時分表示のインダイアルは、マイクロ加工技術で放射状のグリットに成形される。針とインデックスには青が効く。ブルーの手裏剣モチーフは小秒針代わり。
自動巻きローターも鉄骨フレーム構造をモチーフとする。外周に比重が偏り、回転効率に優れる。シリコン製の平ヒゲゼンマイと脱進機を採用。
緻密なサテン仕上げで荘厳な印象を高めたケースは、一方で厚さが10・6㎜にまで抑えられ、軽量な素材と相まって装着感は極めて良好である。薄くても豊かな奥行きを感じさせるのは、ダイアルの造作の妙。旧2作の「Z9」と「Z10」と同じく、大胆にスケルトナイズされたダイアルに、ニューヨークを象徴する高層ビル群や島を結ぶ鉄橋といった近代建造物の構造美にも似た幾何学的なディテールを、いくつも積層させたのだ。
オフセットさせた時分表示のインダイアルは、緻密なグリット仕立て。その姿は、高層ビルの吸排気口にも似る。また、6時位置に置いた大型日付表示は、インダイアルとは対照的に直線的な二重のフレームで取り囲んだ。そしてインダイアルと大型日付表示内側のフレームは、橋梁や鉄骨のトラスを彷彿とさせるフレームで両側からわずかに宙に浮かんでいるかのように支えられ、立体感を表している。各フレームの終端をビス留めしている様子も、精悍であり建築的だ。
表側に露わになった大型日付表示のふたつのディスクも造形的に凝る。数字が4つだけの10の位のディスクを十字に成形しているのは他社にも見られるが、1の位のディスクも10個の数字の間に切り欠きを設けているのだ。こうすることで、十字の10の位のディスクと同じく、1の位のディスクの切り欠きが、日付を示すふたつの小窓の下側のラインに一直線に揃い、見た目の統一感が生まれる。