RICHARD MILLE 過酷なテスト / リシャール・ミル ナノテク応用で成し遂げた最先端のウルトラライト

2017.08.16

大幅な軽量化と、耐衝撃性の向上が図られたRM 50-03のムーブメント。ベースはRM 050だが、スプリットセコンド機構が一新されたほか、レバー類も肉抜きされた。加えて一部の受けも軽いカーボンTPT®に変更されている。

 通称ナダルモデルをリリースした7年前から、リシャール・ミルは耐衝撃テストを社内で行うようになった。以降の同社が、時計作りをいっそうエクストリームに振るようになった一因である。

 現在、リシャール・ミルはすべてのスポーツウォッチに対して厳格な耐衝撃テストを行っている。まずは時計をハンマーで飛ばすテスト。しかしその際の衝撃は、時計業界の標準である5000Gsではなく、最大で1万3000Gsもある。加えて巻き真側から10回、文字盤側から10回ハンマーで叩くという入念さだ。この〝ナダルテスト〟に加えて、リシャール・ミルにはもうふたつ独自の衝撃テストがある。ひとつは60Gの衝撃を、24時間、計14万4000回加えるテスト。機械式時計が最も嫌う、微振動への耐久性を測るものだ。その後、500Gのショックを10分連続で与えて、すべてをクリアしたモデルだけが製品化される。筆者の知る限り、これほど入念な試験を行うメーカーは希だし、しかも、同社はこれを複雑時計にも行ってきた。

 何より耐衝撃性を重視してきたリシャール・ミル。その現時点における帰結が、RM 50-03といえる。詳細を説明したのは、設計者のサルバトール・アルボナだ。

「ベースは既存のムーブメントだが、地板や受けをスケルトン化し、素材をカーボンTPT ®やチタンに替えることで、重さを12gから7gに減らした。軽量化しないと〝ナダルテスト〟をクリアできないからだ」。併せて機構も刷新された。まずはふたつのコラムホイール。衝撃を受けても確実に回すため、通常の8歯ではなくあえて6歯に変更された。またコラムホイール下層にある歯は肉抜きされ、〝山〟も低くされた。強い衝撃を考慮した〝ラファエル・ナダル〟や〝バッバ・ワトソン〟と異なり、RM 50-03は、レースシーンで起こる微振動を念頭に置いたモデルといえる。