ジョージ・カーンのCEO就任から約3年を経て、主力カテゴリーであるパイロットモデルの拡充を図るブライトリング。クラシカルな風情を残す「アビエーター8」「 ナビタイマー」に続く3本目の柱となるのは、エアカテゴリーのヘビーデューティーモデルとして新生した「アベンジャー」。プライスレンジはミドルレンジに留まるものの、完全刷新されたディテールの上質感はハイレベルだ。
鈴木裕之:取材・文 Text by Hiroyuki Suzuki
前作アベンジャーⅡのサイズ感を受け継ぐ43mmケース。装着感は極めて良好だ。自動巻き(Cal.13)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。C.O.S.C.公認クロノメーター。SS(直径43mm、厚さ16.43mm)。300m防水。60万8000円。
(右)アベンジャー クロノグラフ 45 ナイトミッション
DLC加工された漆黒のTiケースを持つナイトミッション。自動巻き(Cal.13)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。C.O.S.C.公認クロノメーター。Ti+DLCコーティング(直径45mm、厚さ16.46mm)。300m防水。64万6000円。
NEW AVENGER:Details
2019年9月にアメリカ西海岸のビバリーヒルズで開催された3回目のブライトリングサミット。ジョージ・カーンのCEO就任以降、18年からスタートしたこのイベントは、バーゼルワールドに向けたプレ発表会であると同時に、ブライトリングの世界観を体感できるステージとして好評を博してきた。バーゼルワールドの会期変更に伴い、2020年の不参加を表明している同社だけに、今後はこのサミットが新作発表のメインステージとなってゆく。その先駆けというわけではないが、19年のサミットでも魅力的なニューコレクションがお披露目された。8年振りのフルリニューアルを遂げた「アベンジャー」だ。
まず最初に新生アベンジャーのキャラクター性から説明しておこう。2001年に誕生したファーストアベンジャーは、ナビタイマー、クロノマットに次ぐ、ヘビーデューティーウォッチという位置付けだった。誤解を恐れずに言えば、ミドルレンジカテゴリーのオールマイティモデルだ。しかしカーン体制以降、ブライトリングの主要キャラクターを牽引してきたクロノマットがランドカテゴリーに編入され、主力であるべきエアカテゴリーは現在まで、ナビタイマーとアビエーター8の2枚看板とされてきた。そこに新生アベンジャーが加わることで、名実共に同社で最もヘビーデューティーなパイロットウォッチとなったのである。09年に自社製ムーブメントのキャリバー01がクロノマットに搭載されると同時に、大幅なデザインアレンジが加えられて以降は、ライダータブを装備するモデルとしても人気を博してきたアベンジャーだけに、ようやく第一線の仲間入りといった感も強い。もちろん、ヘビーデューティークロノグラフとして磨き上げられてきたケースの堅牢さと、人間工学的なアプローチで成し遂げられた優れた装着感は健在だ。
歴代アベンジャーをケース径の変遷で見てみると、2001年のファーストアベンジャーが直径45㎜、13年のアベンジャーⅡでは直径43㎜が主力となって、同時に最大径となる直径48㎜のスーパーアベンジャーが追加されている。新生アベンジャーでは全14リファレンスにまでラインナップを絞り込んでいるものの、43㎜/45㎜/48㎜の3サイズが同時に揃うことも特徴だ。そのうち45㎜/43㎜には3針オートマティックも用意されている。ディテール面では、逆回転防止ベゼルに施されたミニッツマーカーが、アベンジャーⅡでの5分刻みのアラビックから、ファーストと同様のバーに戻されている。アラビア数字が刻まれるのはクォーターポジションにある一体型ライダータブ上のみとなり、より精悍さが増した印象だ。もちろん歴代機と比較しても、エッジ処理の精度が上がり、より現代的なカッチリ感を持ち合わせている。こうした細かなリニューアルは多岐にわたり、例えばクロノマットが装着するパイロットブレスレット用のバックルは、セイフティロックがクラスプとツライチに刷新されたことで、より上質感が向上している。それと同じ仕様がアベンジャー用の3連プロフェッショナルブレスレットにも使用されているのだ。
ミドルレンジに十分留まるプライスレンジをキープしながら、全体的な質感を向上させた新生アベンジャー。タフウォッチを求めるスポーツユーザーにとっても、練り上げられたディテールが織りなす、この上質感は大きな魅力だ。