グランドセイコーには、通称「白樺モデル」と呼ばれるモデルが存在する。「エボリューション9 コレクション」のRef.SLGH005とRef.SLGA009だ。なぜ白樺と呼ばれているのかを明らかにするとともに、2モデルの特徴や違いも併せて解説する。
グランドセイコーの“白樺モデル”とは
グランドセイコーの白樺モデルRef.SLGH005とRef.SLGA009は、前者が2021年、後者が2022年に発表されたモデルだ。まずは、これら2モデルの特徴と違いを見ていこう。
白樺パターンの文字盤を備えたRef.SLGH005とRef.SLGA009
Ref.SLGH005とRef.SLGA009は、いずれも白樺をモチーフとしたダイアルを備えている。2モデルが「白樺モデル」と呼ばれるゆえんだ。
なお、グランドセイコーには白樺林をモチーフとした文字盤を持つモデルが、他にも多数存在する。しかし、そのなかでも「白樺モデル」と呼ばれているのはRef.SLGH005とRef.SLGA009のふたつだけであり、それ以外は厳密には「白樺モデル」ではない。
ふたつの“白樺モデル”の違い
Ref.SLGH005とRef.SLGA009は、搭載するムーブメントの種類が異なっている。Ref.SLGH005が機械式ムーブメントを搭載しているのに対し、Ref.SLGA009が搭載しているのはスプリングドライブムーブメントである。
またふたつのモデルは、モチーフとなった白樺林の場所も違う。グランドセイコーの機械式時計とスプリングドライブモデルは別の工房で製造されており、それぞれが製造拠点の近くに群生する白樺林をインスピレーションソースにしているのだ。
Ref.SLGH005とRef.SLGA009を比べると、文字盤のデザインや色味も少し異なっていることが分かる。これは、それぞれの白樺林が持つイメージの違いを、文字盤のデザインや色味で表現しているためだ。
グランドセイコー「エボリューション9 コレクション」Ref.SLGH005
グランドセイコーの白樺モデルのうち、機械式時計として登場したのがRef.SLGH005である。デザインやムーブメントの特徴を詳しく見ていこう。
自動巻き(Cal.9SA5)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。10気圧防水。127万6000円(税込み)。
岩手県の白樺林をモチーフにした文字盤
Ref.SLGH005の文字盤は、岩手県の白樺林をモチーフにしている。グランドセイコー機械式モデルの製造拠点である「グランドセイコースタジオ 雫石」の近くに群生する、日本屈指の白樺林だ。
力強く壮麗なイメージを放つこの白樺林を、白樺の樹皮のような型打模様と雪を思わせる銀白色で表現している。
Ref.SLGH005とRef.SLGA009の文字盤を比較すると、Ref.SLGH005の方が文字盤の凹凸が強調されているため、よりダイナミックな印象を受ける。
機械式ムーブメントCal.9SA5を搭載
Ref.SLGH005に搭載されているCal.9SA5は、20年に誕生したグランドセイコー専用の機械式ムーブメントだ。
主ゼンマイの伝導効率を飛躍的に高めるデュアルインパルス脱進機と、慣性モーメントが大きいテンプの搭載を可能にしたツインバレルにより、3万6000振動/時のハイビートでありながら最大巻上時約80時間のパワーリザーブを発揮する。
水平輪列構造により薄型化を実現させている点も特徴である。さらに、重心位置を下げることで、より快適な装着感が得られるようになっている。
裏蓋から見える「雫石川仕上げ」
裏蓋から見えるムーブメントの仕上げに凝っている点も、グランドセイコー白樺モデルの魅力だ。
Ref.SLGH005の裏側には、季節の変化に富んだ雫石川の流れをイメージした、繊細なストライプ模様の「雫石川仕上げ」が施されている。
グランドセイコー「エボリューション9 コレクション」Ref.SLGA009
Ref.SLGA009は、グランドセイコー独自のスプリングドライブを搭載した白樺モデルである。Ref.SLGH005と比較しながら、Ref.SLGA009の特徴や魅力を紹介する。
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自動巻きスプリングドライブ(Cal.9RA2)。38石。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。127万6000円(税込み)。
長野県の白樺林をモチーフにした文字盤
グランドセイコーのスプリングドライブモデルは、長野県の「信州 時の匠工房」で製造されている。Ref.SLGA009の文字盤のモチーフになっているのは、この工房近くにある日本有数の白樺林だ。
Ref.SLGH005が壮麗で力強い白樺林を表現しているのに対し、SLGA009ではスプリングドライブの流れるような針の動きに呼応するかのような白樺林の静けさを表現している。
Ref.SLGA009の文字盤はRef.SLGH005より凹凸が少なく、上品な印象を受ける。Ref.SLGH005が「動」を感じさせるのに対し、Ref.SLGA009は「静」を表現したモデルといえるだろう。
スプリングドライブムーブメントCal.9RA2を搭載
独自ムーブメントのスプリングドライブは、機械式とクォーツ両方の要素を併せ持つ駆動システムである。主ゼンマイの動力のみでクォーツと同等の精度を発揮する一方、電池やモーター、蓄電池は内蔵されていない。
SLGA009に搭載されているCal.9RA2は、20年に誕生した高性能スプリングドライブムーブメントCal.9RA5と同等のスペックでありながら、パワーリザーブ表示を裏側に配することで薄型化に成功したムーブメントだ。
大きさの異なるふたつの香箱を並べて配置した「デュアルサイズバレル」により、従来の約72時間を大幅に超える、約120時間のロングパワーリザーブを実現している。
裏蓋から見える「信州霧氷仕上げ」
Ref.SLGA009の裏蓋からは、スプリングドライブの製造拠点である信州の自然に敬意を込めた、信州霧氷仕上げを堪能できる。
受の表面に施された梨地加工で霧氷を表現し、受の稜線や端面、穴に施されたダイヤモンドカットでは夜空にきらめく星のような深遠な輝きを実現している。
インジケーター針とネジには、Ref.SLGH005では使われていないブルースティールを採用し、Ref.SLGA009ならではの静謐(せいひつ)なイメージをより強調している。
2024年にも、新しい白樺モチーフの文字盤が登場
2024年にも、白樺の樹皮(バーチバーク)をモチーフとしたモデルが登場している。「エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート 36000 80 Hours」だ。
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手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブリリアントハードチタンケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。3気圧防水。152万9000円(税込み)。
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手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。18KPGケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。3気圧防水。世界限定80本(うち国内50本)。605万円(税込み)。
新型ムーブメントCal.9SA4とともにリリースされたモデルで、「心地よい巻上げ感と音」を追求した手巻き時計だ。この巻き上げのためにコハゼが新規設計されたことや、コハゼがグランドセイコースタジオ 雫石の敷地内でも見ることのできるセキレイという鳥をイメージされていることなどで、大きな話題となった。
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このふたつの新しい手巻きモデルの文字盤が、Ref.SLGH005のように、岩手県の白樺林をイメージした文字盤となっているのだ。もっともRef.SLGH005とは異なり、パターンは横方向にあしらわれている。
現在グランドセイコーのオンラインブティックではどちらも売り切れとなっているものの、今後もこういった“白樺モデル”の選択肢が豊富になることを、期待せずにはいられない。
白樺モデルの魅力を堪能しよう
文字盤で白樺林を表現した白樺モデルRef.SLGH005とRef.SLGA009は、それぞれに異なる特徴や魅力が備わっている。白樺林が持つイメージだけでなく、ムーブメントの種類も違う。
それぞれのモデルを比較してお気に入りの1本を手に取り、独特の雰囲気を醸し出す白樺モデルの魅力を堪能しよう。
参考サイト:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/