本田雅一、ウェアラブルデバイスを語る/第4回『Apple Watch Series 3の課題』

本田雅一:文
Text by Masakazu Honda

テクノロジーの分野で、知らぬ人はいないほどのジャーナリストが、本田雅一氏だ。その本田氏が、腕に着ける装置「ウェアラブルデバイス」を語る。第4回目はApple Watchが今後より発展していくために必要な課題についてだ。

Apple Watch Series 3も完璧ではない

 Apple Watch Series 3は、これまでの連載でも述べてきたように、極めて完成度の高いスマートウォッチだ。スマートフォンが我々にもたらしてきた機能性を、腕に装着するデバイスとして最大限に引き出している。スマートフォンのコンパニオンとして機能し、そしてそれ単体でも多様な情報の出入り口として機能する。とはいえ、完璧というわけではない。

 ファッション性? もちろん、それもある。まずはApple Watchが抱えるファッション性の問題をふたつ見ていこう。

 ひとつはその画一性だ。“アプリ”を通じてオーナーとのインタラクションが必要となるスマートウォッチは、ヒトとのコミュニケーションに使う画面の形状……時計で言うところの“盤面”形状を固定する必要がある。加えて、タッチ操作やダイヤル、ボタン操作などの基本作法を加えると、全体のフォルムには大きな制約が出てくる。その分、Apple Watchは多様な素材、機構、デザインのバンドを、その日ごとに入れ替えたくなるほどカジュアルに使い分けることを可能にしている。しかしながら、そこに長い歴史を重ねてきたアナログ時計の深みと同じ感覚を求めることはできない。

 ファッション性に対するもうひとつのハードルは、駆動装置のライフタイムである。もちろん、簡単にApple Watchが壊れてしまうという話ではない。バッテリー交換などは必要になってくるだろうが、そうした部分を除けばApple Watchの寿命に対する問題はさほど大きいわけではない。しかし、機械式であろうと、クォーツのアナログ式あるいはデジタル式であろうと、一般的な“時計”が時を経てもその機能性に影を落とすことはない。しかし、一種のパーソナルコンピューターでもあるスマートウォッチには“いつまで時代に追従できるか”という不安がよぎる。

 外装に関しては、初代Apple Watch Editionの素晴らしく磨き上げられた18Kゴールド製ケースは、ほれぼれするほどの精度で作られていたが、一方で、スマートウォッチとしての使い心地においては、アルミニウム製ケースのSeries 3の方がはるかに気持ちいいという事実がある。

 “ファッション性”とは自身の、あるいは周囲も含めたコミュニティー全体の価値観に支配されるものだと定義するなら、将来はケースの素材や仕上げなどを気にせず、製品そのものの機能性で評価される時代が来るのかもしれない。しかし、現時点における時計のファッション性という感覚からすると、Apple Watchだけでなく“スマートウォッチのファッション性”を完成させることは難しい。