あえて手巻き時計を買うメリットは?/ ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

2024.06.16

Q:あえて手巻き時計を買うメリットは何ですか?

広田雅将

A :ゼンマイを動力源とする機械式時計には、ローターで主ゼンマイを巻き上げる自動巻き時計と、手でゼンマイを巻き上げる手巻き時計のふたつがあります。現在、市場に流通する機械式時計の9割以上が自動巻きと言われており、種類の少ない手巻きをあえて選ぶのは、リュウズを手で巻くこと自体が好きな時計愛好家とみなされています。自動巻きのメリットは、主に

1.毎日ゼンマイを手(=リュウズ)で巻き上げる必要がないこと
2.高性能な自動巻きはいつもゼンマイを巻き上げた状態にあるため、精度が安定すること

のふたつです。一方手巻きは、毎日ゼンマイを巻く必要がありますが、

1.部品点数が少ないため故障が起きにくく、修理費が安い
2.ローターを持たないため時計が薄くなる

などのメリットがあります。

ちなみに時計業界には、日付や曜日表示を付けるのは自動巻き時計という暗黙のルールがあります。これは自動巻き時計ならば、時計を止めてしまうことが少なく、カレンダーを修正する手間が生じにくいからです。もし、日付や曜日表示の付いた手巻き時計を買うならば、金曜日の使用後にしっかりとゼンマイを巻けば、土日の休暇中触らなくても次に着用する月曜日の朝まで止まらない、パワーリザーブが約70時間(≒約3日間)以上あるものを選ぶべきです。


手巻きムーブメント紹介

手巻きムーブメントムーブメントの利点としてあげられるのが、薄型化。オメガではドレスウォッチの「デ・ヴィル トレゾア」が薄型化のために手巻きムーブメントを搭載している。写真は2019年発表モデルで採用された新開発のCal.8910。香箱の真を細くすることで、既存モデルよりも長い主ゼンマイを載せることに成功。結果、パワーリザーブはオメガ最長の約72時間を有する。手巻き。29石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。

2024年、グランドセイコーが新たに発表した、手巻きムーブメントCal.9SA4。同ブランドにとって、手巻きムーブメントの新規開発は約50年ぶりとなる。Cal.9SA5をベースとしており、3万6000振動/時のハイビート、そして約80時間の実用的なパワーリザーブを備えた。さらに特筆すべきは、リュウズを使って主ゼンマイを巻く“巻き心地”のよさを追求するため、退却式のコハゼを新規設計していること。このコハゼがセキレイをモチーフとしているのも面白い。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。

2016年、「メカニズムを見せる」ために開発された、ウブロの手巻きムーブメント「メカ-10(Cal.HUB1201)」。約10日間の超ロングパワーリザーブを有することに加えて、文字盤に配された12時位置のラック&ピニオンと6時位置のパワーリザーブインジケーターが大きな特徴だ。主ゼンマイが巻き上がるとラック&ピニオンはスライドし、さらにパワーリザーブインジケーターで残日数が表示される。この残日数が3日を切ると3時位置に赤いマークが現れる。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約10日間。


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