「ブルガリ アルミニウム GMT」。伝説のギター“ストラト”生誕70周年を祝う限定モデルとは?【2024年新作時計】

2024.10.02

8月29日から9月2日にかけて開催された、ジュネーブ・ウォッチ・デイズ2024。スイス・ジュネーブ市をあげての本イベントの、中心的な存在のひとつであるブルガリは、今年もこの時期に合わせて新作モデルを多数打ち出した。中でも注目は、伝説のギターである「ストラトキャスター」の生誕70周年を祝した、「ブルガリ アルミニウム GMT フェンダー® 限定モデル」。本記事では、この特別な新作モデルを深掘りする。

ブルガリ アルミニウム GMT フェンダー® 限定モデル

三田村優:写真
Photographs by Yu Mitamura
鶴岡智恵子(クロノス日本版):文
Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2024年10月2日公開記事]


ブルガリが伝説のギターをコラボレーションで祝う!

 2024年8月29日から9月2日にかけて開催されたジュネーブ・ウォッチ・デイズ2024で、ブルガリは楽器メーカーであり、とりわけエレクトリックギターの製造で知られているFENDER(フェンダー)とのコラボレーションモデルを発表した。「ブルガリ アルミニウム GMT フェンダー® 限定モデル」だ。

ブルガリ オクト 2024年新作

ブルガリ「ブルガリ アルミニウム GMT フェンダーⓇ限定モデル」Ref.104117
自動巻き(Cal.B192)。パワーリザーブ約42時間。アルミニウムケース(直径40mm)。100m防水。世界限定1200本。66万円(税込み)。

 本作はフェンダーが製作したエレクトリックギター、「ストラトキャスター」をモチーフとしている。1954年にこの“伝説”のギターは誕生しており、すなわち今年は70周年。1954年にフェンダーから生み出されたストラトキャスターは、同社いわく「音楽の進歩と音の探求の最前線に立ち続け」てきた存在だという。一方のブルガリは、ジュエリー、そしてウォッチメイキングの世界で、卓越した技術力のもと、トップクラスのアイテムを輩出してきたブランドだ。この両者が、細部まで妥協せず、かつ正確さを誇る独自の作品を生み出す、というものづくりへの情熱を共有し、文化的アイコンともいえるタイムレスなデザインを取り入れることで、時計・ギターの双方でストラトキャスター誕生70周年を祝う。これが、今回のコラボレーションのコンセプトである。

ブルガリ ストラトキャスター

ストラトキャスター誕生70周年を祝うため、フェンダー側からリリースされた「Fender® Custom Shop Limited Edition Bvlgari Stratocaster®」。世界限定70本が製造される。

 なお、このコラボレーションにあたって、ブルガリからは本作が、フェンダーからはFender Custom Shopによる、ヴィンテージギターのコレクターたちのために製作された「Fender® Custom Shop Limited Edition Bvlgari Stratocaster®」がリリースされている。

 ここまでは、本作のプレスリリースに書いてあったことだ。私は楽器は不勉強で、ストラトキャスターについて十分な知識がない。そのため、このギター、そして音楽に絡めた本作の味わいについては、ライターの堀内俊氏が、10月4日(金)に発売する『クロノス日本版』115号の新鋭ページで熱く書いているので、一読されたし。私は、「新しいブルガリ アルミニウム」という視点から、このコラボレーションモデルを深掘りしていきたい。


「ブルガリ アルミニウム」の、今まで知らなかった顔立ち

ブルガリ アルミニウム GMT フェンダー® 限定モデル

これまでマットな仕上げの文字盤が多かった「ブルガリ アルミニウム」。本作は、ストラトキャスターのボディをほうふつとさせるような、光沢のあるブラウンのグラデーション文字盤を備えている。

 ブルガリ アルミニウムはその名の通り、アルミ素材をケースに用いたブルガリのコレクションだ。1998年に誕生した、アルミという腕時計ではあまり使われてこなかった素材、かつカウチュストラップを組み合わせたモダンでスポーティーな意匠が特徴的な腕時計であった。

 このブルガリ アルミニウムがどれくらいの期間にわたり、どんなモデルが製造されたのか正確には分からない。しかし、中古の腕時計を取り扱う販売店で働いていた私は、ブルガリ アルミニウムが店頭に並べられているのを、たまに見かけていた。そして、「たまに」とはいえ、その意匠が強く印象に残っていた(もっとも、「ディアゴノ」として販売されていたようにも記憶しているのだが……)。それだけこのモデルの意匠というのは、アイコニックだったのだ。

 そんなブルガリ アルミニウムが、2020年に新生コレクションとしてリバイバルされた。2020年は、すでに「オクト」コレクションがジワジワと人気を博してきており(特に前年から引き続き、「オクト フィニッシモ」にたくさんの新作モデルが追加された)、加えて同社の腕時計というと「ブルガリブルガリ」のイメージが強かった。一方のブルガリ アルミニウムは、1998年当時のアイコニックな意匠をほぼ変えずに新生として打ち出しており、リバイバルを知った当初、私は「既存コレクションと比べて、ブルガリにしてはスポーティー寄りの、強いキャラクターがある」と思った。実際、ラバー製ベゼルとラバー製ストラップを有し、さらにはどのモデルも「赤」、あるいは何らかのヴィヴィッドなカラーが使われたこの新生コレクションは、明らかに既存コレクションとはブランド内でのポジショニングが異なっているのだろう。

「既存コレクションとは、一風変わったブルガリのスポーツウォッチ」というブルガリ アルミニウムのポジションが本コレクションのアドヴァンテージであり、ブルガリの腕時計を購入しようという層をいっそう広げたことに寄与していると思うが、今回発表されたコラボレーションモデルは、良い意味で、このブルガリ アルミニウムにラグジュアリーかつクラシックなテイストを添えている。

ブルガリ アルミニウム GMT フェンダー® 限定モデル

GMT機能が搭載されているため、時分秒針のほか、GMT針も有する本作。秒針がミニッツサークルまで届いていることや、時分針、秒針、GMT針で形状を変えていることから判読性が高く、実用面にも考慮された腕時計であることが分かる。

 本作はストラトキャスターというモチーフがあるため、そのボディや指板に使われる木材をほうふつとさせる、深みあるブラウンがテーマカラーとなっている。リバイバル前を含めて、ブラウンが使われたブルガリ アルミニウムはなかったように思う。ストラトキャスターの指板を思わせるダークブラウンがベゼルやストラップに使われることで、これまでのコレクションにはあまり見られなかった、シックでクラシックな印象をまとっているのだ。

 また、光沢のあるグラデーションがかった文字盤やロジウムメッキが施されたインデックスと針が、本作に高級感をもたらしている。この“光沢”も、従来のモデルとは違ったテイストだ。写真では、秒針が文字盤に写り込んでいるのが見えるだろうか? よく磨かれている証しである。なお、このインデックスと針は、ギターのフレットをイメージしているとのこと。文字盤のフランジに設けられた、昼夜で色分けされた24時間スケールもしっとりしており、本作のスタイルと調和が取れている。


コラボレーションモデルならではのディテール

ブルガリ アルミニウム GMT フェンダー® 限定モデル

ブルガリと“Fender”のダブルネームとなったケースバック。このケースバックの素材はアルミではなく、DLC加工が施されたチタン製となっているため、金属アレルギーを起こしづらい。

 本作に限らず、コラボレーションモデルは特別なディテールを楽しめるという点も、ユーザー、とりわけコラボレーション先のファンにとってはうれしいポイントだ。

 本作のDLCコーティングが施されたチタン製のケースバックには“Fender”のロゴが印字されており、個人的には少し寂しいと思っているレギュラーモデルのこのパーツに、華が添えられた。

ブルガリ アルミニウム GMT フェンダー® 限定モデル

ラバーストラップに面ファスナーが付いているため、簡単に脱着できるのが便利。とはいえしっかりと固定されるので、着用中に外れてしまうといった不安はなかった。

 また、レギュラーモデルがピンバックルであることに対し、本作はピンのないバックルが付いている。ラバーストラップに面ファスナーが付いており、その面を使って固定するタイプなのだ。簡単に、しかししっかりと固定することができるラバーストラップとなっている。この仕様は、ギターのリフ中にあっても、完璧なフィット感を志向したためとのこと。しっかりと手首に固定させることは良好な装着感に寄与するため、利便性の高い仕様と言える。もっともアルミ、チタン、ラバーで構成されるブルガリ アルミニウムは軽量であるため、ピンバックルタイプであるからといって装着感が悪いといった話は聞いたことがない。

 加えて、実物は見ていないのだが、本作が収められる付属の化粧箱も特別仕様とのこと。ギターケースがモチーフにされているのだ。受け取った瞬間から、心が踊る特別なボックスだ。


「ブルガリ アルミニウム」“らしさ”も楽しめる

 これまでと違った、特別な「ブルガリ アルミニウム」としての点に言及してきたが、もちろん本コレクション“らしさ”が楽しめることも、大きな美点だ。

 1998年の登場以来受け継がれてきた、幅広のラウンド型のベゼルやラグを持たず、エンドピースとストラップがつながった優美なライン、エンドピース両サイドに打たれたビス、メタルブレスレットのコマのようにセンターリンクによって連なるラバーストラップなどが、“らしさ”の代表例だ。

ブルガリ アルミニウム GMT フェンダー® 限定モデル

サイドから見ても、ユニークなケースの造形。とはいえ、直径40mmケースは薄く軽量で、また、ラグを持たない分全長も短いため、着け心地はよいだろう。

 もちろん、アルミ素材のケースも、大きな“らしさ”だ。ブルガリは2020年に新生コレクションとして打ち出すにあたり、デザインはほとんど変えなかったものの、このアルミニウム合金の耐久性を向上させた。そもそもアルミが腕時計に向かない理由は耐食性が低いという素材の特性にある。しかしブルガリは良質なアルミニウム合金を使うことで耐食性を上げ、かつケースバックやプッシュボタン、ベゼルの外周にチタンを使い、この耐食性の問題に向き合った。

 なお、ブルガリ アルミニウムのケースは梨地でつや消しされており、スポーティーなデザインである反面、落ち着いた印象も備えている。

 さらに、税込み66万円という定価も、素晴らしいと賞賛したいブルガリ アルミニウム“らしさ”だ。オクト フィニッシモやセルペンティは明らかにブルガリの中でもハイエンドラインだが、高級ブランドに位置づけられる他社の機械式時計を見ても、最近では100万円超の定価が珍しくない。しかしブルガリ アルミニウムは機械式時計で、ベーシックな3針モデルであれば47万3000円、クロノグラフ搭載モデルであっても73万7000円(限定ではない、レギュラーモデルの場合)に抑えた価格で販売している。本作も、ストラトキャスターという伝説のギターの70周年を祝う特別モデルであり、凝ったディテールやブラウンカラーがもたらすラグジュアリー感を備えながら、66万円という値付けに収まっているのだ。

 世界限定1200本の製造であり、日本での販売はさらに絞られるだろう。しかし、この出来栄えでこの価格である。ギターや音楽好きはもちろん、このコラボレーション先を知らなくとも、これから腕時計を購入しようとしているユーザーにとって、有力な選択肢になるに違いない。


どんどん良くなるから欲しくなる、ブルガリウォッチ

 ジュネーブ・ウォッチ・デイズ2024で取材した新作モデルのうち、「ブルガリ アルミニウム GMT フェンダー® 限定モデル」を深掘りした。

 ブルガリの腕時計というと最近は「オクト フィニッシモ」がまず取り上げられる。特に今年はCOSC公認の世界最薄機械式時計「オクト フィニッシモ ウルトラ」がリリースされたこともあり、正直「ブルガリ アルミニウム」はあまりチェックしていなかった。

 そんな伏兵から出た、傑作ウォッチ。目の肥えた(肥えてしまった?)webChronosの読者は、実物でいっそうこの良さが分かると思うので、機会があったらぜひ実機を見てほしい!



Contact info: ブルガリ ジャパン Tel.0120-030-142


2024年のブルガリ新作時計を一気読み!

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