多様なカラーバリエーションが魅力のひとつとなっている、近年の腕時計。特に一大トレンドにもなった緑色の文字盤は、色の奥深さに注目が集まっている。今回は、グリーンダイアルのラインナップが豊富なグランドセイコーの4モデルをピックアップ。パーソナルカラーを活用して「あなたに似合う緑」を探していこう。
Photographs & Text by Mutsuyo Ito
[2025年4月29日公開記事]
「似合う色探し」のハードルを下げるパーソナルカラーという指標
「緑色」と聞いてあなたの脳裏に浮かんだのは、どんな緑だろう? 腕時計愛好家なら、ロレックスの黄み寄りの鮮やかな緑や、オーデマ・ピゲの青み寄りでくすんだ緑が浮かぶかもしれない。このように、同じ「緑色」でも多くのバリエーションがあるのが分かる。その中で自身に似合う色を探すには時間も手間もかかるだろう。
そこで提案したいのがパーソナルカラーだ。パーソナルカラーとは、「自身の持つ色素とモノの色」の相性が良い色のグループのことだ。「色」といっても、緑が似合う、青が似合うという分類ではない。例えば、明るく黄みよりの緑、暗くくすんだ緑、というように同じ緑色の中でも、自身に一番似合う緑色を指す。
このグループは日本の四季になぞらえて4分類(スプリング・サマー・オータム・ウインター)される。さらにこの4つのグループはベースカラーとしてイエローベースとブルーベースに分けられる。
パーソナルカラーを知るとどんなメリットがあるの?
パーソナルカラーは感覚や好みではなく、肌に合わせることで肌の色を実際とは異なる見え方として知覚させる色のことだ。これは人間の視覚の「錯視」という特性を利用している。例えば、腕時計を試着したが色味がしっくりこない場合は、パーソナルカラーでの苦手なグループの色を選んでいるのかもしれない。
さらに、パーソナルカラーを知ることは、単に「似合う色」を知るだけでなく、「相手にどう見せたいか』という戦略的な視点を持つための第一歩にもなる。色を味方に付けることで、自信を持って、あらゆるシーンで目的に合わせた印象を演出することができるのだ。
というわけで、パーソナルカラー4分類をふたつに分けた、「イエローベース」と「ブルーベース」で、あなたに合った色の時計を提案していこう。
似合う色の指標を持つために、まずは自身のパーソナルカラーを知ろう
簡易的な診断表を載せるので、当てはまる項目が多いタイプのパーソナルカラーを取り入れてみてほしい。
イエローベースの春タイプは、黄みを多く含んだ、鮮やかで明るい色を肌周りに当てると健康的に見える。明るく爽やかで、親しみやすい印象の人が多い。
・肌は艶と透明感がある
・地毛はこげ茶で艶がある
・瞳がキラキラしている印象
・白目と黒目のコントラストがハッキリしている
・艶のあるゴールドやキラキラした物が似合うと言われる
ブルーベースの夏タイプは、青みを多く含み、かつビビッドではなく、穏やかな明るさの色を肌周りにあてた時に健康的に見える。上品でエレガントな印象の人が多い。
・肌はきめ細かく、薄い。荒れやすい傾向にある
・地毛は黒くマットな質感
・虹彩(黒目)は明るく瞳孔が見えやすい
・白目と黒目のコントラストは柔らかい
・マットなシルバーやパールが似合うと言われる
イエローベースの秋タイプは、黄みを多く含みつつ、穏やかで暗い色、例えばスモーキーがかっていたり、くすみがかっていたりする色を肌周りに当てた時に、健康的に見える。シックで落ち着きのある印象の人が多い。
・肌は赤みが無くマットな質感
・地毛はこげ茶~黒で太く硬め
・虹彩(黒目)は吸い込まれそうに深く暗め
・瞳孔は見えにくい
・マットなゴールドやべっ甲が似合うと言われる
ブルーベースの冬タイプは、青みを多く含み、鮮やかさのある暗い色を肌周りに当てた時に健康的に見える。クールで華やかな印象の人が多い。
・肌が厚い。赤みが出にくく、荒れにくい傾向にある
・地毛は黒く艶があり太い
・白目と黒目のコントラストがハッキリしている
・真っ黒な服を着ても冠婚葬祭のような雰囲気が出ない
・艶のあるプラチナやダイヤモンドが似合うと言われる
錯覚を利用した簡易的な自己判断方法

写真はブルーベースタイプの手。ブルーベースタイプは青色(銀色でも可)の方に手を置くと透明感が出て健康的に見え、対して黄色(金色でも可)の布か紙に手を置くと、黄ぐすみや赤みが強調される。イエローベースタイプであれば、黄色の方に置いた手はくすまず健康的な肌に見えて、青の方に置くと血管の青みが強調されて、血色が悪く見える。
もちろん、これはあくまで簡易的な診断のため、より詳しく知りたい方は、プロのパーソナルカラー診断を受けることをお勧めする。それでは、イエローベースタイプ、ブルーベースタイプに分けて解説していこう。
グランドセイコーのダイアルカラーを解説
今回は黄み寄り〜青み寄りまで、さまざまな緑を堪能する事ができる、4モデルをピックアップした。まずはイエローベースタイプにお勧めしたいモデルを解説していこう。さらに、時計を腕にのせた時に、肌から浮いて見えた場合の対処方法も伝授する。
イエローベースタイプにお勧めしたいグランドセイコー「SBGH351」
「立夏」というペットネームの付いたこのモデル。春から夏へと季節が移り変わり、日差しが強まって樹々を照らす、その瞬間のような生き生きとした色だ。ダイアル色は黄みよりの緑で、太陽光の元では鮮やかに、室内では落ち着いた色へと変化する。ロゴマークと秒針のゴールド色も含めてイエローベースタイプにしっくりくるモデルだ。
イエローベースタイプにもうひとつお勧めするならグランドセイコー「SBGE257」
こちらも黄みよりの緑だが「立夏」よりは明度(明るさ)・彩度(鮮やかさ)が低いため落ち着いた印象になっている。ベゼルやGMTのデザイン、さらにはGMT針の淡いオレンジにも見える黄色が相まってアクティブ感も感じられるが、全体的に色味は落ち着いているので、ジャケットスタイルにも合わせやすい。
「立夏」の鮮やかさがしっくりこなかった方は、こちらのモデルを試してみて欲しい。
ブルーベースタイプにお勧めしたいグランドセイコー「SLGA025」
「阿寺」というペットネームが付いたこのモデル。長野県木曽郡の阿寺渓谷にある川のせせらぎを表現しているとのこと。実際に見た事がなくとも、水底が透けて見えるような澄んだ川なのだろう、と想像できるような透明感のあるエメラルドグリーンだ。黄みが強い色を苦手とするブルーベースタイプにお勧めしたいモデルだ。
ブルーベースタイプにもうひとつお勧めするならグランドセイコー「SBGW285」
こちらもダイアル色は青みよりの緑だが、明度(明るさ)がかなり低く、照明や角度によっては黒に近い色なのでタイプを問わず合わせやすいモデルだ。革ベルトはダイアルと同系色になっているが、ダイアル色と比べると若干黄みが強い。シーンに合わせて革ベルトの色を変えてみても楽しめるモデルだ。
革ベルトの色を変えるなら、ブルーベースタイプにはブラックやホワイト、イエローベースタイプにはベージュやブラウンをお勧めする。
しっくりこない時の対策方法
好きな色だけど、腕に乗せるとなんだかしっくりこない……そんな時はダイアルの色とパーソナルカラーでの同じ色グループのアイテムを合わせてみて欲しい。言葉だけでは分かりづらいので、SBGH351で実践してみよう。
モデルの腕はブルーベースタイプ。袖口にブルーベースタイプが得意とするホワイトを合わせると時計が浮いて見える。
ホワイトの布をダイアル色と同じイエローベースタイプが得意とするアイボリーに変えてみると、全体的になじんで見えるようになった。
このように、自身の肌がブルーベースであっても、時計の色がイエローベース向きの場合、時計の近くにはイエローベースタイプが得意とする色(春・秋の色)のアイテムを持ってくることで、全体的になじみやすくなる。合わせるアイテムの色によって、意外なほど見え方は変化するので是非試してみて欲しい。
緑ダイアルの時計にチャレンジしてみよう!
「あなたの緑色」は見つかっただろうか? パーソナルカラーは、あくまで似合う色の軸を知るための指標のひとつだ。最終的にどの時計を選ぶかは、あなた次第。「好き」で選んだ色も、「似合う」で選んだ色も、どちらもあなたの個性を表現する大切な要素。お気に入りの緑ダイアルの時計を見つけて、日々のコーディネートに取り入れて楽しんでもらえたらうれしい。
筆者プロフィール
伊藤むつよ
時計メーカーの色彩監修やイメージコンサル、催事会場でのパーソナルカラー診断や接客講師など、販売現場の「品・場・人」にまつわるコンサルティング業務を行う。時計修理技能士2級・J-color認定講師・カラーセラピスト等多数の資格を保有。株式会社parakeITO代表取締役。HP:https://www.mutsuyo-ito-parakeito.com/