グランドセイコーは1988年に「95GS」をリリースして以来、さまざまなクォーツ式腕時計の名作を生み出してきた。本記事では、多くのユーザーに愛されるグランドセイコーのクォーツ式腕時計の特徴とともに、今注目すべき、おすすめのモデル5本を紹介する。
グランドセイコー、クォーツ式腕時計のマイルストーン
グランドセイコーは1960年、「世界に挑戦する国産最高級の腕時計をつくる」ことを目指して誕生したブランドだ。70年代中頃に一時的に生産をストップするものの、88年、高精度クォーツ式腕時計「95GS」によって、再び時計市場に返り咲く。この95GSをはじめ、グランドセイコーのクォーツ式腕時計の歴史における、3つのマイルストーンを振り返ろう。
1988年、ブランド初のクォーツモデルが誕生
セイコーは1969年、「クオーツ アストロン 35SQ」をリリースした。このモデルは世界初の量産型クォーツ式腕時計であり、後の“クォーツレボリューション”のきっかけとなる。機械式時計よりも高精度で、しかも量産体制が敷かれたことでより手の届きやすい価格で販売されるようになったクォーツ式腕時計は、人々の生活を一変させる。そんなクォーツ式腕時計が普及していく一方で、機械式腕時計をメインに製造していたグランドセイコーは、一時的に生産をストップする。市場における機械式時計のシェアは、シュリンクしていったためだ。
こういった時代を経て、1988年にグランドセイコーは「95GS」を誕生させる。本作はクォーツ式腕時計だが、耐温度特性や耐湿度特性、耐衝撃性能に優れた高品質な水晶振動子を用いることで、年差±10秒の精度を実現。このモデルをきっかけに、グランドセイコーは再びその名を時計市場に復活させた。
1993年、“究極”のクォーツムーブメントCal.9F83が登場
95GSの登場から5年後、グランドセイコーは「クォーツを超えたクォーツ」として、Cal.9F83をリリースした。このムーブメントは、ただ高精度なだけではない。「バックラッシュオートアジャスト機構」「ツインパルス制御モーター」「瞬間日送り機構」などといった、画期的な機構を備えていた。従来のクォーツ式腕時計とは一線を画す、細部に至るまで徹底的に妥協しない開発精神を注ぎ込んだこのムーブメントは、名実ともに世界最高峰の性能を持ったクォーツのひとつ。グランドセイコーのハイレベルなウォッチメイキングを象徴する存在とも言える。
“4本目の針”を搭載。Cal.9F86が登場
Cal.9F83の誕生から25年を経た、2018年。グランドセイコーはさらに画期的なクォーツ式ムーブメントを開発した。GMT針を搭載したCal.9F86である。
時分針とは別にGMT針が付加されることで、現在地の時刻のみならず、ホームタイムなどといった別のエリアの時間帯も表示させることができるGMTウォッチ。グランドセイコーは9Fクォーツにこの機構を“4本目の針”として付加するのみならず、さらなる革新性を添えた。「4軸独立ガイド構造」を採用したのである。
通常GMTウォッチの操作は、時針を単独で動かすことで現在地の時間を表示させる。しかし9Fクォーツは“年差”クォーツである。グランドセイコーの開発陣は、「秒単位で正確に時刻合わせをしていても、リュウズを引き出して時針を調整する間、秒針も止まってしまっては時間が遅れてしまう」と考えた。そこで、時針・分針・秒針・GMT針の4本の針を独立して回転させる構造とすることで、秒を止めることなく時針調整を可能に。年差±10秒を損ねないクォーツ式GMTウォッチを生み出したのだ。
グランドセイコーのクォーツ式腕時計の歴史におけるマイルストーンを見ていくと、同ブランドの妥協のない製品開発への姿勢や、卓越した時計製造技術が見えてくるだろう。
“究極”のクォーツムーブメント「9Fクォーツ」
グランドセイコーの9Fクォーツが“究極”なのは、従来のクォーツ式腕時計の常識を覆す、数々の画期的な機構が盛り込まれているためだ。9Fクォーツには、以下のような機構が搭載される。
・針の動きも妥協しない「バックラッシュオートアジャスト機構」
・太く重い針を、正確に動かす「ツインパルス制御モーター」
・瞬時にデイト表示が切り替わる「瞬間日送り機構」
・精度の微調整が可能な「緩急スイッチ」
・輪列部やローターを保護し、長期にわたり安定した駆動を実現する「スーパーシールドキャビン」
また、大量生産されているクォーツ式腕時計は、自動組立が一般的だ。しかしグランドセイコーの9Fクォーツは数々の画期的な機構によって複雑な構造となっているため、手作業でしか組み立てることができないという。
受け継がれてきた革新性、妥協のないものづくりの姿勢、そして職人達の熟練の技術が結集することで、世界に誇るグランドセイコーの9Fクォーツは存在しているのだ。
グランドセイコーのクォーツ式腕時計の特徴
グランドセイコーが誇るクォーツ式腕時計は、以下のように「セイコースタイル」を受け継いだデザインや、自社製造ならではの高い品質により、多くの時計好きから愛されている。代表的な特徴を押さえておこう。
「セイコースタイル」を受け継いだデザイン
セイコーには、「セイコースタイル」という独自のデザイン文法がある。1967年に誕生した「44GS」によって確立されたスタイルで、目指すのは「燦然と輝く時計」。ゆがみやねじれのない平面を基調としており、さらに各面は原則として鏡面とされている。さらに多面カットが施されたインデックスと針を際立たせるフラットなダイアルを採用するなど、光と影を調和させることで、審美性と視認性が同居した高級時計を生み出している。そして、グランドセイコーのクォーツ式腕時計にも、このセイコースタイルは受け継がれている。
グランドセイコーのクォーツ式腕時計は優れた精度や性能も魅力的だが、外装の出来栄えにおいても特筆すべき点が多いがゆえに、時計愛好家を中心に幅広いユーザー層から支持されているのだ。
マニュファクチュールが実現する、唯一無二の製品
自らのブランドで製品の開発から設計、製造、組み立て、調整、検査、そして出荷まで、一貫して手掛けるマニュファクチュールが、グランドセイコーの製造体制だ。グランドセイコーはこの体制によって、セイコースタイルをはじめとした同ブランドのDNAや哲学を落とし込んだ時計づくりを可能としている。
なお、グランドセイコーの製造拠点は国内にふたつあり、同ブランドのクォーツ式モデルは長野県塩尻にある「信州 時の匠工房」で製造されている。
この澄んだ空気と美しい水にあふれた地で、自社製造だからこそ実現できる伝統の継承、そして新たな試みへの挑戦が行われることで、グランドセイコーの唯一無二のクォーツ式腕時計は生み出されているのだ。
おすすめのグランドセイコー クォーツ式腕時計5選
今注目すべき、グランドセイコーのクォーツ式腕時計を5本、紹介する。定番デザインのモデルから、日本的な美意識を強く感じさせるモデル、あるいはスポーティーなモデルに至るまで幅広く紹介するので、購入の参考にしてほしい。
グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGP001
クォーツ(Cal.9F85)。SSケース(直径40mm、厚さ11.1mm)。10気圧防水。44万円(税込み)。
「ヘリテージコレクション」のひとつであるRef.SBGP001は、セイコースタイルを確立した44GSを、現代解釈したモデルだ。グランドセイコーは、「グランドセイコー王道のデザイン」と標榜している。
セイコースタイルの特徴である、ザラツ研磨によってゆがみのない鏡面仕上げを与え、かつ筋目仕上げをコンビネーションさせることで独自の立体感を生み出しており、ベーシックながらも優美なデザインだ。また、インデックスと時分針の多面カットにより、美しさと視認性を両立させている点もポイントだ。
本作の製造地である信州を意識した、「厚銀放射」ダイアルも印象的で、世代を超えて愛されるスタイルを持ったモデルである。
グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGP011
クォーツ(Cal.9F85)。SSケース(直径40mm、厚さ10.6mm)。10気圧防水。35万2000円(税込み)。
世界的なインフレや原材料の高騰によって、高級腕時計の価格は上昇を続けている。為替の影響を受けづらい国産時計も、海外ブランド品より上昇率は緩やかとはいえ、ジワジワと値上がりを続けている。そんな中で、まだ30万円台で購入できるグランドセイコーが、このRef.SBGP011だ。
手の届きやすい価格ながらもCal.9F85を搭載しており、高性能クォーツをユーザーは堪能できる。なお、このCal.9F85は時針単独時差修正機能を備えており、秒針を止めることなく時針を単独で動かすことができるため、高精度を干渉しない。
ケース直径は40mm、そして厚さは10.6mmと薄型であるため、ブラックカラーのダイアルとサイズ感も相まって、さまざまなシーンで着用できる汎用性の高さも魅力だ。
グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGX355
クォーツ(Cal.9F62)。Tiケース(直径37mm、厚さ10.6mm)。10気圧防水。51万7000円(税込み)。
「雪白」ダイアルが特徴的なRef.SBGX355も紹介しよう。このダイアルは強く乾いた風が吹く冬季、雪面に作り出される風雪紋を表現している。信州 時の匠工房から望める穂高連峰で、冬に見られる風景のひとつだ。
そんな冬の光景を思わせる本作のダイアルは一見すると純白だが、単に白塗りではなく、特殊な銀メッキ加工によって、この色味と繊細なパターンが実現されている。
日本の自然の一部を切り取り、美しさを見出し、そして時計の意匠として落とし込むのはグランドセイコーの得意とするところ。雪面に差す光のようなブルースティールの秒針も目を引くデザインだ。
直径37mm、厚さ10.6mmのコンパクトなケースはブライトチタン製。軽量ゆえに取り回しが良く、毎日着用したくなる1本だといえる。
グランドセイコー「スポーツコレクション」Ref.SBGN027
クォーツ(Cal.9F86)。SSケース(直径39mm、厚さ12.3mm)。20気圧防水。45万1000円(税込み)。
GMT針によって第2時間帯を表示できる、Ref.SBGN027。搭載するムーブメントのCal.9F86は4軸独立ガイド構造によって、時計を止めることなく時差修正が可能となっている。“究極”のクォーツを目指すグランドセイコーらしい、付加機能搭載モデルである。
また、「スポーツコレクション」として展開されているため、ヘリテージコレクションとはまた違った、スポーティーかつ存在感あるデザインも魅力的だ。24時間スケールが直接印字された金属ベゼルはツール感を強めている。
デザインがスポーティーなだけでなく、ねじこみ式リュウズの採用により、高い気密性と防水性、耐久性も備えている。一方で放射模様の黒いダイアル、そして白いGMT針が、高級感やスマートさを感じさせるデザインにもなっており、直径39mm、厚さ12.3mmと、大きすぎないケースと相まって、オンオフ問わず活躍してくれるクォーツ式腕時計だ。
グランドセイコー「エレガンスコレクション」Ref.SBGX331
クォーツ(Cal.9F61)。SSケース(直径38mm、厚さ10.4mm)。日常生活用防水。45万1000円(税込み)。
2針、デイト表示の小窓なしと、クラシカルなドレスウォッチのスタイルを有する「エレガンスコレクション」Ref.SBGX331。全体としてクラシックな雰囲気を漂わせると同時に、ゆがみのないドーム形状の風防と、そこからつながるケースの造形が「磨き上げられた宝珠」のような美しさをたたえている。
一方で高性能なCal.9F61を搭載していること、そして日常生活用防水であることから、普段使いにもおすすめできるドレスウォッチとなっている。
グランドセイコーの高精度なクォーツ式腕時計を手に入れよう
1988年に95GSを生み出して以来、グランドセイコーは卓越したクォーツ式腕時計の数々を世に送り出してきた。高性能であることは言わずもがな、意匠も日本の美意識と熟練の技を感じさせるものであり、今後も多くの時計好きを楽しませてくれるはずだ。
ぜひこの機会に、グランドセイコーの特別なクォーツ式腕時計を手に入れてみよう。
参考サイト:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/
https://www.webchronos.net/features/112492/
https://www.webchronos.net/features/45458/
https://www.webchronos.net/features/106374/