Q:自動巻き時計が止まった場合、手巻きすべき?
A:自動巻きムーブメントの多くには、自動巻き機構と手巻き機構を連結、カットするデクラッチという部品が搭載されています。そしてデクラッチが付いた自動巻き時計においては、ローターによる自動巻きとリュウズを用いた手巻きを比較すると、後者の巻き上げる力がはるかに強いため、デクラッチに掛かる負担も自動巻き時より大きくなります。そしてETA2892A2を筆頭に、現在使用されているデクラッチの多くは作りが簡素なため、大きな負荷をかけるとそれだけ故障のリスクも上がります。あくまで個人的な見解ですが、ショパールのL.U.Cなど、一部の例外を除いて自動巻きムーブメントを載せた腕時計の手巻きは、時計が動く程度にとどめた方がいいと思います。
ETA2892に代表される一般的な自動巻きムーブメントのデクラッチは、作りが簡素だ。具体的には自動巻きと手巻きの切り替えを、偏心ネジを用いて歯車を強制的に横へ滑らせて行うというもの。対してL.U.Cではこの切り替えにテコの原理を用いる。歯車がしっかりと固定されたプレートが、支点を中心に首を振り、角穴車と噛み合ったりはずれたりすることで角穴車と丸穴車が連結・解除される設計のため、耐久性にも優れている。なお、上の写真、Cal.L.U.C 96.09-Lの赤丸で囲ったところがデクラッチである。