデザインが多くを占めていた。かように、外装も内蔵するムーブメントも“スイスに比肩する最高峰”ではなく、あくまでも量産品における最良品を目指したところに、機械式腕時計の普及期におけるキングセイコーの良心が感じ取れる。残念なことに、クォーツウォッチの台頭とともに、生産終了となったキングセイコーが、再び時計史にその姿を現したのは、2021年に発表された限定モデルであった。そして、翌22年には直径37mmのレギュラーモデルとして見事な復活を果たしたのだ。

 今回、「30万円以下で購入できる最高の腕時計」として取り上げるキングセイコーは、23年3月より発売されている直径39mmで、パワーリザーブが既存の約70時間から約72時間=約3日間へと若干延長されたモデルだ。その証しとして文字盤の6時位置には従来の「AUTOMATIC」に、「3 DAYS」という印字が追加された。

新たにキングセイコーに搭載されるようになったムーブメントCal.6R55。コンパクトなマジックレバー式の自動巻き機構を採用している。

 個人的なオススメは、より幅広い場面で着用できるアイボリー文字盤のモデルRef.SDKS015である。シンプルながらも品格も併せ持つため、フォーマルなシーンでもインフォーマルなシーンでも活用できる。さらに、文字盤を凝視すると、その下地には格子模様のヘアライン仕上げが施されている。この“小技”によって、一見懐かしく思えるキングセイコーの意匠が、決して古びることなく、むしろ今風に見えるのだ。

 キングセイコーの“偉大なる普通さ”を味わうには、量産品における最良品の代表格であるキングセイコーこそ、それに値する。

セイコー「キングセイコー」Ref.SDKS015
キングセイコーも文字盤やストラップのバリエーションが多彩であり、好みに合った1本を選べるだろう。自動巻き(Cal.6R55)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.9mm)。10気圧防水。23万1000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012


細田雄人おすすめの「30万円以下で買える腕時計」


①ユンハンス「マックス・ビル バイ ユンハンス オートマティック」

 他国の経済成長に伴うインフレや円安、原材料の高騰などで、今や30万円以下で購入できる時計は稀少だ。そんな中で、ドイツ時計はスイスほど人件費が高くないからか、結構、この価格帯でも魅力的な時計が集まっている。

 そんな中でおすすめは、ユンハンス「マックス・ビル バイ ユンハンス オートマティック」だ。バウハウスの巨匠、マックス・ビルのデザインは言わずもがな秀逸で、筆者もずっと着けているが、何年経っても飽きがこない。

 直径34mmケースに手巻きを組み合わせた「ハンドワインド」も捨てがたいが、人様にお勧めするならば自動巻きの38mm径の方が使い勝手の面で一歩抜きん出るか。

 文字盤カラーやストラップ/ブレスレットの種類も豊富で、好みの1本が多彩な選択肢の中から選べるのもマックス・ビルの魅力だ。個人的にはブラック文字盤×ミラネーゼブレスレットのRef.027 3400 02Mが一押しだ。

ユンハンス「マックス・ビル バイ ユンハンス オートマティック」Ref.027 3400 02M
ブラック文字盤にアラビア数字インデックスを組み合わせたモデル。マックス・ビルはシンプルながらも、バリエーションが豊富で気に入った1本を選ぶ楽しみがある。自動巻き(Cal.J800.1)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径38mm)。50m防水。24万6400円(税込み)。(問)ユーロパッション Tel.03-5295-0411


②ノモス グラスヒュッテ「ラドウィッグ」

 ノモス グラスヒュッテもアンダー30万円の大定番ブランドだ。近年は価格も上昇傾向にあるが、手巻きムーブメントCal.アルファを搭載したシンプルなモデルならば、まだまだ射程圏内である。

 つまり、定番の「タンジェント」や「オリオン」「テトラ」など、ベーシックなコレクションならば大体選べるわけだが、その中も「ラドウィッグ」は個人的なツボ。

 薄く絞られたベゼルやローマ数字インデックス、細い針、長いラグといったドレッシーな見た目は、27万5000円とは思わせない“高見え感”を演出しており、所有欲が掻き立てられる。

 ムーブメントを見れば緩急針はトリオビス型、コハゼは退却式。時計好きのツボが見事に抑えられた、見事なオタクウォッチだ。

ノモス グラスヒュッテ「ラドウィッグ」Ref.201
手巻き(Cal.アルファ)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。SSケース(直径35mm、厚さ6.3mm)。3気圧防水。27万5000円(ソリッドバックの場合、税込み)。


鶴岡智恵子おすすめの「30万円以下で買える腕時計」


①グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGX265

 かつて20万円〜30万円で購入できるモデルが多かったグランドセイコーも、最近は高価格路線に舵を切り、定価アンダー30万円は少なくなってきた。グランドセイコーが価格を上げることでブランド価値や国際競争力を高めたことは事実ではあるものの、気軽に買える国産ウォッチというポジションからはもはや遠くなってしまった。

 そんな中で、まだ30万円以下で購入できて、初めての高級腕時計でも扱いやすくて、そのうえグランドセイコー“らしさ”が詰まった1本がある。「ヘリテージコレクション」の9FクォーツムーブメントCal.9F62を搭載したモデルだ。

 9Fは、グランドセイコーの“究極”のクォーツムーブメントである。1993年にグランドセイコー専用機として誕生した当時から、年差±10秒の高精度を誇った。一般的なクォーツ式ムーブメントの精度は、月差±20秒程度である。さらに、機械式時計と比べるとトルクが弱いクォーツウォッチに太く力強い針を載せ、秒針はぶれずに運針する。安価なイメージから脱却し、高級クォーツウォッチというジャンルを確立したグランドセイコーの歴史を味わえるムーブメントだ。高級感を損なわないながら、機械式腕時計と比べて時刻合わせの手間、そして振動や衝撃からの故障リスクが低減され、扱いやすいというのも個人的には30万円以下という、「ちょっと良い高級腕時計」のプライスレンジにふさわしい美点だと思う。

 さらに本作は直径37mm、厚さ10mmというコンパクトなパッケージを備えている。薄く、大きすぎないケースは装着感が良く、さらにエレガントな装いを手助けしてくれる。このケースおよびブレスレットには、グランドセイコーらしく、上質な仕上げが施される。歪みのないポリッシュ面や丁寧なヘアライン仕上げが施された面、そして際立つ稜線は、価格以上の価値を与えてくれる。なお、グランドセイコーは現在のポジションを築く以前、地味な印象が強かったと記憶している。しかし、仕上げや文字盤の質などといった外装はハイレベルで、なぜもっと上手にプロモーションしないのかと疑問であった。現在も広告のビジュアルなんかを見ると若干その傾向があるので、本作の魅力を知るためには、ショップなどで実機を手に取ることをお勧めする。

グランドセイコー ヘリテージコレクション

グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGX265
3針にデイト窓のみという、シンプルな「ヘリテージコレクション」の9Fクォーツ搭載モデル。なお、バリエーションとしてブラック、シルバー文字盤もラインナップされており、個人的推しが写真のブルーである。クォーツ(Cal.9F62)。SSケース(直径37mm、厚さ10mm)。10気圧防水。28万6000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー)Tel.0120-302-617


②ロンジン「フラッグシップ ヘリテージ」

 ロンジンは復刻時計をはじめ、ブランドの歴史を感じさせるモデルが面白い。往年の名作の意匠を再現しつつ、この雰囲気を損ねずに現代的な要素を取り入れる手腕に長けており、ヴィンテージウォッチ好きは言わずもがな、特にこのジャンルに興味がなくとも「なんか良いよね」と思わせる。

 そんなロンジンの、ヴィンテージテイストを感じさせる巧みな意匠を備えた、30万円以下で買える腕時計がある。「フラッグシップ ヘリテージ」だ。本作は、1950年代後半、ロンジンに初めて誕生したコレクションのひとつから系譜を引くヘリテージラインだ。なお、“フラッグシップ”は艦隊司令長官の旗を掲げる旗艦を意味する。そのため、コレクションのケースバックにはエンブレムとなるキャラベル船のメダリオンがあしらわれている。

ロンジン フラッグシップヘリテージ

ネイビーを背景にゴールドカラーのメダリオンをあしらったケースバック。価格問わずシースルーバックが増える昨今、裏蓋側までレトロテイストを残すところも好感触だ。

 本作は38.5mm径の大きすぎないケースに2針、スモールセコンドと、クラシックなスタイルを備えることが特徴だ。ドーム型ダイアルやドーフィン針などといった要素と相まって、50年〜60年代の雰囲気を巧みに盛り込んだ。

 最近はヴィンテージ調のデザインや雰囲気への人気が高まっており、各社もこのジャンルに積極的に参戦している。そんな中で、シンプルかつドレッシーな3針ウォッチというのは、他社製品との差別化が難しい。意匠に個性を与えすぎてしまうとヴィンテージやドレッシーなテイストを損なう半面、シンプルすぎてもブランドの独自性を出しづらいためだ。また、機能がミニマルであるがゆえに文字盤や針の質感などといったクォリティがダイレクトに見た目に反映され、さらにそのクォリティは価格と比例しやすい。没個性の課題を克服し、かつ30万円以下というプライスレンジながらハイクォリティな本作を見ると、なぜロンジンがヴィンテージテイストウォッチというジャンルで頭ひとつ飛び抜けているかが理解できるのではないだろうか。

ロンジン フラッグシップ ヘリテージ

ロンジン「フラッグシップ ヘリテージ」Ref.L4.795.4.78.2
シンプルながら、ロンジンのデザインへの巧みな手腕が光るフラッグシップ ヘリテージ。シルバーのほか、ブラック文字盤のバリエーションも展開されている。自動巻き(Cal.L615)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径38.5mm、厚さ10mm)。3気圧防水。28万6000円(税込み)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350


大橋洋介おすすめの「30万円以下で買える腕時計」


①ティソ「ティソ PRX オートマティック クロノグラフ」

 今をときめくラグジュアリースポーツウォッチ。その“ラグスポ”の中でも、クロノグラフで、30万円以下の価格帯で入手できるモデルの決定版といえば、この「ティソ PRX オートマティック クロノグラフ」の他にはないだろう。

 この腕時計のグッと来るポイントその1。まずは、先にも述べたラグジュアリースポーツウォッチのデザイン。ケースとブレスレットが一体化した、腕時計業界で今もなお絶大な人気を誇るデザインだ。

 その魅力は、スポーティーであるにも関わらず、フォーマルなシーンでも使用できる万能役者的なポジションにあり! だと筆者は思う。それはともかくとして、この腕時計の角ばった「金属だぞ!」というマッシブ感は、手に取るものを魅了するに違いない。筆者はそこが好きだ!

 加えて、ケースやブレスレットに用いられる、金属の表面仕上げには目を見張るものがある。面取りされた角は上手にポリッシュされており、ジッと眺めていれば、きっとウットリとしてくるはずだ。

 グッと来るポイントその2。名作クロノグラフムーブメント、Cal.ETA7750系ベースのCal.A05.H31を搭載している点だ。この系列のムーブメントを30万円以下で入手できるのはとてもうれしい。さらに、このムーブメントは約60時間のパワーリザーブを備えているのもグッドポイントだ。さあ、インダイアルの針の動きを楽しみ、ムーブメントが発する駆動音に、耳をそばだてようじゃあないか! 機械式クロノグラフだけの楽しみだ。

 というわけで、限られた予算から奮発し、1本だけ“ラグスポ”な腕時計を選ぶとするならば、これで間違いないと筆者は思う。とにかく、角張ったクロノグラフが欲しかったらこれで決まり!

インプレッション ティソ PRXオートマティック クロノグラフ

ティソ「ティソ PRX オートマティック クロノグラフ」Ref. T137.427.11.011.01
自動巻き(Cal.A05.H31)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。28万7100円(税込み)。


②オリエントスター「M45 F7 メカニカルムーンフェイズ」

 月齢を、円盤上に描かれた月を用いて表示する、ムーンフェイズ機構を搭載した腕時計が欲しい。とっても欲しいのである。

 欲しくてたまらない理由を述べよう。夜空に浮かぶ月を模した円盤は、見ているだけで時計技術の歴史を感じさせる。時計にまつわるさまざまな機構がその産声をあげた、近代ヨーロッパに思いをはせてしまうのである。歴史ロマンを感じさせるではないか!

 ムーンフェイズ機構を搭載したクォーツ駆動の素晴らしい腕時計も発表されている。とはいえ、機械式のものが欲しい。主ゼンマイと歯車で動く、からくりを連想させる逸品を手に入れたい。

 そこでオリエントスター「M45 F7 メカニカルムーンフェイズ」の登場だ。

 お目当てのムーンフェイズ機構に、パワーリザーブ表示機能を備えたダイアルが特徴的な1本だ。そしてなにより、ローマ数字をインデックスに用いた、クラシカルな見た目にぞっこんなのである。

 高いクォリティを誇りながらも、少し心配になるほど、お値段が控えめのオリエントスターの腕時計。「M45 F7 メカニカルムーンフェイズ」の希望小売価格は19万8000円(税込み)である。ボーナスが出たらゲットしたい腕時計だ。

オリエントスター「M45 F7 メカニカルムーンフェイズ」Ref. RK-AY0101S
2023年に新設された「Mコレクションズ」のうち、おうし座の散開星団すばる(プレアデス)として知られるM45の名を冠したモデル。自動巻き(Cal.F7M65)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.8mm)。5気圧防水。19万8000円(税込み)。


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