CITIZEN 「エコ・ドライブ ワン」 / 編集部の気ままにインプレッション

2019.09.23

『クロノス日本版』の精鋭?エディターたちが、話題の新作モデルを手に取り好き勝手に使い倒して論評する大好評の連載企画。今回は、シチズンの「エコ・ドライブ ワン」。世界最薄のエコ・ドライブ ウォッチとして薄型化への技術開発はもちろん、そこに堅牢さも加えた渾身の力作だ。腕に載せると驚くほどの薄さを体感できるこのモデルの実力を検証した。

サーメットベゼルの華やかさが素晴らしい

チャコールグレーの文字盤にカッパーカラーのサーメットベゼルが華やかな雰囲気。写真では分からないが、文字盤はサファイアクリスタル製。光の当たり方によって螺鈿模様のようなテクスチャーが浮かび上がる。

 2016年のバーゼルワールドで、シチズンは光発電式腕時計発売40周年を記念して「エコ・ドライブ ワン」の限定モデルとレギュラーモデルをそれぞれリリースした。注目すべきは厚さ1㎜のムーブメントに2.98㎜(設計値)のケース(世界最薄のエコ・ドライブウォッチ)という驚くベきスペックなのだろうが、わたしはそのただならぬ質感に注目していた。ペラペラな立体感に乏しい薄型ドレスウォッチとは本質的に異なる、実用性が高く、かつスタイリッシュな時計とエコ・ドライブ ワンを位置づけていたのだ。

 某月某日。東京・表参道にあるCITIZEN DESIGN STUDIOを訪ね、旧知のPR担当の方からエコ・ドライブ ワンの実機を受け取る。本連載でこの時計を使ってインプレ記事を書きたいとダメもとでお願いしたところ、すんなりと快諾いただけたのだ。わたしが手に取ったのはSSケース&ブレスレットにサーメットベゼルを組み合わせたレギュラーモデル。文字盤は落ち着いたチャコールグレー。ピンクゴールドを思わせるサーメットベゼルがとても際立つ1本だ。ブレスレットの長さ調整をした後、我が腕に。うーん、やはりただの薄型時計とは雰囲気が異なる。微妙な表現になるが、オーデマ ピゲのロイヤル オークのファーストモデルをはめているような感じなのだ。バックルは両観音開き。クラスプには細かなペルラージュ装飾が入っている。これは期待できそうだ。

 エコ・ドライブ ワンをはめて、表参道の街を闊歩する。なかなか素敵な気分だ。光発電エコ・ドライブはフル充電されているということなので、充電の心配もいらない。低消費電力化により、約12カ月間稼働するという。

 すぐに気がついたのは、ケースの薄さに比して堅牢そうなブレスレットの存在だ。相応の厚みをもたせているのかと思いきや、ケースデザインによって厚く見ているとのこと。ベゼルの素材であるサーメットは、シチズンは薄型=脆弱ではなく、薄型=強靭の図式を実現すべく、ベゼルにサーメットを使っているという。サーメット(CeramicsとMetalの造語)とは、金属と炭化物はや窒化物など硬質化合物の粉末を金属の結合材と混合させて焼結した複合材料の総称であり、耐熱性、耐摩耗性を備え、一般的なセラミックスよりも金属光沢をもった色調表現が可能だ。ヴィッカーズ硬さ1500HV以上の超硬合金は薄いSS製のミドルケースに4つのビスでしっかりと固定されている。裏蓋も同様にサーメットが採用され、不意な衝撃から薄型のケースを守る役割を担っている。ちなみに、800本限定で即完売した「エコ・ドライブ ワン」の限定モデルは、サーメットのケースに、ヴィッカーズ硬さ2100HVというバインダレス超硬合金をベゼルと裏蓋に採用するなど、そのタフネスさは群を抜く。限定モデルもレギュラーモデルも、薄さに実用性だけでなく強靭さを落とし込んでいるのである。