12時間表示の回転ベゼルを備え、第2時間帯の表示にも対応したオリス「ダイバーズ65 12H キャリバー400」。堅牢な自社製ムーブメントを搭載し、スポーツウォッチとしての実用性と、旅の相棒にふさわしい控えめな美学を両立する。派手さはないが、長く付き合いたくなる。この腕時計はそんなモデルだ。『ウォッチタイム』アメリカ版に寄稿するマーティン・グリーンいわく、「この腕時計さえあればいい」と思わせるほど、彼にとっては理想に近い1本だと言う。
自動巻き(Cal.400)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径40.0mm)。10気圧防水。ステンレスブレスレットモデル:61万2700円(税込み)。レザーストラップモデル:57万8600円(税込み)
「旅に出るならこの1本」。12時間表示ベゼルで広がる可能性
「この腕時計さえあればよい」というフレーズは、軽々しく使えるものではない。私の基準では、この言葉に見合う腕時計はごくわずかだ。しかし中には、実に惜しいところまで迫るモデルもある。そして、今回その新たな候補に加わったのが、オリスの「ダイバーズ65 12H キャリバー400」だ。
このモデルは、ブランドの「ダイバーズ65」コレクションの他のタイムピースと大きく異なるわけではない。ただ、12時間表示の回転式ベゼルを備えており、第2時間帯の表示を容易にできる。この仕様のために、本格的なダイバーズウォッチと呼べるかは議論の余地があるが、私は潜るよりも旅をする機会が多い。
経年変化も味になる、実用本位の誠実なデザイン
ダイバーズ65 12H キャリバー400は、実用的で正直な設計思想が魅力の時計だ。簡潔なデザインでありながら、随所に丁寧なディテールが見られ、飽きが来ない。むしろ、キズや経年変化が加わることで、使い込むほどに味わいが増していくと期待できる。
オリスはケース径40mmを維持しつつ、自社製ムーブメント、Cal.400を搭載。視覚的にバランスの取れた対称構造を持ち、約5日間のパワーリザーブという実力も備えている。6時位置の日付表示は主張しすぎず、ダイアル全体のミニマルな印象を損なわない点も評価できる。
スポーツとフォーマルを行き来する多面性
防水性能は10気圧であり、本格的なダイビングには物足りないと感じる人もいるかもしれないが、私自身はそこまで潜った経験がない。オリスはこのモデルをメタルブレスレットとブラックレザーストラップの2種類で展開している。なお、私は両方の使用を推奨したい。ブレスレットでは堂々たるスポーツウォッチに、ブラックレザーでは思いのほかフォーマルに映るからだ。
さらに、ケースのサイズ感が控えめであるため、どんな服装にも馴染みやすく、幅広いシーンに対応できる。加えて、ブラウンのストラップを合わせれば、クラシックな雰囲気も演出可能だ。
「完璧な1本」ではないが、限りなく近い腕時計
私にとって「この腕時計さえあればよい」と言い切れる腕時計はまだ存在しない。しかし、ダイバーズ65 12H キャリバー400は、これまでに出会った腕時計の中で、それにかなり近い1本であると言えるだろう。