セイコーのカジュアルウォッチブランド、セイコー「5スポーツ」の1本、Ref.SBSC013を着用レビューする機会を得た。同ブランドの「FIELD series」に属する本作は、アウトドア、日常使いの両方に合わせられる機能性に加え、オトコ心をくすぐるミリタリーチックなテイストが添えられた、そのトータルブラック調のルックスも魅力のモデルだ。
Photographs & Text by Kento Nii
[2025年4月3日公開記事]
セイコー 5スポーツ「FIELD」シリーズ初のGMTモデル
セイコー 5スポーツは、「多様な価値観が飛び交う現代を象徴する“5つのスタイル”をデザインコンセプトとしたカジュアルウオッチブランド」だ。その歴史は、1963年に発売された「セイコー スポーツマチック5」にさかのぼる。このモデルはドレスウォッチが主流の時代において、実用的かつ高品質な腕時計として、幅広い層から支持を集めるに至った。このセイコー スポーツマチック5の実用性や信頼性をベースにスペックアップされ、かつビビッドなカラーを用いてスポーティーなデザインを取り入れたのが、1968年に登場した「セイコー 5スポーツ」だ。なお、セイコー 5スポーツは「自動巻き機構」「防水機能」「デイデイト表示」「4時位置のリュウズ」「耐久性に優れるケースとバンド」という、当時としては画期的な5つの特徴をすでに備えていた。
初代セイコー 5スポーツは高まるスポーツウォッチの需要に応える形でリリースされたが、そのビビッドカラーを効かせたデザイン性も人気を博し、アクティブな若者を中心に、世界的な支持の獲得に成功する。そして、グローバルな展開を続ける中で、2019年にはついに日本でのリローンチを果たし、現在まで本格的なラインナップの拡充が行われてきた。
そんなセイコー 5スポーツの現行ラインナップでは、現代のライフスタイルを象徴する5つのスタイルが掲げられている。その主幹をなすのは、「SKX」「FIELD」「SNXS」という3つのシリーズだ。ダイバーズウォッチのスタイルをくむSKX、アウトドアから日常使いまで対応するFIELD、クラシカルかつ普遍的なデザインを持つSNXSと、それぞれが異なるコンセプトのもと、さまざまな需要に応えるコレクションをそろえている。

自動巻き(Cal.4R34)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約41時間。SSケース(直径39.4mm、厚さ13.6mm)。日常生活用強化防水(10気圧)。5万7200円(税込み)。
今回インプレッションを行うRef.SBSC013は、FIELDシリーズで初となるGMTウォッチとしてリリースされた3モデルのうちの1種である。ブラックケースの採用によるトータルブラック調のカラーリングで、精悍さが強められたモデルだ。
価格は税込み6万円を下回っており、GMT機能や10気圧防水を備えた機械式腕時計としては、良心的な価格設定だ。もちろん、腕時計を初めて購入する人にとっても、ぜひ手に取っていただきたい1本である。
程よいミリタリー感を漂わせるダイアル
手元に届いたRef.SBSC013を一目見た感想は、「お、かっこいいぞ」である。かつて自衛隊に所属していた筆者は、ミリタリーテイストが感じられるものに目がない。その点で言うと、見やすいアラビア数字インデックス、そしてその内周に13時〜24時までの表示を備えた表情は、かなり好みのタイプであった。
ひとつずつその特徴を確認していく。まずダイアルは、単なるブラックではなく、梨地に仕上げられることで光の反射が抑えられており、インデックス、針が際立って見える。加えて、SEIKOロゴとアラビア数字インデックスは、立体的であるため、表情がのっぺりとしていない。プリントされたインデックスを持つ同価格帯の腕時計が見受けられる中、手の込んだ仕上がりと言える。

個人的に高評価なのが、このアラビア数字インデックスが淡いグリーンで色付けされている点だ。軍用の暗視装置は、視覚的に優れるグリーンが使用されることが多く、トータルブラックの表情で際立つインデックスが、それを彷彿とさせる。残念ながら蓄光塗料は、時分針とダイアル外周部のアワーマーカーにしか塗布されていないが、5万円台までコストを抑えた腕時計においては、こういった細部の雰囲気作りが、表情の演出に効果的ではないだろうか。
また、秒針と24時間針、そしてGMTの表記は、ダイアル内で際立つオレンジカラーに彩られている。ビビッドカラーによるアクセントは、セイコー 5スポーツの多くのモデルに共通する仕様であり、トータルブラック調の本作においても、アグレッシブな一面が演出されている。加えて、それぞれに蓄光塗料が塗布されており、暗所での視認性も確保された。
ダイアルを囲む固定式ベゼルには24時間表示が彫り込まれ、ツヤのある数字がヘアライン仕上げの中で存在感を放っている。もっとも、判読性を優先するのであれば、この24時間表示は白く塗るべきだろう。しかしながら、トータルブラックカラーを強調するという観点では、本作の仕様が正解だ。これにより、腕時計から離れるほどに24時間表示が見えなくなり、腕時計の精悍な印象がより際立つのである。力強い手元を表現する、本作のファッションアイテムとしての一面が垣間見えるポイントと言える。
コンパクトに見えるブラックケース
本作のケース直径は、39.4mmだ。スポーツウォッチとしては少し小ぶりなサイズ感だが、傾斜のついた太いベゼルと、黒いものが小さく見える収縮色の効果によって、手元に載せるとさらに小さく感じる。購入を検討している方は、直径38mmくらいのモデルをイメージすると、着用時のギャップが少ないかもしれない。

ケース自体の厚みは13.6mm。レザーストラップが引き通し式で取り付けられているため、着用するとケースが手首から少し浮いてしまうが、タイトに巻くことで、振られるような感覚は抑えられる。ちなみに、ヘッドのみの重みは64gであった。

今回、ビジネス、プライベートを通して本作を着用してみたが、着用感は良好であった。ブラックのカーフレザーは至って柔らかで、質感はアリゲーターなどに比べると劣るが、その分しっかりと手首にフィットしてくれる。ただ、自分の好みに合わせるのであれば、ナイロンストラップやポリアミド製のものに交換して、よりミリタリーテイストを強調したいところだ。
要点を押さえた機能性
ムーブメントは、Cal.4R34を搭載している。セイコー 5スポーツのSKX GMTモデルや、プレザージュのGMTモデルにも採用されているムーブメントだ。カタログスペックでは、約41時間のパワーリザーブと、日差-35秒〜+45秒の精度が保証されている。もし本作を機械式腕時計の入門機として選ぶのであれば、十分な性能と言える。

リュウズ操作は2段階で操作する。1段目で時計回りに回すとGMT針が1時間ずつ進み、反時計回りに回すとカレンダーが1日進む。また、2段目まで引き出すと秒針が停止し、メインの時刻調整が可能となる。以前、同じムーブメントを搭載したプレザージュを取り扱った際にも感じたが、リュウズの回転に遊びが少なく、時刻調整はしやすい。
またケースは、従来のセイコー 5スポーツと同様、10気圧防水を備えており、ある程度の耐磁性も備わっている。当然ながらフィールドウォッチのように、アクティブなシーンにも携行できる腕時計だ。
気軽に楽しめるミリタリーテイスト
本作を1週間ほど着用して感じたのは、やはりそのトータルブラックのルックスと、随所に感じられるミリタリー感が魅力だということだ。トータルブラックに、淡いグリーンやオレンジでアクセントを効かせたその表情は、本格的なミリタリーウォッチ、それこそパネライやIWCの腕時計が持つストイックさこそないものの、“ミリタリー風”カジュアルウォッチとして、気軽に日常使いしやすいように感じた。
もちろん、そういったデザイン性を抜きにしても、本作の完成度は高い。セイコー 5スポーツに共通する機能性は、デイリーユースで不便を感じにくく、6万円以下という価格帯も相まって、機械式腕時計の初心者にも自信を持っておすすめできる1本である。
近年、セイコー 5スポーツでは、他社や著名人とコラボした限定モデルが続々と登場しているだけでなく、2024年にSNXS seriesが発表されるなど、海外モデルの逆輸入も行われている。今後も、さらなるラインナップの拡充に期待したいところだ。