フォッシル Qの第4世代として2018年8月6日に発表。先代からの主な変更点として心拍センサーやNFCによる電子決済機能、GPS機能の追加が挙げられる。これらを得たことで、第3世代よりもスマートフォンへの依存度は低くなり、スマートウォッチ単独での使い勝手が向上したと言えるだろう。現在はフォッシルの直営店4店舗のみで発売中。今後随時販路を拡大していく予定だ。SS(直径45mm)。3万6000円(税別)。㉄フォッシルジャパン℡03-5992-4611
ライセンス契約の難しさ
最も大きな疑問は、“ファッションに合わせて着け替える”といった使い方をスマートフォンでも行えるか? という点にある。
確かにケイト・スペードのスマートウォッチで提案されるように、盤面デザインをその日のファッションテイストに合わせて変えるといった機能面での解決は行えるかも知れないが、ケースのデザインやカラーまでを変えることはできない。ソニーはFES Watch Uのようにバンド部も含めて電子的にテクスチャを描き替える製品を提案しているが、ベゼルカラーや形状、サイズまで変化を付けることができないのは自明だ。
一方でフォッシルは、高級時計が好きなわけではないが、ファッションとしての腕時計を楽しみたいという層に、1本ではなく複数本のリーズナブルな腕時計を販売してきた。これまでのフォッシルのやり方でファッションとしてのスマートウォッチを提案するのであれば、将来的には複数のウェアラブル製品の使い分けを提案すべきだろう。
フォッシルが手掛けるいくつかの腕時計は、ブランドを跨がってスマートフォンとリンクし、活動量計測を共通化してほしい。さらに言えば、タッチスクリーンスマートウォッチと、同じくフォッシル製ハイブリッドスマートウォッチのTPOに合わせた使い分けや、睡眠時のトラッキング利用を促すためにバンド型のシンプルな活動量計との併用もできることが望ましい。
スポーツやフィットネスを楽しむときには、より軽量なバンドあるいは腕時計が使いたいだろう。就寝時には腕時計ではなく、装着を忘れさせるような軽快なデバイスが望ましい。そしてもちろん、服装に合わせてプライベートなシーンではディーゼル、ビジネスの現場ではアルマーニといった使い分けもしたい。
ところが現在、フォッシルのウェアラブル製品はハイブリッド型の場合、ブランドごとにスマートフォンとの連携を司るアプリが分断されてしまう。仮にフォッシルとミスフィット、スカーゲンの製品を持っていても、それらは別々のアプリでスマートフォンと連動させねばならない。また、グーグルのwearOSの場合、1台のスマートフォンに対してひとつのスマートウォッチしか連携できないという制約があり、さらにはハイブリッド型とのデータ互換性がないのだ。
この方針に関しては、実は第1世代のハイブリッドスマートウォッチを取材した際に疑問として尋ねたことがあったのだが、実はかなり根の深い問題である。なぜなら、各ブランドのライセンスに絡んでくるからだ。異なるブランドをひとつのアプリで扱えば、そこには競合する部分も出てくる。技術的な観点で言っても、ハイブリッドスマートウォッチ用アプリは自社開発できても、wearOSを搭載するタッチスクリーンスマートウォッチ用のアプリはグーグルに依存しているという弱点もある。
当時は問題こそ認識しているが「ブランド価値やデザインテイストの違いを尊重し、スマートフォンアプリの共通化はできない」という回答だった。そしてその後、現在に至るまで方針の転換はない。
しかし、現在の路線を第4世代、あるいは第5世代と続けていけば、いずれは当たる壁だろう。次世代製品が発売される8月下旬以降に、ふたたび彼らの取り組みに対して再評価することにしたい。
本田雅一(ほんだ・まさかず)
テクノロジージャーナリスト、オーディオ・ビジュアル評論家、商品企画・開発コンサルタント。1990年代初頭よりパソコン、IT、ネットワークサービスなどへの評論やコラムなどを執筆。現在はメーカーなどのアドバイザーを務めるほか、オーディオ・ビジュアル評論家としても活躍する。主な執筆先には、東洋経済オンラインなど。