日本を代表するのみならず、今や世界的な時計ブランドにまで成長したグランドセイコー。同社の新作は例年国内外で大きな注目が集まり、期待が寄せられている。2025年も、そんな期待に応えてくれる新作モデルがリリースされた。
グランドセイコー2025年新作①「エボリューション9 コレクション スプリングドライブ U.F.A.」
2017年に独立ブランドとなって以来、世界的な販路を拡大し続けるグランドセイコー。近年では新開発ムーブメントを打ち出すことで、いっそう市場でのプレゼンスを高めている。2025年もまた、そんな新たなるムーブメントが誕生している。セイコー独自のスプリングドライブから、“異次元の高精度”と銘打たれて登場したCal.9RB2だ。このムーブメントを搭載した腕時計が、ブライトチタンとプラチナ製モデルで2型用意された。「エボリューション9 コレクション スプリングドライブ U.F.A.」である。

スプリングドライブ自動巻き(Cal.9RB2)。年差±20秒。34石。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径37.0mm、厚さ11.4mm)。10気圧防水。151万8000円(税込み)。2025年6月6日(金)よりグランドセイコーブティックおよびグランドセイコーサロンで発売予定。

スプリングドライブ自動巻き(Cal.9RB2)。年差±20秒。34石。パワーリザーブ約72時間。Ptケース(直径37.0mm、厚さ11.4mm)。10気圧防水。世界限定80本(うち国内40本)。550万円(税込み)。2025年6月6日(金)よりグランドセイコーブティックで発売予定。
スプリングドライブは、セイコーから1999年に発表された「第3のムーブメント」だ。機械式時計のように主ゼンマイを動力源としながらも、クォーツ(水晶振動子)によって調速することで、クォーツウォッチのような高精度を実現している。なお、1970年代後半からすでにセイコー内でこの機構の構想はあったが、製品化には20年以上の歳月がかかった。
そんな画期的なスプリングドライブを、年差±20秒という極めて高精度に、しかも小径薄型化にしたムーブメントがCal.9RB2である。これまでのスプリングドライブの精度は平均月差±10〜15秒と公称されており、いかに精度が突き詰められたかが垣間見える。3カ月間のエイジングを経て精度を安定させた水晶振動子を新設計のICとともに真空に密封し、温度、湿度、静電気、光などに影響されることを最小限にまで抑えることで、この精度は実現した。さらにこの封入されたICは、個々の水晶振動子の周波数を複数の温度で測定して得られたデータをもとにして温度補正されているという。長年安定した精度を保つために、スプリングドライブ史上初めて緩急スイッチが搭載されているのにも驚かされた。
このムーブメントには、モデルにも冠されている「U.F.A.(Ultra Fine Accuracy)」という名称が付けられており、1969年に発表した「グランドセイコー V.F.A.(Very Fine Adjusted)」のように、腕時計の精度に挑んできた同ブランドの姿勢を強く感じさせる新作と言えるだろう。
本作は、これまでのスプリングドライブの中で最も小径薄型であることも特筆すべき点だ。そのため新作モデルのケースは直径37.0mm、厚さ11.4mmに収められた。「エボリューション9 コレクション」のデザイン文法にのっとった、低重心ケースや幅広のブレスレットによって、良好な装着感となっているのだ。加えてブライトチタン製モデルには、グランドセイコー初となる微調整機構がバックルに搭載された。2mm単位で、3段階の調整が工具なしで可能となっており、装着感への配慮が垣間見える。
グランドセイコーの強みである、独創的な文字盤が本作にも備わった。スプリングドライブが製造される「信州 時の匠工房」の東側に位置する諏訪・霧ヶ峰高原の、厳冬期の「樹氷」をモチーフとした型打ちパターンが施されているのだ。さらにこのパターンの上からきらめきを放つ表面加工を施すことで、淡いブルーをたたえた、手元で存在感を放つ意匠に仕上がっている。なお、ブライトチタン製モデルはシルバーがかったブルーが、プラチナ製モデルはもう少し深みのあるブルーが採用されている。
販売価格はブライトチタン製モデルが151万8000円、世界限定80本のみ生産されるプラチナ製モデルが550万円(いずれも税込み)だ。2025年6月6日(金)より、グランドセイコーブティックおよびグランドセイコーサロンでの発売が予定されている。
グランドセイコー2025年新作②「スポーツコレクション Tokyo Lion テンタグラフ」
2023年、グランドセイコー初の機械式クロノグラフムーブメントが登場したことも、近年の同ブランドの大きなトピックスのひとつだ。毎秒10振動、約3日間パワーリザーブ、自動巻きクロノグラフを表した「テンタグラフ」の名を持つこのCal.9SC5は、時計業界を大いに沸かせた。2025年、グランドセイコーのシンボルである“獅子”をモチーフとした外装に、このテンタグラフを搭載させた特別なモデルが登場している。「スポーツコレクション Tokyo Lion Tentagraph」だ。

自動巻き(Cal.9SC5)。60石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約72時間(クロノグラフ作動時)。ブリリアントハードチタンケース(直径43.0mm、厚さ15.6mm)。20気圧防水。231万円(税込み)。2025年8月8日(金)よりグランドセイコーブティックおよびグランドセイコーサロンで発売予定。
獅子をモチーフとするだけあり、ユニークでダイナミックなケースフォルムにまず目を引かれる。金属の塊を削ぎ落としたかのようなこの造形は、獅子の力強い爪から着想が得られた。金属の表情をより際立たせるヘアライン仕上げの面が爪の鋭さを強調。ポリッシュが与えられた面と並ぶことで、メリハリの効いた造形を生み出している。
スポーツコレクションらしく、プッシュボタンが大ぶりなことも特徴的だ。もっともこのフォルムはただ意匠にスポーティーなイメージを与えるのみならず、押し心地が追求されており、また確実に操作することを実現しているのだ。

ケース同様、文字盤も鮮烈なまでにダイナミック。獅子のたてがみが風になびく様からインスピレーションを得た、「風靡(ふうび)」という有機的なパターンがデザインされている。また、3時・6時・9時位置のインダイアルは別体パーツ。多彩な表情となっているのみならず、椀状となっており、針と目盛りの距離が近く、計測結果が読み取りやすい。獅子の爪のように鋭い、ダイヤカットが施された多面体のインデックスも、優れた判読性に寄与している。
大ぶりでダイナミックなケースは、ステンレススティールの約2倍の表面硬度を誇るブリリアントハードチタン製。ステンレススティールよりも軽量であることに加えて、緩やかにカーブしたケースバックを有している。しなやかでありながらシリコンストラップの約2倍以上の引っ張り強度を持つベージュのラバーストラップは内巻きのバックルが取り付けられていることと相まって、快適に手首に巻き付けられるだろう。
「スポーツコレクション Tokyo Lion テンタグラフ」の販売価格は231万円(税込み)。2025年8月8日(金)より、グランドセイコーブティックおよびグランドセイコーサロンでの発売が予定されている。
グランドセイコー2025年新作③「エボリューション9 コレクション メカニカルハイビート36000 80アワーズ 2025年限定モデル」
ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ開催中ではないものの、「グランドセイコースタジオ 雫石」から望む、勇壮な岩手山の尾根筋から着想を得た世界限定1200本の「エボリューション9 コレクション メカニカルハイビート36000 80アワーズ 2025年限定モデル」も発表されている。

自動巻き(Cal.9SA5)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。エバーブリリアントスチールケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。10気圧防水。世界限定1200本(国内700本)。146万3000円(税込み)。25年5月10日発売。
季節の移ろいとともに表情を変える自然豊かな岩手山は、グランドセイコースタジオ 雫石でメカニカルウォッチの製造にあたる時計師にインスピレーションを与えてきた存在であり、グランドセイコーのフィロソフィーである「THE NATURE OF TIME」と深く関わる存在だ。
約70万年前にできたと考えられている岩手山は、活火山の多い日本にあっても最もアグレッシブな活動を経てきた山のひとつである。多くの記録が残る噴火の中で1732年の噴火では多量の溶岩が流れ出て、現在でもその山肌に溶岩流の跡が見られる。本作は、このような岩手山の一面を切り取り、鳥瞰で臨む岩手山の尾根筋から着想を得たダイアルを備える。ダイナミックな稜線を放射状の型押しによって取り込み、岩手山を包み込む静澄な空気と水をクリアブルーのカラーによって表現している。

ケースとブレスレットは、最高レベルの耐食性を備えて、その白さによって外観品質にも優れる「エバーブリリアントスチール」を用いる。搭載されるムーブメントはメカニカルハイビートムーブメントのCal.9SA5で、パワーリザーブはハイビート機でありながら約80時間を実現している。
グランドセイコー2025年新作④「ヘリテージ コレクション メカニカルハイビート 36000」
二十四節気をテーマに、その時期の日本の情景を文字盤に取り込んだふたつの新作が「ヘリテージ コレクション メカニカルハイビート 36000」に追加される。取り上げられるのは立夏と秋分だ。
自動巻き(Cal.9S85)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。エバーブリリアントスチールケース(直径40mm、厚さ12.9mm)。10気圧防水。99万円(税込み)。
自動巻き(Cal.9S85)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。エバーブリリアントスチールケース(直径40mm、厚さ12.9mm)。10気圧防水。99万円(税込み)。
立夏は夏の始まりを告げる時期で、秋分と夏至の中間にあたっている。新緑が広がり、青空と心地よい空気が気持ちの良い季節であり、力強い夏に向かうエネルギーを感じさせる季節でもある。そんな立夏を取り込んだRef.SBGH351は、この時期特有の爽やかな風の “薫風(くんぷう)”から着想を得て、青々とした草原を駆け抜ける穏やかな風を想起させるグリーン文字盤を備える。

秋分は、夏から秋へと変わりはじめ、昼と夜の長さが同じになる日を意味する。夜の時間が長くなり、夜空に現れる月も大きく映る季節である。秋分を取り込んだRef.SBGH353は、濃紺の文字盤の中で際立つ金色の“GS”ロゴと秒針によって、秋の夜空と月のコントラストを表現している。
ケースとブレスレットには、耐食性と外観品質の高さが特徴の「エバーブリリアントスチール」を用いる。搭載されるムーブメントはメカニカルハイビートムーブメントのCal.9S85だ。
グランドセイコー2025年新作⑤「エボリューション9 コレクション テンタグラフ」
グランドセイコースタジオ 雫石のシンボルと言える岩手山の情景を文字盤に表現した「エボリューション9 コレクション テンタグラフ」の新作が発表された。テーマとなるのは、厳冬期の澄んだ青空と、そこに溶け込むような、うっすらと青が滲む新雪を冠雪した岩手山である。

自動巻き(Cal.9SC5)。60石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径43.2mm、厚さ15.3mm)。10気圧防水。198万円(税込み)。2025年5月発売予定。
今回発表されたRef.SLGC007は、青白い新雪をスノーブルー、その下からのぞく山肌をブラックで表現している。また、文字盤のスノーブルー部には型押しを施し、新雪の柔らかい質感と射し込んだ光を細やかに反射する様子を表現している。
搭載されるのは、グランドセイコー初の機械式クロノグラフムーブメントとして2023年に発表された「テンタグラフ」ことCal.9SC5である。ムーブメントの備える高い基礎性能と、ブライトチタン製ケースによる軽量さ、太さの異なる時分針やバランスよく配置されたサブダイアル等の文字盤デザインによる視認性によって、本作は実用性の高いモデルに仕上がっている。
グランドセイコー2025年新作⑥「ヘリテージコレクション 62GS メカニカル30mm」
「62GS」のデザインをケース径30mmにまとめ上げたデザインに、春の景観を取り込んだ「ヘリテージコレクション 62GS メカニカル 30mm」2モデルが発表された。62GSはグランドセイコー初の自動巻きモデルとして誕生し、2015年に現代的なデザインとスペックで復活しているモデルである。ベゼルレスによって広々と見える文字盤や、ザラツ研磨によって磨き出されるシャープな多面体からなるケースが特徴だ。

自動巻き(Cal.9S27)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径30mm、厚さ10.5mm)。10気圧防水。88万円(税込み)。2025年4月25日発売
用意されたのは、ピンク文字盤とシルバー文字盤の2モデルだ。ピンク文字盤のRef.STGK031は、桜の花を雪が覆い隠す“桜隠し”から着想を得たモデルである。桜隠しは、グランドセイコースタジオ 雫石が位置する東北地方で、春の始まりに見られる景色である。純白の雪の間から淡い桜の色調が見え隠れする様子や、短い期間しか見ることができない儚さを、繊細な型打ち模様とグレイッシュなピンク色で表現している。

自動巻き(Cal.9S27)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径30mm、厚さ10.5mm)。10気圧防水。88万円(税込み)。2025年4月25日発売。
もう一方のRef.STGK033は、桜の花が朧月に照らされる「桜月夜」からインスピレーションを得たモデルだ。春先は昼夜の寒暖差が激しいため、もやや霧の影響で月が霞んで見えやすい。そのようなおぼろげな月明かりが桜を照らす趣きある情景を、光や角度により変化するニュアンスを加えた型打ち模様とシルバーカラーで文字盤に表現している。

本作では、30mmのコンパクトなサイズを実現するために、自動巻きムーブメントCal.9S27を搭載する。ムーブメントの薄い仕立てにより、本作の時計仕上がり厚さも10.5mmに抑えられており、コンパクトでエレガントなシルエットを実現している。