2024年に創業140周年を迎えるブライトリング。17年以降、CEOに就任したジョージ・カーン体制のもと、コレクションの再編を行い、現代的なラグジュアリーを備えた高級時計ブランドとして市場でのプレゼンスを高めている。本記事では、そんなブライトリングの、今年の新作モデルをまとめて紹介しよう。
2024年新作「クロノマット ヤニス・アデトクンボ」
ブライトリング・スクワッドのメンバーであるプロバスケットボール選手のヤニス・アデトクンボが、今回ブライトリングと共同で「クロノマット」のデザインを手掛けた。
「ギリシャの怪物」の愛称で親しまれるヤニス・アデトクンボの精神、そして所属するミルウォーキー・バックスで、その体躯を活かしてパワーフォワードを務める彼自身と同じく、大胆でインパクトのあるデザインを採用したという限定モデルは、GMT機能を搭載した「クロノマット オートマチック GMT 40 ヤニス・アデトクンボ」と、自社製自動巻クロノグラフを搭載した「クロノマット B01 42 ヤニス・アデトクンボ」の2型3種が登場している。
いずれのモデルも、ヤニス・アデトクンボの所属チームの、グッドランドグリーンをほうふつとさせる文字盤カラーを備えることが特徴だ。
自動巻き(Cal.32)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.77mm)。20気圧防水。世界限定1750本生産。79万2000円(税込み)。
クロノマット オートマチック GMT 40 ヤニス・アデトクンボは、シンプルな文字盤にイエローカラーのGMT針が添えられている。ケース、ブレスレットはステンレススティール製。直径40mm、厚さ11.77mmとクロノマットの中では抑えられたサイズ感によって、目立ちすぎず、しかし存在感を放ってくれるモデルに仕上がっている。
文字盤カラー以外にも、秒針の根本に配された「GA(Giannis Antetokounmpo)」のイニシャルや、ケースバックの彼のサインなどが、本作に特別感をもたらしている。
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KRGケース(直径42mm、厚さ15.1)。200m防水。世界限定250本生産。572万円(税込み)。
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KRGケース(直径42mm、厚さ15.1)。200m防水。世界限定250本生産。319万円(税込み)。
もうひとつのクロノマット B01 42 ヤニス・アデトクンボは、ブライトリングの自社製自動巻きクロノグラフムーブメントCal.01を搭載したモデルだ。素材に18Kレッドゴールドを使用しており、クロノマットのツール感ある意匠に、ラグジュアリーな雰囲気を添えている。ルーローブレスレットまたはグリーンのルーローラバーストラップモデルが用意されている。
本作の意匠もユニークだ。クロノグラフ秒針の根本にイニシャル「GA」があしらわれるほか、9時位置に配されたスモールセコンドがバスケットボールの意匠を模しているのが特徴的である。なお、本作のケースバックはトランスパレント式だ。
税込み定価はGMTモデルが79万2000円、クロノグラフモデルはブレスレットタイプが572万円、ラバーストラップタイプが319万円。前者が1750本、後者が各250本の限定生産だ。いずれも、ヤニス・アデトクンボ自身のメッセージとともに、特別ボックスに収められて販売される。
ちなみに、ブライトリングはアデトクンボ専用クロノマットを“キング・オブ・ザ・コート”のトリビュートとして彼に捧げている。世界にひとつのクロノマットは、18Kローズゴールド製ケースとブレスレット、アラビア文字表記のインデックス、そしてグリーン×ホワイトの配色を備えた文字盤が特徴だ。この配色は彼の所属チームへのオマージュであると同時に、ギリシャに生まれた無国籍の若者が、NBAの代表選手となるまでのストーリーを讃えており、22年公開の映画『Rise(邦題:ライズ コートに輝いた希望)』と24年のドキュメンタリー『The Marvelous Journey(邦題:ヤニス・アデトクンボ 栄光への旅路)』のテーマでもある。
非売品であるため時計市場には流通しない。コートサイドなどで、ヤニス・アデトクンボの手首の装いに注目したい。
2024年新作「クロノマット B01 42」
ブライトリングにとって2024年は、創業140周年の節目だ。17年にCEOとなったジョージ・カーン体制のもと、従来のコレクションを再編し、「陸」「海」「空」それぞれのフィールドに適した、あるいはすべてのフィールドに対応するモデルを展開している。
そんな中で「クロノマット」は、すべてのフィールドを網羅するコレクションだ。ブライトリングでは「自宅でもレッドカーペットの上でもビーチでも、あらゆる要望に応えるブライトリングの万能ウォッチ」とポジショニングしている。
クロノマットは1983年、イタリア空軍のアクロバット飛行チーム「フレッチェ・トリコローリ」のために製造されたコレクションで、翌84年のブランド創業100周年に、一般ユーザー向けにローンチされた。長らくクロノマットは、「マッシブ」「重厚」といったイメージが強かったかもしれない。しかし近年では、レディース向けのエレガントなモデルもコレクションに加わっている。もっとも、今年の新作のデザインは、伝統的なクロノマット同様、マッシブだ。一方でチタン素材を採用することで、軽快さを獲得している。
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径42mm)。200m防水。163万3500円(税込み)。
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径42mm)。200m防水。130万3500円(税込み)。
チタンをまとった新作「クロノマット B01 42」は、ルーローブレスレットと、このルーローブレスレットを模したラバーストラップモデルの2種が展開される。初期クロノマットに見られた筒状パーツが特徴的なルーローブレスレットは、2020年に復刻された仕様だ。軽量なチタンで製造されることで、より装着感が良好になっていることが予測できる。
オニオンシェイプのリュウズ、ライダータブを備えたベゼルなど、アイコニックなクロノマットの意匠はそのまま、というところが、ファンにとってはありがたい。一方でアンスラサイト文字盤にアイスブルーのクロノグラフ秒針を合わせることで、洗練された印象も有している。
搭載するムーブメントは自動巻きクロノグラフのCal.01だ。ブライトリングの基幹ムーブメントのひとつであり、C.O.S.C.公認クロノメーターを取得した精度や、約70時間のパワーリザーブ、そしてカレンダー操作禁止時間帯を持たないといった、優れた性能が自慢のクロノグラフだ。200mの高防水と相まって、頼もしい存在となっている。
税込み価格はルーローブレスレットモデルが163万3500円、ラバーストラップモデルが130万3500円。発表前に、一度本作を手にした時、重厚なクロノマットのイメージを覆す軽量さに驚かされた。ぜひ読者には、実機を手にしてみてほしい。
2024年新作「スーパークロノマット B01 44」
よりマッシブで、より精悍な新作モデルが「スーパークロノマット B01 44」だ。直径44mmのケースに、いかにも操作しやすそうな大きい回転ベゼルを備えつつ、やはりチタン素材を使うことで軽やかなモデルに仕上がっている。
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径44mm)。200m防水。177万1000円(税込み)。
自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径44mm)。200m防水。144万1000円(税込み)。
「スーパークロノマット」は、21年にコレクションに加わった。クロノマット初となるセラミックス製ベゼルインサートが採用されたモデルで、耐傷性や耐食性に優れるとともに、ツール感が強いクロノマットの意匠に、モダンなテイストを添えた。
搭載するムーブメントは、前述したクロノマット B01 42と同様に、自動巻きクロノグラフのCal.01だ。
税込み価格はルーローブレスレットモデルが177万1000円、ラバーストラップモデルが144万1000円である。
2024年新作「エアロスペース B70 オービター」
ハイブリッドクォーツである“デジアナウォッチ”として、時分針のほかに液晶ディスプレイも持つ「エアロスペース」。1985年に登場して以来、機械式クロノグラフがメインストリームであったブライトリングの中で、根強い支持を誇ってきた。
そんなエアロスペースに、特徴的なオレンジカラーの文字盤を持つ新作モデルが追加された。「エアロスペース B70 オービター」だ。
クォーツ(Cal.B70)。6石。Tiケース(直径43mm、厚さ12.95mm)。10気圧防水。チタンブレスレット:64万3500円(税込み)。ラバーストラップ:61万6000円(税込み)。
本作は、気球による、初の無着陸世界一周を成功させてから25周年を記念したモデルである。99年に気球飛行士のベルトラン・ピカールとブライアン・ジョーンズが、「ブライトリング オービター3」によって達成したこの偉業。ブライトリングはこの空の旅のスポンサーであったため、特別モデルとしてエアロスペース B70 オービターの発売に至ったのだ。
こういった誕生の経緯があるため、本作の文字盤カラーのオレンジはオービター3のカプセルを踏襲している。また、裏蓋には、この世界一周した気球の一部が、実際に収められた。中央のミッションロゴと、「First non-stop flight around the world 25th anniversary(初の無着陸世界一周飛行25周年)」の文言が刻まれており、特別感にあふれる仕様と言えるだろう。
エアロスペースとして、新しくなっているということも特筆すべき点だ。デジアナのコンビネーションやライダータブが付いたベゼルなど、従来の「エアロスペース エヴォ」からスタイルは大きく変えていないが、新作モデルではチタン製のケースとブレスレットが採用されている。いかにも堅牢な見た目はそのままに、重量は109グラムほどに抑えられているという。
また、ブライトリングを象徴するウイングロゴは12時位置に配されており、同時に、ミッションロゴが文字盤の目立つ位置にあしらわれている。さらに、インデックスは12、3、6、9のみアラビア数字だった従来品から、すべてがアラビア数字へと変更された。
搭載するムーブメントはCal.B70。C.O.S.C.クロノメーター公認であり、かつ一般的なクォーツ式時計の約10倍の精度を誇るスーパークォーツムーブメントで、ふたつのディスプレイではスプリットタイムとフライバック機能が備わった1/100秒計クロノグラフやカウントダウンタイマー、第2タイムゾーン、ふたつのアラーム、ラップ機能、パーペチュアルカレンダーなどを表示させ、さまざまなシーンで活用することができる。
記念モデルであり、かつチタン製であるにもかかわらず、定価64万3500円と、従来モデルと比べて3万3000円程度の価格差で済んでいるのも、うれしいところである。
2024年新作「ナビタイマー オートマチック GMT 41」
同じく“空”の計時をサポートしてきたコレクション「ナビタイマー」からの新作も、要注目だ。本コレクションからは、長らくナビタイマーのアイコンでもあったクロノグラフは持たず、代わって24時間針を使って第2時間帯表示ができる、GMT機能を持たせた新作モデルがバリエーションに追加されている。
自動巻き(Cal.32)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径41mm、厚さ11.65mm)。3気圧防水。81万8400円(税込み)。
自動巻き(Cal.32)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径41mm、厚さ11.65mm)。3気圧防水。77万6600円(税込み)。
自動巻き(Cal.32)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KRGケース(直径41mm、厚さ11.65mm)。3気圧防水。(左)206万2500円(税込み)、(右)481万2500円(税込み)。
クロノグラフを持たない分、シンプルではあるものの、ナビタイマーのもうひとつのアイコンである航空計算尺を搭載しているため、一目で本コレクションと分かる意匠は健在だ。切り込みの入ったベゼルや、5連コマのブレスレットも、ナビタイマーらしい。
一方で、さわやかなブルー文字盤や深みのあるグリーン文字盤などといった、モダンなカラーリングのモデルがラインナップされており、またナビタイマーの顔触れを楽しくする新作と言えるだろう。
2024年新作「ナビタイマー オートマチック 41」
シンプルな3針モデルのナビタイマーにも、新作が追加された。41mm径ケースの「ナビタイマー オートマチック 41」だ。これまでは36mm径や32mm径で、こういったベーシックなモデルがラインナップされてきたが、いっそうの存在感を手元で示してくれる。
自動巻き(Cal.17)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径41mm、厚さ11.65mm)。3気圧防水。75万6800円(税込み)。
自動巻き(Cal.17)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径41mm、厚さ11.65mm)。3気圧防水。71万5000円(税込み)。
自動巻き(Cal.17)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS×18KRGケース(直径41mm、厚さ11.65mm)。3気圧防水。(左)103万700円(税込み)、(右)130万6800円(税込み)。
自動巻き(Cal.17)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KRGケース(直径41mm、厚さ11.65mm)。3気圧防水。(左)199万3200円(税込み)、(右)474万6500円(税込み)。
新作ナビタイマー オートマチック 41も、モダンなカラーリングの文字盤が採用されている。また、ステンレススティール製モデルのみならず、ステンレススティールと18Kローズゴールドとのコンビネーションモデルや、重厚な18Kローズゴールド製モデルもラインナップされており、ブライトリングがいっそう幅広いユーザーの支持を集めるブランドになったことを示唆する新作だ。
2024年新作「コスモノート B12」
140年の歴史の中で、ブライトリングの時計は、さまざまなシーンをサポートした。この“シーン”とは、過酷な環境下を含む。「コスモノート」もまた、そんな時計のうちのひとつだ。1962年のNASAのマーキュリー計画で、宇宙探索に携行された時計だ。この計画のメンバーであった宇宙飛行士のスコット・カーペンターからの要請で、ブライトリングはナビタイマーのデザインを宇宙探索用に改良した。彼は、もともとブライトリングのファンであり、ナビタイマーの計算機能に感銘を受けていたのだという。
こうしてできたコスモノートは、宇宙空間でも昼夜の区別がつくよう、24時間表示の文字盤を備えている。また、宇宙服の手袋を着用したままでも操作しやすいよう、ボリュームのある回転ベゼルが搭載された。その後、62年5月24日、彼はこの時計をミッションに携行している。
ブライトリングは140周年の節目に、このコスモノートの限定モデルをリリースした。「コスモノート B12」である。
自動巻き(Cal.B12)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KRGケース(直径41mm、厚さ13.6mm)。3気圧防水。世界限定250本。295万9000円(税込み)。
本作は、18Kレッドゴールドケースに、深みのあるグリーン文字盤が組み合わされている。インダイアルはブラックカラーに彩られることで、“パンダ”風文字盤となっていることも、目を引く。インデックスはゴールドカラーとなっているため文字盤に埋没しておらず、視認性は良好であることがうかがえる。差し色に赤が使われることで、宇宙を想起させるコスモノートの中にも、レーシーな印象が備わった。
なお、24時間表示の腕時計というのは、決してありふれてはいない。12時間表示が一般的な腕時計にとって、24個のインデックスを持たせるには文字盤が小さかったり、12時間表示を24時間表示に変更した時、針の位置がズレやすかったりするためだ。そんな中でコスモノートは熟成された珍しいコレクションとなっており、ブライトリングが140年の歴史の中で培ってきた高度な時計製造技術の一端を、垣間見ることができる腕時計と言える。
搭載するムーブメントは、Cal.B12だ。C.O.S.C.公認クロノメーターを取得した自動巻きムーブメントで、約70時間のパワーリザーブを持つ。裏蓋はトランスパレント式であるため、BREITLINGの印字やコート・ド・ジュネーブ装飾が施されたローターやクロノグラフの機構を観賞することができる。なお、世界限定250本であることを示す「One of 250」や、「FIRST SWISS WRISTWATCH IN SPACE」「MAY 24th 1962」などといった刻印があしらわれていることも、併せて見て取れる。
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