蛇の姿のみならず、脱皮によって変容する神秘性をモチーフにしたブルガリの「セルペンティ」。1948年から続く、同社のこの不変の価値を持つアイコンは新開発ムーブメントによって、「永遠の美」を再生させる。
Edited & Text by Chieko Tsuruoka (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年5月号掲載記事]
新型ムーブメントを搭載した「セルペンティ トゥボガス」

2連ブレスレットを備えた「セルペンティ トゥボガス」。ベゼルに40石のラウンドブリリアントカットのダイヤモンドが、リュウズにカボションカットのピンクルベライトがセッティングされている。全面ポリッシュされたピンクゴールド製の「蛇の肉体」とともに、強く輝きを放つモデルだ。自動巻き(Cal.BVS100 レディ ソロテンポ)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KPGケース(直径35mm、厚さ10.8mm)。30m防水。808万5000円(税込み)。
時計市場でのブルガリは、成熟したマニュファクチュールを強みとする時計ブランドの顔と、優美で独創的なデザインを創造するジュエラーの顔とがある。「セルペンティ」は、後者の顔を持つコレクションだ。古くから神秘的な生物として扱われてきた〝蛇〞をモチーフとした、アイコニックかつ華やかな意匠を持っており、歴史と名声あるジュエラーらしい腕時計と言える。小型化させやすいクォーツムーブメントが採用されてきたことも、その理由のひとつだ。
しかし2025年に発表された新作セルペンティは、優れたウォッチメーカーの顔が表れる。この新作は、極小サイズの自動巻きムーブメントを搭載しているのだ。
直径19mm、厚さ3.90mmの「BVS100 レディ ソロテンポ」。このサイズで自動巻きということに驚かされるが、おまけにパワーリザーブは約50時間もある。また、テンプを支えるツインブリッジやしっかりした受けからは、耐久性への配慮もうかがえる。セルペンティのエレガンスを守りつつも実用的で、ブルガリのマニュファクチュールの手腕が光っている。

これまでもセルペンティには機械式モデルが用意されていたが、いずれも特別なハイジュエリーウォッチであった。今回はレギュラーとして「セルペンティ トゥボガス」から2型、「セルペンティ セドゥットーリ」から7型がリリース。クォーツモデルよりケース厚は増しており、またリュウズにも変更が加えられている。引き出しやすく、主ゼンマイの巻き上げや時刻操作に便利な形状となっているのだ。
もっとも、75年以上続いてきたアイコニックな〝美〞は不変。新型ムーブメントによって変容を遂げたセルペンティは、今後も時代を超えて、女性の手元に美を添えていくだろう。