ミリタリーテイストを換骨奪胎した生粋のデザイナーズウォッチ
今や各社がこぞって手掛ける、ミリタリーテイストの実用時計。その先駆けが2005年に登場したBR 01だ。
創業以来、ハードなプロ向けウォッチを開発してきたベル&ロス。しかし1997年以降、同社は方向性を大きく変えた。
そのひとつの帰結が、スクエアなミリタリー風ウォッチ「BRシリーズ」なのである。
ベル&ロスは、ブルゴーニュ出身のブルーノ・ベラミッシュと、パリ出身のカルロス・A・ロシロという、ふたりのフランス人が創業した時計メーカーである。当時のベラミッシュはデザインを勉強しており、ロシロはMBAを取得した後、投資銀行でコンサルティングを行っていた。
ベラミッシュは卒業制作として時計メーカーを作ることを選んだ。一方のロシロはフランスでのエリートコースを歩んでいたものの、実は熱狂的な時計愛好家だった。1992年、ふたりは時計メーカーを創業し、フランクフルトのウォッチメーカー、ジンに協力を仰いだ。ふたりは作るべき時計に漠とした方向性を持っていたが、それを明確にしたのは、ロシロが言う〝ベル&ロスのゴッドファーザー〟こと、ヘルムート・ジンとの出会いであった。やがてベル&ロスは、視認性、機能性、信頼性、そして高精度というモットーを打ち立て、ジンの協力のもとで、製品開発に取り組んだ。
ベル&ロスがミリタリーを指向した理由は、創業者ふたりの好みを反映したためである。ロシロはミリタリーウォッチのコレクターであり、デザイナーのベラミッシュはデザインにおける機能性に魅せられていた。結果生まれた「ベル&ロス・バイ・ジン」の時計が、ジン以上にハイスペックを謳ったのは当然だった。ベラミッシュ曰く、この時代を代表する画期的なモデルは、ケース内を特殊なハイドロオイルで満たし、1万1100mの水深世界記録を持つ「ハイドロマックス」となる。
転機が訪れたのは1997年のこと。ジンとの提携が切れたベル&ロスは、純然たるオリジナルモデルを作るようになったのである(提携終了の年には諸説あるが、ベラミッシュは97年までと断言した)。もっともそれ以降もベル&ロスは、ジン製の時計をカタログに掲載し続けた。筆者の知る限り、2002年頃までベル&ロスは、ジンで作られた時計の販売を続けていたはずだ。