来日したショパールの共同社長であるカール-フリードリッヒ・ショイフレと、息子のカール-フリッツ・ショイフレをインタビュー。なぜ今、日本市場でショパールが好調なのか? その理由を、クワイエットラグジュアリーというトレンドに言及しながら分析する。
Photograph by Yu Mitamura
鈴木幸也(本誌):取材・文
Edited & Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
ショパールの日本市場でのプレゼンス
ショパール共同社長のカール-フリードリッヒ・ショイフレが、今回の来日の目的を語ってくれた。「常に何かしらのアイデアを持って来日するようにしていますが、特にこの3〜4年は、日本におけるショパールのプレゼンスが堅調に伸びているので、日本市場がショパールというブランドを以前にも増してよく理解してくれるようになったと感じています」。実際に銀座のブティックや百貨店の売り上げも伸びているという。
初来日を果たした長男のカール-フリッツも早速、ビジネス面での気付きがあったという。「ひとつめは、時計を含めたラグジュアリーブランドの販売店の多さをすごく新鮮に感じました。銀座なら200mくらいの間に同じブランドを扱っている販売店が3〜4カ所あって、これは他国の大都市では見られないので、とても日本らしいほかとの大きな違いだと思いました。ふたつめは、ブティックで受けるサービスの質が高く、スタッフのトレーニングが行き届いており、ほかのマーケットのベンチマークになる日本らしい丁寧な“おもてなし”の接客が行われていることに気が付きました」
クワイエットラグジュアリーのトレンド
今、クワイエットラグジュアリーという潮流が時計の世界にも広がってきている。それに対して、カール-フリードリッヒはショパールのアドバンテージをすでに見いだしているようだ。
「ファッションの世界では特にホスピタリティに関してクワイエットラグジュアリーのトレンドがここ数年続いているという流れだと思っています。それが時計やジュエリーにもだんだん波及してきています。それに対してショパールはすでにポジションを築いており、良い立ち位置にいると思っています。クワイエットラグジュアリーを構成する要素が、本物であること、高品質であること、歴史のバックボーンがあること、ファミリーヘリテージやクラフツマンシップがあることで成り立っているのですが、ショパールはすでにそれらすべてを持っているからです。LUCやアルパイン イーグルはもちろん、レディースの時計に関しても、決して声高にアピールする時計ではなく、サイズもそれほど大きくないので、クワイエットラグジュアリーさを感じられるような商品展開ができていると思います」
こう説明しながら、カール-フリードリッヒは「“クワイエットラグジュアリー”という言葉自体がショパールにぴったりと当てはまると感じている」と自信を見せた。ショパールが日本市場で好調なのには、かように合理的な理由があり、その背後には、それを俯瞰して分析できるオーナーファミリーがいることに改めて気付かされた。
ユニークピースのオークションである「TimeForArt」のために、ショパールが製作した「アルパイン イーグル」。文字盤には藁を用いた装飾技術であるストローマルケトリーを採用。ニューヨークの摩天楼上を飛翔するイーグルの視点からの光景を表現している。自動巻き(Cal.L.U.C 96.17-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。ルーセントスティール™(直径41mm、厚さ8mm)。100m防水。ユニークピース。