ロレックスらしい「エレガンス」さを打ち出した、セッティモブレスレット採用1908に大注目

FEATUREWatchTime
2025.11.06

ロレックスが静かに進める「クラシックの再構築」。2025年のウォッチズ&ワンダーズで披露されたパーペチュアル 1908のセッティモブレスレット採用モデルは、その象徴的な一歩だ。無垢のイエローゴールドに新設計の七連ブレスレットを組み合わせ、かつてのチェリーニに代わって、ロレックスが再び「エレガンス」という語を自らの辞書に書き加えたことを示している。『ウォッチタイム』ドイツ版編集長、ダニエラ・プッシュが解説する。

ロレックス「パーペチュアル 1908」

『WatchTime』ドイツ版2025年7月8月号
Text by Daniela Pusch
[2025年11月6日掲載記事]

ロレックス流「クラシカルなエレガンス」への次の一手

 2025年の「ウォッチズ&ワンダーズ」で注目を集めたのは、予想どおり新しいランド・ドゥエラー コレクションであった。しかしその陰で、ロレックスは静かに、そして長く記憶に残るもうひとつの「驚き」を用意していた。

ロレックス「パーペチュアル 1908」Ref.52508

ロレックス「パーペチュアル 1908」Ref.52508
なお、このホワイト文字盤のモデルだけでなく、ブラック文字盤のセッティモブレスレットを備えたモデルもラインナップに加えられている。自動巻き(Cal.7140)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約66時間。18KYGケース(直径39mm)。50m防水。527万3400円(税込み)。

 それが、コレクションに2023年から加わったパーペチュアル 1908の新バリエーションである。今回初めて、無垢のイエローゴールド製ブレスレットを備えた仕様が登場したのだ。

 これは単なる外装変更ではない。ロレックスが素材とデザインの表現力を次の段階へ進めたことを示す、静かながら本質的な転換点である。この精緻なブレスレットの名はセッティモだ。

クラシックに根ざした精神

「パーペチュアル 1908」は、非公式ながらも廃番となったチェリーニ コレクションの後継として誕生した。登場からわずかの間に、クラシカルな腕時計づくりに対するロレックスの繊細な回答として、その存在感を確立している。

シンプルに徹した美学

 3・9・12時位置のアラビア数字、細いバーインデックス、そして6時位置のスモールセコンド。それらは1930年代のオイスター・パーペチュアル初期モデルを思わせつつも、未来へ向けた架け橋のようにも思える。

ロレックス「パーペチュアル 1908」

スモールセコンドの上に「Superlative Chronometer」と精度品質を保証する文言が入れられているのが見て取れる。

 スモールセコンドの上部にアーチ状に配された「Superlative Chronometer」の文字は、控えめな品質証として光る。また、時針にはブレゲ針、分針には剣型針が組み合わされ、光の角度によって表情を変えながら、繊細な分目盛りの上を軽やかに舞うような印象を与えるのだ。

セッティモというアップグレード

 しかし、この腕時計をひとつ上の次元へと引き上げたのは、何よりも新しいブレスレットである。セッティモは、このモデル専用に開発されたもので、1列あたり7つのわずかに湾曲したリンクがずれながら並ぶ構造を持つものだ。

ロレックス「パーペチュアル 1908」

セッティモブレスレットは、クラスプ部分の王冠マークがブレスレットの中に埋もれるように配置されている。

 すべてのコマが鏡面に仕上げられ、ロレックスならではの精密な工作が息づく。そのしなやかな構造は、古典的なジュエリーブレスレットを思わせつつも、現代的なセンスが漂うのだ。

 特筆すべきは、ケースとブレスレットの間にあえてわずかな隙間を設けた点である。この「非一体型」とも呼ぶべき意匠によって、クラシカルなドレスウォッチとしての方向性がより明確に示され、近年のスポーツモデル的な一体デザインとは一線を画している。

ロレックス 1908

クラスプを外したときの様子。確かに、王冠マークは先端部分のパーツなのだ。

 留め具にも、ロレックスらしい徹底した工夫が見受けられる。隠しクラウンクラスプはブレスレットの流れに溶け込むように設計され、外からは王冠マークだけが姿を見せる。内側は高光沢に磨かれ、まるでジュエリーのような仕上がりだ。

比率と技術

 ケース径は39mmで、基本的な造形は従来のモデルと変わらない。厚さ9.5mm、繊細に刻まれたフルーテッドベゼル、そして短くわずかに傾斜したラグのバランスは絶妙で、装着感は驚くほど快適だ。

 ホワイトラッカー仕上げの文字盤はあえて装飾を抑え、ファセットカットされた針の動きが作り出す光のリズムを引き立てる静かな舞台となっている。

ロレックス「パーペチュアル 1908」

裏蓋からは搭載するCal.7140を見て取れる。既存の1908とと同様にロレックスにしては珍しいトランスパレント仕様で、ムーブメントの装飾や機構、その動きを鑑賞できる。セッティモブレスレットとなっても、それを妨げはしない。

 搭載されるムーブメントは、自社製自動巻きのCal.7140。コート・ド・ジュネーブ装飾、イエローゴールド製のスケルトンローター、クロナジー脱進機、シロキシ・ヘアスプリングなど、最新技術と伝統的な仕上げが見事に融合している。パワーリザーブは約66時間。その内部構造は、まさに機能美そのものである。

別格の体験を手にいれるには

 もちろん、この洗練には相応の価格が伴う。レザーストラップ仕様の価格は371万8000円(税込み)。そして今回のセッティモブレスレット仕様(Ref.52508)は527万3400円(税込み)と、約200万円近い差がついてしまう。

1908ハンズオン

実際に着用してチェックしてみると、クラシックなドレスウォッチのエレガンスと、高度な金製造技術による精緻な技巧を融合させた印象を受けた。手首に載せると、軽やかでありながら確かな存在感があり、控えめな輝きの中に贅沢さと気品が共存する。まさに、長く印象に残るタイプの時計だ。

 だがこの価格差は、単に金の重量の問題ではない。見た目の印象、装着感、そして時計全体の完成度、すべてにおいて、別格の体験をもたらす。この時計はレザー装着モデルの単なるバリエーションではなく、ひとつの独立したアイデンティティを持つモデルではないだろうか。



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