ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ2017(GPHG2017)でトラベルウォッチ賞を獲得したパルミジャーニ・フルリエの「トリック エミスフェール レトログラード」。なんと幸運なことに、WatchTimeは同モデルを着用しながら、この時計を製造した工房の見学ツアーに参加する機会を得ることに成功した。つまり、パルミジャーニ・ウォッチメイキング・センターと呼ばれる5つの会社を見て回ったのである。
今回は外装編と題し、この5社の中から
・ケースを作る「レ アルティザン ボワティエ(LAB)」
・文字盤製作の「カドランス・エ・アビヤージュ」
の2社を紹介していこう。なお、残りの3社については「高級時計が製造されるまで〜パルミジャーニ・フルリエを支える5つの工房〜(ムーブメント編)」にて取り上げる。
https://www.webchronos.net/features/37951/
text by Mark Bernardo
パルミジャーニ・フルリエの外装を支える2社
GPHG2017においてトラベルウォッチ賞を獲得。自動巻き(Cal.PF317)。28石。2万8800振動。パワーリザーブ約50時間。18KRG(直径42.8mm、厚さ11.9mm)。30m防水。310万円(税別)。
垂直統合型のマニュファクチュール
WatchTimeでは記事作成のために時計を手に取り、また実際に多くの時計工場や工房を訪ねる。しかし、時計作りにおけるオスカー賞とも言うべきGPHGを獲得したタイムピースを実際に着用し、さらにスイスを訪れ、さまざまな要素が見えてくる工房取材の機会を得ることは非常にまれである。
だが幸運なことに、そのような機会をバーゼルワールド2019が終わった直後に得た。トリック エミスフェール レトログラードを着用して、1996年にミシェル・パルミジャーニによって創業されたパルミジャーニ・フルリエというブランドを知るためのツアーに参加することになったのだ。
つまり、パルミジャーニ・フルリエを垂直統合型のマニュファクチュールにすべく、サンド・ファミリー財団によって20年という比較的短い期間で集められた5つの関連会社を巡ったのである。なお、パルミジャーニ・フルリエの本社を合わせて、これら6社はパルミジャーニ・ウォッチメイキング・センターとして知られる。
黄金律を用いたトリック エミスフェール レトログラード
トリックはパルミジャーニ・フルリエのファーストコレクションとして発表。一時期はカタログから落ちていたが、2017年に「トリック クロノメーター」で復活を遂げ、現在は同社の基幹コレクションとして展開されている。
今回の着用モデルであるトリック エミスフェール レトログラードのデザインは、アンティークウォッチの修復師としてキャリアをスタートさせたミシェル・パルミジャーニがデザインした、最初の腕時計にある。
建築家を志していたミシェル・パルミジャーニの時計デザインに欠かせない黄金律は、トリック エミスフェール レトログラードの18Kローズゴールド製ケースにも見て取ることができる。
優美に刻みのついたベゼルはローマやギリシャの列柱を思わせる。ケースは42.8mm径で、きらりと輝くポリッシュ仕上げが、人間工学にのっとってカーブした表面のアクセントとなっている。そこから傾斜したティアドロップ型のラグへとつながり、ストラップによって手首のカーブになじむのである。