いち早く2025年の新作発表が行われている、LVMH ウォッチ ウィーク。ルイ・ヴィトンからは、ふたつのまったく新しい「タンブール」コレクションが誕生した。同社の高度なウォッチメイキングを堪能できる、その新作モデルを紹介する。
ルイ・ヴィトン2025年新作①「タンブール タイコ スピン・タイム」
ルイ・ヴィトンはまったく新しいコレクション「タンブール タイコ スピン・タイム」を発表した。すべてリミテッドエディションであり、複雑機構を次世代へと推し進めるために、いちから開発された作品だ。「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」が本コレクションのために特別に開発した自社製ムーブメントで駆動することも特筆すべき点である。
“スピン・タイム”というコンセプトは、複雑ムーブメントのスペシャリストとして「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」を創設したベテランのウォッチメーカーであるミシェル・ナバスとエンリコ・バルバシーニの卓越した才能が、2007年に生み出したものだ。数十年にもわたりスイスの最も権威あるウォッチメーカーで経験を積んできたふたりは、クラシカルなハイウォッチメイキングに精通していた。しかし、ミシェル・ナバスとエンリコ・バルバシーニは、ウォッチメイキングに対する自分たちのビジョンを一層豊かなものにするために、革新と発明も目指してきたのだ。
2009年に発表された「タンブール スピン・タイム」は時計としてのみならず、独創的な複雑機構のメーカーとしてのルイ・ヴィトンの地位を確立した。以来、“スピン・タイム”はルイ・ヴィトンの幅広い素材と複雑機構のレパートリーを象徴する多様なタイムピースシリーズへと進化を遂げてきた。
6種の新作モデルが登場
そんな歴史を経てきた“スピンタイム”の最新作から、6種のリミテッドエディションが同時リリースされている。それぞれが複雑機構の究極の洗練形として、いちから考案された。本コレクションは同一の“タンブール タイコ”ケースを共有する直径39.5mmと42.5mmのふたつのサイズで展開される。39.5mmモデルは控えめなソリッドケースバックを装備する一方、42.5mmモデルは自社製ムーブメントが見えるトランスパレントバックを装備している。
初代となる「タンブール タイコ スピン・タイム」の各モデルの統一感を際立たせるため、6つのバリエーションは、すべて 18Kホワイトゴールド製のケースをまとい、控えめでありながらも力強く、一目でタンブール タイコ スピン・タイムであることが分かる、ドルフィングレーカラーのダイアルが装備された。ライトグレーのフェースを表示するアワーを示すキューブを除き、キューブはすべて、同じドルフィングレーカラーで仕上げられている。ダイアルのほとんどの要素は同じ色合いとなっているものの、それぞれのディテールはサンバーストやホークスアイなど、さまざまな技法を用いて仕上げられており、その結果、光によって変化するニュアンスに富んだマルチトーンの外観を実現した。
巧みに使用される色と質感は、ジュエリーをちりばめたスピン・タイムモデルにおいて一層際立ち、グレーブルーのカラーパレットがホークスアイのダイアルにまで広がっている。なお、光沢感のある色と繊細な模様で高く評価されるこのグレーブルーのクオーツが、ルイ・ヴィトンのウォッチメイキングに採用されるのは初めてである。
自動巻き(Cal.LFT ST13.01)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。 18KWGケース(直径39.5mm、厚12.15mm)。100m防水。1171万5000円(税込み)。
複雑機構を最もピュアに表現したのが、Cal.LFT ST13.01を搭載した「タンブール タイコ スピン・タイム」の径39.5mmモデル。本作は、Cal.LFT ST13.01にジャンピングアワーのキューブを収めたダイアルを組み合わせ、複雑機構ながらすっきりとした視認性の高い表示を実現している。
自動巻き(Cal.LFT ST13.01)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(直径39.5mm、厚12.15mm)。100m防水。2343万円(税込み)。
ホークスアイダイアルに、バゲットカットダイヤモンド12石(計0.13カラット)のインデックスをセッティングしたモデル。18Kホワイトゴールド製ケースは100m防水で、さらに完全防水の一体型ラバーストラップを装着し、スポーティーかつシックなスタイルを演出している。さらにラグとダイアルにもホークスアイのダイアルセンターにマッチする合計4.3カラットのバゲットカットダイヤモンドがセットされており、ゴージャスな雰囲気をまとっている。
自動巻き(Cal.LFT ST13.01)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(直径42.5mm、厚12.45mm)。50m防水。1320万円(税込み)。
ダイアル外周をシースルーとした本作は、今回発表されたコレクションの中でも、一際特徴的な1本に仕上がっている。
自動巻き(Cal.LFT ST13.01)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(直径42.5mm、厚12.45mm)。50m防水。2343万円(税込み)。
前述したシースルーダイアルを採用したモデルを、いっそうゴージャスに仕上げたモデル。ブリリアントカットダイヤモンド118石(計0.26カラット)がセットされたホークスアイダイアルと、ブリリアントカットダイヤモンド909石(計2.92カラット)がセットされたケースを備えているのだ。
自動巻き(Cal.LFT ST12.01)。36石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(直径42.5mm、厚12.45mm)。50m防水。1611万5000円(税込み)。
「タンブール タイコ スピン・タイム アンティポード」はユニークなジャンピングアワー機構と世界初のトラベルタイム複雑機構を組合せたモデルだ。従来型の針が分を指す一方、アワーはルイ・ヴィトンのレザーグッズのステッチから着想を得たイエローの矢じり型ポインターで示される。このポインターはアンティポードワールドタイム複雑機構をグラフィックに象徴する、ガルバニック仕上げの世界地図が描かれた回転ディスクに取付けられている。なお、真反対のタイムゾーンの表示が“アンティポード”というモデル名の由来である。本作は「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」で開発された。
世界の24のタイムゾーンの時刻を昼夜表示と同時に示し、読みやすく直感的な方法で提示するのだ。
ローカルタイムは分針とアワーを示すイエローのポインターで示され、ワールドタイムは世界地図ディスクを取囲むスピン・タイム機構の12のキューブによって表示される。各キューブに隣接するアワー数字は、それぞれのキューブに記されたふたつの都市の時間を表示する。各キューブへ2都市を記載するというこの独創的な工夫が、アンティポードを伝統的なワールドタイム機構とは異なるものにしている。特許を取得したこの複雑機構は、技術的な創意工夫により、複雑さとは裏腹にシンプルで実用的なインターフェースを通じて、複数のタイムゾーンを一目で簡単に把握可能にする。それぞれの都市の背景色は、昼夜の区別を示している。
自動巻き(Cal.LFT ST05.01)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWGケース(直径42.5mm、厚12.45mm)。50m防水。2783万円(税込み)。
センタートゥールビヨンモデルとなる本作。ケースという限られた、さらに中心の容積内という厳しい制約下で「タンブール タイコ スピン・タイム エアー」と「エアー トゥールビヨン」の両方の機構を収める必要があった。キューブが周辺容積の大半を占めてしまうため、自動巻きのベースムーブメントとフライング トゥールビヨンの両方を中央に配置するためには、ベースムーブメントの大幅な設計変更が求められたのだ。トゥールビヨンをダイアル上に配置するために主輪列の配置を変更するだけでなく、分針もトゥールビヨンの下と周りに配置された。
複雑なケース製造を可能にする技術力
「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」が自社で培ってきたケース製造の技を披露することを目指したタンブール タイコのケースは、鏡面仕上げとサテン仕上げの表面、そして浮き彫りと窪みのある要素が織りなす複雑さを有している。現行の「タンブール」のデザインコードを守りつつ、ベゼルにはサンドブラスト加工を施した溝内にポリッシュ仕上げのレリーフ文字で「LOUIS VUITTON」と綴られ、ケースの側面にはサテン艶消し加工が施されている。
鏡面仕上げの表面は、ダイヤモンドペーストを塗布したブナ材の研磨ホイールを用いて手作業で磨き上げられ、一方、窪みはレーザーで艶消しが施されます。この同じ技法はベゼルの凹んだ溝に艶消し加工する際にも採用され、ポリッシュ仕上げのレリーフ文字が傷付けられることはない。
画期的なムーブメントファミリー
タンブール タイコ スピン・タイムコレクションのすべてのモデルは、本コレクションのためにいちから開発された自社製ムーブメントを装備している。構想から製造まで全面的に「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」で行われたこの新しいスピン・タイムムーブメントは、スイスのハイウォッチメイキングの伝統的な中心地であるジュネーヴでの垂直統合型ウォッチマニュファクチュールとしてのルイ・ヴィトンの地位を確かなものにしている。
さらにこのムーブメントファミリーは、2023年発表のタンブールに搭載されているムーブメントCal.LFT023で導入された独特の外観上のスタイルを踏襲。これらのムーブメントはすべて、繰り返されるモチーフの形で様式化された“LV”で精緻に装飾されたソリッドゴールド製のローターをはじめ、Cal.LFT023で初めて確立された新しい美的コードを共有している。このローターは、マイクロサンドブラスト加工の施されたブリッジやポリッシュ仕上げのエッジ、面取りとともに、どこまでも現代的な外観をもたらす一方、この時計の全体的なデザイン言語との明確なつながりを保っている。
ペルラージュ仕上げが施された地板は伝統的なムーブメント装飾に敬意を表し、従来型の赤い人工ルビーではなく、無色透明のダイヤモンドを使用することで、このムーブメントのアヴァンギャルドでモダンな外観を際立たせている。
新コレクションはスタイルが一新されただけでなく、オリジナルのスピン・タイムのコンセプトに改良を加え、新たに取得した特許を基に再設計されたメカニズムが搭載された。アップグレードされた複雑機構についても、作動原理はこれまでと同じだ。すなわち、ふたつのキューブが同時に回転して、前の時表示が消え、現在の時表示が姿を表すのだ。
これを実現するため、「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」の技術者たちは、各キューブのベースに配置される、特許取得のマルタ十字歯車を考案した。内側の縁に歯を持つというユニークなマルタ十字歯車は、便利な時刻設定も可能にするシステムの一部でもある。ジャンピングアワー表示は、ムーブメントにダメージをもたらすことなく前後方向に調整可能だ。これまでは前に進める設定しかできなかったジャンピングアワー複雑機構にとって特筆すべき成果である。
「タンブール タイコ スピン・タイム」の注目すべきディテール
ルイ・ヴィトン2025年新作②「タンブール オトマティック コンバージェンス」
LVMH ウォッチ ウィーク2025にて、ルイ・ヴィトンはさらに特筆すべきふたつの新作モデルを打ち出した。「タンブール オトマティック コンバージェンス」である。本コレクションもまた、ジュネーブに構えるルイ・ヴィトンの複数のアトリエ──ムーブメント設計の「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」はもちろん、ケース製造の「ラ・ファブリク・デ・ボワティエ」、そして稀少な手工芸の技術が集う「ラ・ファブリク・デ・ザール」を統一する美的言語によって構想・製作されたものだ。コレクションの名称は、ルイ・ヴィトンの社内で培われた職人技の融合を指すとともに、「タンブール コンバージェンス」の独特な時刻表示も表している。
自動巻き(Cal.LFT MA01.01)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KPGケース(直径37mm、厚さ8mm)。30m防水。504万9000円(税込み)。
ダイヤモンド795個(約1.71カラット)、サフランカラーサファイア1個(約0.04カラット)をセッティングしたモデル。自動巻き(Cal.LFT MA01.01)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。PTケース(直径37mm、厚さ8mm)。30m防水。913万円(税込み)。
時の融合
タンブール コンバージェンスは、変曲点に向かって細くなるタンブールの優美にカーブした側面を再現している。これによってケースは手首に心地よくフィットするようになり、また内部の自動巻きムーブメントの堅牢さとは裏腹に、スリムな外観を生み出す効果がある。リデザインされたラグは、現行のタンブールコレクションとは一線を画すもので、このコレクション内における外観の多様化の新時代の幕開けを告げるとともに、調和の取れた幾何学的なプロフィールによって、人々の目を引き付けるのだ。
ラグの上面は手作業でポリッシュ仕上げが施される一方、側面は窪みを設けた上でマイクロサンドブラスト加工が施されており、対照的な仕上げの相互効果によって視覚的な上品さを添えている。ケース側面にサテン仕上げを施すことでタンブール コンバージェンスは8mmという厚さ以上にスリムな印象になった。さまざまな手首のサイズに合わせやすく、控えめな径37mmのケースを採用している。ポリッシュ仕上げのリュウズはケースの形状を反映し、巻き上げや時刻設定のしやすさを考慮して、わずかな溝が彫られている。シースルーのケースバックからは、自社製の新しい自動巻きムーブメントCal.LFT MA01.01 が確認できる。
独創的な時刻表示
時刻は、プレシャスなプレートに彫られたふたつの窓を通して表示され、これらの窓の形は、アニエールにあるヴィトン家の邸宅の内装のディテールを彷彿させる。アワーは上部のアーチ型の窓を時計回りに回転して通り、ミニッツは下のアーチに表示される。両方の窓の間に配置されたゴールドまたはプラチナ製のダイヤモンド形のマーカーによって、直感的に時刻の読み取りが可能だ。サファイアクリスタルに施されたメタルの縁取りから、構造的な強度を満たすのに充分でありながら下の数字を歪ませないカーブを備えたサファイアクリスタル自体の形状まで、無数の隠れたディテールが相まって、時刻表示を可能な限り読みやすくしている。
クラフツマンシップの融合
「タンブール コンバージェンス」のふたつの新作は、どちらも独自の魅力的な外観を備えている。プラチナモデルはサテンシルバー仕上げで、転写プリントのブルーの数字を配した時分ディスクを備える。この時計の装飾的な焦点となる時刻表示を囲むプレシャスなプレートには、異なるサイズの石を用い、地金が見えなくなるほど隙間なく精緻に配置するスノーセッティングと呼ばれる技法を用いて、795個のダイヤモンドがセットされている。スノーセッティングは、さまざまなサイズの石を組み合わせ、最終的にきらめきを放つひとつのシームレスな表面を作り出すことのできる経験豊富な宝石職人によって手作業で行われている。プラチナ製の「タンブールコンバージェンス」は7種のサイズの石を使用しており、完成までには32時間もの緻密な作業を要する。/p>
専門技術の融合
タンブール コンバージェンスのケースは、ジュネーブに構えるルイ・ヴィトンのケース製造施設を新たに統合した「ラ・ファブリク・デ・ボワティエ」のアトリエですべて製作される。直径37mmという制約内で、約45時間のパワーリザーブを持つ新しい自社製の自動巻きムーブメントCal.LFT MA01.01 が時を刻む。このムーブメントの製作は「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」にとって製作面でのマイルストーンであり、同社のウォッチメイキング部門の生産およびエンジニアリング専門技術の力強さを示している。
新型ムーブメントCal.LFT MA01.01
このコンパクトなムーブメントは、時刻表示機能のみのムーブメントで、その信頼性は、業界標準の 4Hz(28,800振動 / 時)でテンプが振動する。高慣性の 18K ローズゴールド製ローターは、ムーブメントの香箱を効率的に巻き上げて、機構に普段使いに最適レベルのエネルギーを供給する。この現代的なクロノメーターの品質と信頼性へのこだわりは、高精度の慣性ブロック(マスロット)を備えたフリースプラングテンプなどの特徴にさらに表れている。伝統的なウォッチメイキングの味わいを高く評価する人々にとって、エレガントなアーチを描く香箱の爪などのディテールが、キャリバー LFT MA01.01 の視覚的洗練度をさらに高めている。
「タンブール オトマティック コンバージェンス」の注目すべきディテール