カシオ G-SHOCKの新作、「マッドマスター GWG-B1000EC-1AJF」のレビューを行う。強力な防塵・防泥機能を備えたマッドマスター最新作は、ハイエンドモデルにふさわしい機能性と作りこみを両立させた魅力的なスポーツウォッチだ。
Text & Photographs by Tsubasa Nojima
[2024年7月16日公開記事]
過酷な環境下でも確実に任務を果たす、G-SHOCK MASTER OF G
今回は、発表されたばかりのカシオG-SHOCKの新作、「マッドマスター GWG-B1000EC-1AJF」のレビューをお届けする。
マッドマスターの特徴は、強力な防塵・防泥機能であるマッドレジストを備えている点にある。砂粒などを含む粘度の高い泥は、時計を含む精密機械にとって天敵だ。プッシュボタンやリュウズ、ケースの隙間に泥が入り込んでしまえば、操作系の固着やムーブメントの破損につながってしまう。カシオは、1985年にマッドレジストを開発し、これを克服。最新作である本作では、シリンダー型のパーツによってプッシュボタンを保護し、ねじ込み式リュウズとガスケットによって泥や塵が内部に侵入することを防いでいる。
ただでさえ多機能なG-SHOCKだが、ハイエンドなMASTER OF Gシリーズに属する本作は、過酷な環境下に耐えうるタフネスとアウトドアで役立つ豊富な機能、さらに審美性に優れた外装まで与えられている。あらゆる面で高度化された耐衝撃ウォッチである最新のマッドマスター。その実力はいかほどか、確認してみたい。
強力な防塵・防泥機構を搭載した「マッドマスター」の最新作。時刻をアナログ表示するため、デジタルモデルとは異なり、強い光源下でも視認性が失われることはない。光発電クォーツ。カーボンファイバー×SSケース(縦58.7×横52.1mm、厚さ16.2mm)。20気圧防水。13万2000円(税込み)。
童心を呼び起こすメカメカしい外観
本作をケースから取り出し対面したときの胸の高鳴りは、しばらく経った今も忘れられない。大型のプッシュボタンと複雑に分割されたパーツで構成されたメカメカしいケースは、幼少の頃に憧れたロボットを想起させるものであった。決して洗練されているとは言えないが、いかなる環境下でも確実に時刻を表示するという機能に懸ける想いが、そのまま形になったようなデザインは、まさに実戦向きのプロフェッショナルツールという佇まい。確固たるコンセプトに基づいた統一感のある設計が、理屈を考えるよりも先に感動を与えてくれる。ちなみに公式の説明によると、オフロード車やサバイバルギアに見られる質実剛健なイメージを落とし込んだデザインとのこと。
そのメカメカしさに拍車をかけているのが、各パーツのシャープな造形である。本作のケースは、αGEL(アルファゲル)とカーボンファイバー強化樹脂でモジュールを包み、DLC仕上げのステンレススティール製のベゼルを取り付け、さらに樹脂や金属製のいくつものパーツを取り付けることで出来上がっている。これらひとつひとつのパーツが持つエッジの立った造形が、全体に緊張感と高級感をもたらすことに寄与している。
プッシュボタンは、2、4、6、8、10時位置に合計5つ配されている。幅が広く、トップに網目状の滑り止めが施されていることから、操作性にも十分配慮されていることが分かる。3時位置のねじ込み式リュウズはケースに半ば埋め込まれ、引っ掛かりのないデザインとなっている。
ダイアルは多層構造を取る。ベースとなるグレーのプレートには滑り止めのようなパターンが刻まれ、6時位置には液晶が配されている。3時位置には方位計、9時位置には機能によって役割を変える機能針がある。ややグレーがかったインデックスは、十分すぎるほどの高さを持つ。12時と6時のみアラビア数字インデックスが採用されているため、瞬時に時計の向きを判別することが可能だ。時分針はペンシル型で統一されているが、それぞれの長さと太さに明確な差が設けられているため、混同することはないだろう。視認性だけではなく判読性の高さにまで配慮されているのは、さすがプロフェッショナル向けモデルだ。
チャプターリングには、ミニッツマーカーとともに、オレンジの小さなインデックスが配されている。本作の随所にはオレンジ、レッド、イエローが用いられているが、これはレスキュー隊などの装備に用いられるエマージェンシーカラーに範を取ったもの。ブラックの本体とのコントラストを高め、視認性を確保している。
ステンレススティール製のケースバックには、型番や機能に関する情報が刻まれている。樹脂製のバンドはケースに対してネジで固定され、遊環と尾錠はステンレススティール製。2本のツク棒に合わせ、バンドの穴も2列ある。この穴は本来6時側だけにあれば十分だが、12時側にも存在する。デザイン上の統一感を持たせるためか、あるいは通気性を確保するためだろう。なお、本作を含む現行のG-SHOCKでは、ケースやバンドに用いられている樹脂パーツに、再生利用が可能なトウゴマやトウモロコシを原料としたバイオマスプラスティックの採用を推進している。
瞬時にアクセス可能な各種機能
本作には豊富な機能が搭載されている。ソーラー充電や電波受信といったメンテナンスフリーを実現する機能から、ワールドタイム、アラーム、クロノグラフ、タイマー、方位計測、高度計測、気圧計測、温度計測、高度記録の確認、日の出/日の入り時刻の確認まで多種多様だ。
モードの切り替えは、ボタン操作によって行う。2時位置のボタンを押下すると方位計測が開始され、3時位置の方位計の針が北を指す。4時位置のボタンは、高度計測を行うためのものだ。押下することで、液晶に現在地の高度がメートル単位で表示される。6時位置のボタンはライトの起動。4時半位置の内壁にライトが仕込まれており、これが点灯することで暗所でも時刻や液晶を容易に確認することができる。8時位置はモードセレクター。押下する度に気圧計測モード、温度計測モード、高度記録の確認モード、日の出/日の入りモード、ストップウォッチモード、タイマーモード、アラームモード、ワールドタイムモード、電波の受信モードへと切り替わる。10時位置のボタンは、液晶の表示を切り替えるためのもの。押下する度に日付や時刻など、表示する内容を変更することができる。
その他、液晶と針が重なって表示が見にくい場合は6時と8時位置のボタンを同時に押下すると針が退避する。また、時刻モードへ切り替えた際に9時位置の針が一時的に充電量を示すため、残量を視覚的に把握することが可能だ。使用できる機能は、充電量が少なくなるにつれて制限されていく。さらに充電切れになってしまうと設定が初期化されるため、残量が少なくなってきたら速やかに太陽光に当てるなどして充電しよう。
3時位置のリュウズは、ねじ込みを解除することで使用可能だ。樹脂製のパーツで包まれるように保護されているが、リュウズ自体が大きいため操作性は良好。一段引くと、液晶画面に都市名が表示され、時差調整が簡単にできるようになる。そのままリュウズを回して設定先の都市が表示されたらリュウズを押し込むだけだ。針が高速で回転し、設定先の時刻を示す。異なるタイムゾーンを頻繁に行きかう人にとっては、非常に便利な機能である。設定後は、リュウズのねじ込みを忘れずに。
頼もしい装着感はG-SHOCKならでは
G-SHOCKは基本的にボリューミーだが、本作はその中でもとりわけ大きい。さらに複数のパーツから成る構造とエッジの立ったデザインがサイズに起因する迫力を増幅させ、装着時に頼もしさを感じさせてくれる。そんな見た目とは反して、意外にもかなり取り回しやすい。これは、カーボンファイバーなどの軽量な素材を多用しているためだろう。その他、サラリとした肌触りのケースバック、しなやかながらもコシのあるベルトが、装着感の向上に大きく貢献している。加えて見逃せないのが、ケースとバンドの間に組み込まれた可動式のL字型パーツだ。これがケースバックからバンドまでの流れるようなラインを作り出し、フィット感を生み出している。
視認性は抜群だ。グレーのダイアルに、ホワイトのインデックスと針が高いコントラストを生んでいる。立体的なインデックスは、正面からだけではなく斜めから見た際の判読性の向上にもひと役買っており、作業の最中でも手元を一瞥しただけで時刻を確認できる。
マッドレジスト構造のプッシュボタンは、ほとんどがステンレススティール製の円筒形のパーツに隠れているため少々押しにくいように思えたが、ボタン自体が大きいため、実際には難なく操作することができた。ただし、指が大きい人やグローブを着用しての使用を想定する場合は、購入前に試してみることをお勧めする。
また、本作は専用アプリ「CASIO WATCHES」を介してスマートフォンと連携することができる。時刻やワールドタイムの設定、ログ管理を行うことが可能であり、場合によっては時計本体よりもスマートフォンで操作した方が使いやすいだろう。
大人の休日を彩る唯一無二のスポーツウォッチ
筆者はこれまでに数本のG-SHOCKを使用してきたが、それらは主に、作業やスポーツシーンで気兼ねなくラフに使うためのものであった。そのような位置付けからか、本作のような比較的高額なモデルに対して、どこか自分とは無縁の存在だと思っていた節があった。
しかし、実機を触るとどうだろうか。使いこなすことが難しいほどの多機能や絶対的な安心感をもたらす耐衝撃や防泥構造、そして凝った作りこみの外装は、否が応でも着用時のテンションを上げてくれる。まさに、安価なモデルとは桁違いの満足感を与えてくれるものであった。
本作をスーツと合わせることは難しいだろう。しかしだからこそ、解放的な気分になれるアウトドアを目一杯楽しむにはうってつけの存在である。最高のレジャーシーンを最大限楽しみ尽くすための、まさに大人のスポーツウォッチだ。もちろん、貴方が自衛官やレスキュー隊員など、過酷な現場での任務に当たるのであれば、本作はその手元で輝くに値する腕時計でもある。その任務の成功をサポートしてくれるに違いない。
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