アメリカの時計情報誌WatchTimeは、2019年5月3日よりアメリカ西海岸最大の時計コレクターの祭典である「WatchTimeロサンゼルス」を主催した。ここではバーゼルワールドやSIHH後、アメリカで初披露となったモデルも多い。会場を訪れたWatchTime編集部の目にはどのモデルが留まったのだろうか。27のブランドが出展した中で、クロノグラフモデルに絞って彼らが選んだベスト6選をご紹介する。
クロノスイス
「シリウス クロノグラフ ムーンフェイズ」
クロノスイスのネイビー文字盤を備えた「シリウス クロノグラフ ムーンフェイズ」は、ムーンフェイズとストップウォッチおよびアナログ式デイト表示を組み合わせたモデルである。メインダイアル、スモールダイアルそれぞれにギヨシェ彫りが施され、その外周ではアナログ式のデイト表示が、先端に赤い三日月形を備える針によって表されている。クロノグラフ系のカウンターは、ブレゲ数字のアワーマーカー4箇所に重なるように、30分積算計は12時位置、セコンドカウンターは9時位置、12時間積算計は6時位置というように配置されている。3時位置には月齢を刻むゼロから29.5までの数値と共にムーンフェイズが見て取れる。ラッカー仕上げのブレゲ針は時分を指し、カウンターウェイトに丸型を伴った針はクロノグラフの秒を示している。30分積算計と12時間積算計はホワイトのアルファ型の針が採用され、セコンドカウンターには直線的なニードル針があしらわれた。多くの機構を搭載したこの時計には、ETA7750をベースにした自動巻きキャリバーC.755が搭載されている。なおケースバックはサファイアクリスタル製シースルーバックだ。外装に関しては、直径41mmのステンレススティール製ケースには刻みやポリッシュ、ヘアラインといった仕上げがあしらわれている。クロノグラフのプッシャーや、玉ねぎ型のリュウズも特徴的だ。ストレート型のラグにつながるストラップはルイジアナ産アリゲーターストラップである。
チャペック
「フォーブル・ド・クラコヴィ・タオ」
チェコ生まれのポーランド人である時計師のフランソワ・チャペック。パートナーだったアントワーヌ・ノルベール・ド・パテックとともに立ち上げたブランドを離れた後、彼は1845年に自身の時計ブランドとしてチャペック社を設立した。ポーランドからジュネーブへ移住したチャペックは、まずジュネーブのケ・デ・ベルク、続いてパリのヴァンドーム広場に時計ブティックをオープンし、またナポレオン3世の御用達時計職人となったとも記録が残っている。現在のチャペックは、2015年に時計愛好家たちによって復興された新しいブランドである。復興後に発表された最初のクロノグラフは、フランソワ・チャペックが自身の時計ブティックとしては3番目に構えた、ポーランドの首都ワルシャワのクラクフ通り(フォーブル・ド・クラコヴィ)に因み、「フォーブル・ド・クラコヴィ・ディオネ&レア」と名付けられた。
今作「フォーブル・ド・クラコヴィ・タオ」には新しい解釈を加え、前作のブラックにホワイトという「逆パンダ」仕様から、ホワイトにブラックという「パンダ」文字盤となって発表されている。ステンレススティール製の41.5mmケースのサイドには深い溝が刻まれ、シームレスでフラットなクロノグラフプッシャーと、ブランドロゴがあしらわれたリュウズを備えている。ホワイトのグラン・フー・エナメル文字盤にローマ数字でアワーマーカーが記され、12時位置には鮮やかな赤がアクセントをとして加えられている。コントラストの効いたブラックのサブダイアルに控えめなホワイトでクロノグラフの時・分の積算計が、そしてスモールセコンド、6時位置には小さめのデイト表示が配置されている。2本のロジウム加工を施した「百合の花」の針と、クロノグラフ秒針が文字盤上をすべるように動いていく。搭載されているのは自動巻きキャリバーSXH3で、約65時間のパワーリザーブとサファイアクリスタル製ケースバックから見える22Kゴールド製のローターを備えている。
ドゥ・ベトゥーン
「DB21 マキシクロノ リエディション」
世界限定わずか10本のみが発表されたドゥ・ベトゥーン「DB21 マキシクロノ リエディション」は、2006年に発表されたブランド初のクロノグラフウォッチの新解釈版である。文字盤中央の単一軸から設けられた時針、分針、3本のクロノグラフ系針の5本の針と、それらの針がそれぞれ示すインデックスは非常に前衛的な意匠だ。表示方法はミニマリズムを感じさせるようだが、ムーブメントの構造はむしろ複雑さを極めており、独立した複数のコラムホイールが連動しながら噛み合うように埋め込まれている。6時位置のモノプッシャーを使って、24時間、60分、60秒を刻む帰零機能付きのクロノグラフを駆動させることができる。この簡素化された表示は一瞥しただけでの視認性を高めるだけでなく、一般的なクロノグラフよりも長い24時間までの時間計測を、10分の1秒の精度と共に可能としている。チタンケースに内蔵されるのは、ダブルバレルにより約5日間のパワーリザーブを保持する自社製キャリバーDB2030である。
グランドセイコー
「SBGC230」
グランドセイコーはスプリングドライブの発売20周年を記念して、2019年に24時間針付きのスプリングドライブクロノグラフ(Ref.SBGC230)を発表している。直径44.5mmのローズゴールド製ケースはファセットが施されたデザインで、ブランド独自のザラツ研磨がかけられている。存在感のあるクロノグラフのプッシャーや、ルミブライトでアクセントのつけられた黒色のGMTベゼルも特徴的だ。ダイアル外周にはレーシングスタイルのミニッツトラックが備えられており、それに沿った形で幅広のアワーマーカーが配されている。カーブのついたサファイアクリスタル製風防の下には、クロコダイルレザーストラップと色調を合わせたワインレッドカラーの文字盤がある。文字盤中央にはグランドセイコーのスポーツライン特有であるダイヤモンドシェイプの時分針と、クロノグラフ秒針が備えられる。それ以外の表示では、3時位置に日付表示窓、7時位置にパワーリザーブ表示の他、1時半位置に30分積算計、4時半位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドの3つのサブダイアルが配された。搭載されるのは日差±0.5秒、約72時間のパワーリザーブを保持する自動巻きスプリングドライブ、キャリバー9R96だ。特別調整ムーブメント搭載の証として、サファイアクリスタル製のシースルーバックからのぞく自動巻のローターには18Kゴールド製の獅子のワッペンが輝いている。
モンブラン
「モンブラン ヘリテイジ パルソグラフ リミテッドエディション 100」
モンブランの「モンブラン ヘリテイジ パルソグラフ リミテッドエディション 100」は、医者が患者の脈拍を測る際に使用したパルソメータースケール付きのクロノグラフモデルである。直径40mmのステンレススティール製ケースには、モンブランの自社製モノプッシャークロノグラフ、キャリバーMB M13.21が搭載され、その駆動はシースルーバックから見て取れる。ヴィンテージ感を醸し出すサーモンカラーの文字盤はわずかに膨らみを持つボンベ型をしており、1940年代から50年代に発表されたミネルバのデザインコードを引き継いでいる。なお、伝説的なクロノグラフムーブメントメーカーであるミネルヴァは2006年にリシュモンによって買収され、現在その技術はモンブランに継承されている。文字盤はサテンとサンドブラストの2種類の仕上げが施された上でラッカーを塗布し、アントラシットカラーのアラビア数字と、ドットのアプライドインデックスをあしらっている。それらのインデックスを指すのは、スーパールミノバが塗布されたドーフィン型の時分針と、クロノグラフの青焼きのバトン針だ。なお3時位置のインダイアルは3分、6分、9分の部分が強調されたデザインだが、これはかつてスイスの公衆電話を利用する際にコインを追加投入しなければならない通話時間を示したものであり、レトロ感を増す特徴となっている。世界限定100本で販売された。
ゼニス
「エル・プリメロ A386 リバイバル」
ゼニスの「エル・プリメロ A386 リバイバル」はその名が示すように、1969年に誕生したエル・プリメロのオリジナルモデルを忠実に再現したものである。コラムホイール機構と約50時間パワーリザーブを備えた自動巻きクロノグラフムーブメントは、毎時3万6000振動ものハイビートで10分の1秒までの計測を可能とし、発表当時には時計愛好家たちを大いにうならせた。このリバイバルモデルは機能面と同様に外装に関してもオリジナルモデルを踏襲し、直径38mmのホワイトゴールド製ケースに、美しく湾曲したサファイアクリスタル製風防を備えている。文字にもオリジナルと同じ要素である、3色のサブダイアル(ライトグレーはスモールセコンド、ブルーは分積算計、グレーは時積算計)、タキメーター、そして針とアワーマーカーが見て取れる。ケースバックに関しては、ソリッド式から現代的なシースルーバックへと変更された。なお、ムーブメントには毎時3万6000振動のハイビートとパワーリザーブを継承しながらエル・プリメロを新たにアップデートしたCal.エル・プリメロ 400が搭載されている。