6)オリンピック計時
オメガ初となるクロノグラフは1898年に製作されている。その後の10年でオメガの時計は16以上のスポーツ大会で時間計測機器として使用されることとなる。1931年にジュネーブ天文台で行われたコンクールでは、オメガが6部門すべての勝利を手にしその信頼性を確固たるものとして築いた。国際オリンピック委員会は、1932年のロサンゼルスオリンピック大会でオメガをオフィシャルタイムキーパーとして採用。これはオリンピック史の中で、1社がすべての競技の時間計測を任された初の事例となった。オメガはこの大会にオリンピックで初採用となる1/10秒を計測できる高精度のクロノグラフを30個供給した。これらはすべて、ヌーシャテル天文台とアメリカの国立物理研究所のクロノメーター認定を受けたものだった(それ以前、1928年に行われたオリンピックのアムステルダム大会では、タイムキーパーたちは各々が所有するストップウォッチを使用していた)。
しかし、当時最先端だったオメガのストップウォッチをもってしても、オリンピックで発生する議論を解消しきることはできなかった。5つの異なったレースで、首位と2番手が同じ時間を記録してしまったのだ。もっとも注目を浴びた議論は、100m走のラルフ・メトカルフェ(Ralph Metcalfe)とエディ・トーラン(Thomas Edward "Eddie" Tolan)の間で発生したものだろう。観戦者から見るとメトカルフェが勝利を収めたように見えたが、タイムキーパーが手にしていたストップウォッチでは3人がメトカルフェに対し10.3秒を記録し、トーランに対しては10.3秒が2人、10.4秒が1人であったのだ。結果としてオリンピック初となる「写真判定」に持ち込まれ、その結果、トーランが勝者となった。「クロノシネマ(時系列)」カメラはそれぞれのレースのゴールの瞬間を記録しており、ほぼ1/100秒を記録するために使用されていた。当時適用されていたルールは、選手の上半身が完全にフィニッシュラインを超えているかどうかというものであり、最初に上半身がフィニッシュラインにかかったかどうかというものではなかった。映像を確認した結果、審判たちはメトカルフェより5/100秒先に上半身がゴールを通過していたトーランを勝者とした。
これらの協議は、より正確なストップウォッチの必要性と、どのように勝敗を決するかということの必要性を知らせるものであった。オメガによると、オリンピック競技での時間計測には、オメガによって開発されそれぞれの競技ごとに調整が加えられたスコアボード、ケーブル、オプティカルファイバー、データ解析技術、総重量400トン以上もの器材を駆使する数百人規模のプロフェッショナルなタイムキーパーたちとデータ解析のスタッフ、そしてそれを支える千人規模のボランティアたちが必要であるとのことである。
7)ジェームズ・ボンド
1962年に銀幕へ初めて登場して以来、ジェームズ・ボンドはさまざまなブランドの腕時計を着用してきたが、オメガほど密接に関わっているブランドはないだろう。1995年に公開された『007 ゴールデンアイ』で、ピアース・ブロスナン演じる新しいジェームズ・ボンドがオメガ「シーマスター プロフェッショナル 300M」Ref.2531.80を着用したのがその始まりだ。それ以来、007はオメガを『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』『007 ダイ・アナザー・デイ』『007 カジノ・ロワイヤル』『007 慰めの報酬』『007 スカイフォール』『007 スペクター』などで身に着けてきた。
ジェームズ・ボンド着用腕時計は、オークションにも出品されている。そのうち最も落札額が高かったのは『007 カジノ・ロワイヤル』で着用された時計で、2007年のアンティコルムによる「オメガマニア」オークションにおいて25万250スイスフランで落札された。第2位は『007 スカイ・フォール』で使用されたシーマスター・プラネットオーシャンで、2012年のクリスティーズ「ジェームズ・ボンドの50年」オークションにおいて23万6473スイスフランで落札されている。
他にもオメガの時計は多くの映画の中で見ることができる。『マイレージ、マイライフ』『ソルト』『宇宙戦争』『バウンティー・ハンター』『ライトスタッフ』『イベント・ホライゾン』『ミレニアム』『アウトロー』『エージェント・オブ・シールド』『ローニン』『セブン・イヤーズ・イン・チベット』『ファースト・マン』『元大統領危機一髪』などである。
その中でも、オメガが登場する最も有名な映画は『アポロ13』であろう。映画では、爆発によって宇宙船の酸素と電気供給装置に問題が生じる場面が描かれている。ここでは宇宙飛行士たちが装着するスピードマスターが、無事の地球帰還に重要な役割を果たしたことが伝えられている。限られた燃料確保のため、宇宙船内の電気タイマー(すべての電気系統)を切っていたため、宇宙飛行士たちは、生死を分ける点火(エンジンをスタート・停止させる)時間を計測するのにスピードマスターを頼るのである。宇宙船が跳ね返されたり、燃え尽きることなく大気圏に突入するために、この点火時間は正確かつ適切であることが求められた。スピードマスターは完璧に機能し、宇宙飛行士たちを無事、地球まで送り届けるのであった。
8)ケネディ・コネクション
オメガは世界中の多くの指導者やセレブリティのお気に入りブランドとしてその存在を示してきた。旧ソビエト連邦のミハイル・ゴルバチョフ元大統領はしばしばゴールド製のコンステレーション・マンハッタンと共に写真に撮られている。前述した1995年の映画『元大統領危機一髪』では元アメリカ大統領役をジャック・レモンが演じており、レモンはこの中で着用している時計について「ゴルバチョフから贈られた、コンステレーションだ」と言及している。
ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世はオメガの「デ・ヴィル クラシック」を着用していた。ミュージシャンでは、エルヴィス・プレスリーはドイツでの兵役期間中にオメガを着用しているところを写真に撮られている。他にバディ・ホリーはゴールド製ウルトラシンを、リンゴ・スターはコンステレーションを着用していた。
オメガの所有者として最も有名なのが第35代アメリカ大統領のジョン・F・ケネディだろう。1961年1月の就任式ではオメガを着用していた。その時計はある友人がケネディに大統領選の前に贈ったものである。ケースバックには「President of the United States John F.Kennedy from his friend Grant」と刻まれており、現在はオメガミュージアムに収蔵されている。
9)コーアクシャル脱進機
オメガは創業当初から高精度を追求してきた。追い求めたうちのひとつとして挙げられるのが、摩擦の少ない脱進機である。これを実現すべく、かつて著名な英国人時計師のジョージ・ダニエルズ博士がコーアクシャル脱進機を発明したとき、オメガはこの脱進機を開発し、自社製造で量産するという挑戦に臨んだ。努力の結果、1999年にオメガはコーアクシャルキャリバー2500を発表するに至り、オメガは自社史上最も実用的な時計の脱進機であると誇らしげに謳った。
2007年にオメガは、新しいコーアクシャルキャリバー8500を発表。摩擦係数の低さに加え、振動数を落として振り角を向上させ、より腕時計に向くよう改良したことなど、パフォーマンスの高さについて言及している。加えてこの新しい脱進機は高級時計に好んで採用されるフリースプラング式テンプを取り入れている。なおオメガのC.O.S.C.認定クロノメーターの時計にはすべてこのコーアクシャル脱進機を搭載したムーブメントが採用されている。また2018年7月1日以降に購入されたオメガの腕時計に関しては、5年(それ以前のものは4年)の国際保証も提供される。
10)磁力を克服する
2013年にオメガは、従来の腕時計の耐磁性をはるかに凌ぐ、1万5000ガウスもの磁場に耐えうる「シーマスター アクアテラ 15,000ガウス」を発表した。耐磁性を持つほとんどの時計は軟鉄性のインナーケースを採用し、そこから発せられる電磁気によって耐磁性をもたせるという方式を採用している。オメガのアプローチはムーブメントそのものに鉄由来ではない非磁性の素材を採用するというものであり、インナーケースを廃すと同時に強力な耐磁性を持たせることになった。これにより文字盤にデイト用の開口部を設けることが可能になり、またケースバックをシースルーにすることも可能となった。ムーブメントを覆うインナーケースが不要となったからである。
2015年よりオメガはMETASが認定したテストを導入し、これに合格したムーブメントを「マスター クロノメーター」とする独自の基準を設けた。これは高精度に加えて耐磁性も証明するもので、このマスター クロノメーターを搭載する腕時計として最初にグローブマスターが発表された。
なお、オメガは2020年までに、ほぼすべての機械式時計をマスター クロノメーター認定とすることを目指している。
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