時計が「時刻」のみを表示しているものが多いのは事実だが、それ以外の創造性をいかんなく発揮できる自由度も持つ。ここでは革新的な7つのブランドから発表された、慣習にとらわれないデザインをもった7本のタイムピースを見ていきたい。
Text by Alexander Krupp
アンデルセン・ジュネーブ「モントル・ア・タクト」
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例えば、劇場やビジネスミーティングの場で手首を動かすことなく、この時計を着けた人はひそかに時間の確認ができるという「人の気をそらさない」時計であるようにと、スヴェン・アンデルセンは下部のラグ2本の間にふたつめの時間表示を設けたアンデルセン・ジュネーブ「モントル・ア・タクト」を発表したのだ。人の気をそらさない表示は、文字盤上に表示された時間と同期している。アンデルセンの時計はケースバックにあるリュウズによって時刻合わせが可能である。
ベル&ロス「BR 01-92 ターン・コーディネーター」
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飛行機の操縦室にある方向転換用インジケーターを模したベル&ロスのパイロットウォッチは文字盤上部にのみ時間を表示する仕組みだ。固定された針の下をディスクが回転し、時と分を示す。ディスクモジュールは、汎用性のあるベーシックなキャリバー上に組み込まれている。
ブライトリング「アベンジャー ハリケーン」
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このブライトリング「アベンジャー ハリケーン」のような24時間表示の時間表示は、特に世界の時間帯(UTC)を操るパイロットたちに重宝される。その特殊な時間表示と並んで、50mm径というこの大型のブライトリングは、「ブライトライト」を採用した軽量で丈夫なケースと約70時間のパワーリザーブを持ったC.O.S.C.認定クロノメーターのムーブメントを誇る。
クリストフ・クラーレ「エクストリーム1」
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自身の名を冠したブランドで、クリストフ・クラーレは文字通り「究極の時計」を世に送り出した。波状のスティールのみが用意されているクリストフ・クラーレ「エクストリーム1」はふたつの時・分表示のスケール脇にあるチューブの中に無重力のように浮いて見えるふたつの小球体を有する。そのトリックは、ムーブメントの端にある磁石が上下するのに伴って金属製のボールが移動する仕組みだ。
ウブロ「MP-05 ラ・フェラーリ 50デイズ パワーリザーブ サファイア」
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ベル&ロスが回転式ディスクを採用する一方、ウブロは回転式ドラムを展開している。「MP-05 ラ・フェラーリ 50デイズ パワーリザーブ サファイア」は型にとらわれない表示方法と垂直トゥールビヨン、そして垂直に並ぶ11個の香箱からなる約50日間(50日であって50時間ではない!)のパワーリザーブを融合させている。バッテリーで駆動するスクリュードライバーがこのマラソンランナーともいえるモデルの巻き上げには使用されている。
マイスタージンガー「サルトラ・メタ」
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マイスタージンガーは単針時計を作るブランドとしてもよく知られている。この時計は1本の時針が文字盤上の外周を示しながら動く。分を分表示の位置で読み取る他のモデルとは異なり、「サルトラ・メタ」は従来からある分針と12時位置の開口部にあるジャンピング・デジタル・アワーを融合させたものである。
ユリス・ナルダン「マリーン・グランドデッキ・トゥールビヨン」
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6時位置のトゥールビヨンは興味深い存在だが、ユリス・ナルダンの「マリーン・グランドデッキ・トゥールビヨン」の分針は、それよりも特筆に値する。分表示はロープとウィンチが帆を巻き上げる機構がミニチュア化されたものによって、マストが指し示す線状の表示なのである。ローラーは帆船のマストの張り具合を調整するウィンチを想起させる。時表示は12時位置のふたつの開口部からなるジャンピングアワーだ。
WatchTime 2017年7・8月号初出。