アーノルド&サンのアニバーサリーイヤーを祝う限定モデルのラストを飾るのが、「コンスタントフォース トゥールビヨン 11」である。同作は偉大な時計師ふたりの友情の証しを再現したモデルだ。

ブレゲの「No.169」にオマージュを捧げるモデル。錨型の秒針はコンスタントフォースによって1秒ごとにステップ運針する。コンスタントフォースの持続時間は約100時間。手巻き(Cal.A&S5219)。52石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約100時間。18KYGケース(直径41.5mm、厚さ10.48mm)。3気圧防水。世界限定11本。価格未定。
[クロノス日本版 2025年5月号掲載記事]
ジョン・アーノルドとアブラアン-ルイ・ブレゲの友情の証し
ジョン・アーノルドが英国王ジョージ3世にミニッツリピーターを献上してから260年を迎えた2024年、その意志を現代に継いだアーノルド&サンは、数多くの周年モデルを送り出した。その最後を飾るのが、25年3月に発表された「コンスタントフォース トゥールビヨン11」だ。同作はジョン・アーノルドとアブラアン-ルイ・ブレゲの友情の証しを現代によみがえらせた傑作である。
後世に名を残すふたりの天才時計師に交流があったことはよく知られた話だ。彼らの親交の深さを示す有名なエピソードがある。アーノルドは製作した懐中時計「No.11」をブレゲに寄贈。ブレゲはアーノルドの死後、No. 11に自身初(=世界初)のトゥールビヨンを載せ、アーノルドの息子であり、ブレゲの下で修行を積んだ経験もあるジョン・ロジャー・アーノルドに贈った、というものだ。この時計こそ「No.169」と呼ばれる、世界で最も有名な懐中時計のひとつだ。
コンスタントフォース トゥールビヨン11は、そんな歴史的傑作にオマージュを捧げるモデルである。最大の見どころは、No. 169そっくりに仕立て上げられたムーブメントデザインだ。地板の半分以上を覆う大型の受けや三角形のキャリッジ受け、ブレゲのコメントが入れられた銘板など、若干のアレンジを取り入れながらも、見事に再現されている。

文字盤もクラシカルなムーブメントに合わせてベース部分にはグラン フーエナメルが採用された。焼成後のしっかりとした研磨に関しては好みに依るものが大きいが、質は間違いなく高い。
わずか11本の限定モデルのために、新規でムーブメントを起してしまったアーノルド&サン。結果、周年の最後を飾るにふさわしい大作が仕上がった。