カルティエの時計の魅力を探る。主要コレクションや人気モデル紹介

FEATUREその他
2023.05.10

カルティエの代表コレクション

カルティエの腕時計には、いくつかのコレクションがラインナップされている。そのなかで、代表的なものを見てみよう。

サントス ドゥ カルティエ

サントス ドゥ カルティエ

Vincent Wulveryck, Collection Cartier © Cartier
ブラジル人飛行家であるアルベルト・サントス=デュモンが友人であったルイ・カルティエに依頼し、誕生したモデル「サントス ドゥ カルティエ」。ストラップのアタッチメントがケースと一体化した初の腕時計である。1904年にプロトタイプが完成し、11年に市場に登場したこのモデルは100年を超える歴史を持つ。写真は12年、カルティエ パリで製作されたモデル。イエローゴールドケース。

前述のように、3代目当主のルイ・カルティエが、ブラジルの飛行家であったアルベルト・サントス=デュモンの依頼で開発したモデルが「サントス」だ。1904年にプロトタイプが完成したとされ、11年に市販第1号が世に送り出された。そしていまなおカルティエを代表する傑作として名高い。

飛行中でも容易に時間を確認できる時計が欲しいという希望に応えた同モデルだけに、飛行機にちなんだベゼルのデザインになっている。ボディーのパーツを繋ぎとめるビスに着想を得たデザインだ。

角にカーブをつけたスクエアケースも、サントスの特徴のひとつである。誕生から100年以上も経過しているとは思えない、完成された名作といえる。

タンク

タンク

Vincent Wulveryck, Collection Cartier © Cartier
1917年にプロトタイプが製作された「タンク」。写真は20年製造の初期モデル。

「サントス」と並ぶカルティエのフラッグシップモデルといえば、1919年に発表された「タンク」だろう。こちらも人気の高いコレクションのひとつだ。

デザインのモチーフとなったのは、フランス軍の戦車「ルノー FT-17軽戦車」である。第1次世界大戦下において、パリを占領していたドイツ軍を蹴散らしたことで名高いルノー社の戦車がベースとなっている。

同モデルが瞬く間に人気を得た背景には、終戦がある。パリに平和とともに活気と華やかさが戻り、人々はファッションを楽しむ余裕を手に入れた。そんな時代とマッチして、発売以来、常に高い人気を誇っている。

パシャ ドゥ カルティエ

パシャ ドゥ カルティエ

Raymond Meyer © Cartier
2020年に現代的なアップデートを施された「パシャ ドゥ カルティエ」。

カルティエの腕時計を語る上で、欠かせないコレクションが「パシャ」だ。

コレクション名の「パシャ」は、太守や高官を意味する。マラケシュ(モロッコ)の太守エル・ジャヴィ公から出されたルイ・カルティエへの要請は「泳ぎながらも着けておける時計」。1943年のことであった。

この時、ルイが製作した腕時計がパシャのルーツであり、ホールド感、防水性などに工夫を重ね、1985年から現在の姿でラインナップに加えられた。

バロン ブルー ドゥ カルティエ

バロン ブルー ドゥ カルティエ

© Cartier
2021年にコレクションに追加されたケース径40mm「バロン ブルー ドゥ カルティエ」。自動巻き(Cal.1847 MC)。SS(直径40mm)。(左)67万6500円(税込み)。(右)73万1500円(税込み)。

カルティエの腕時計コレクションにあって、ユニークなポジションにあるものが「バロン ブルー」だろう。2007年に登場し、青い風船を意味するフランス語を名前に冠したこのモデルはフェミニンな印象をたたえている。

ボディー全体が丸みを帯びた形状で、本体に埋め込まれるようにデザインされたリュウズも特徴だ。全体的に“丸”や“球”を彷彿とさせ「風船」というネーミングも納得だ。

カルティエらしいオーセンティックな雰囲気に前衛的なワンポイントを加えながらも、奇をてらった印象は与えない。このあたりのデザイン力に、カルティエの自信がうかがえる。


腕時計の選び方

多数のコレクションの中から、ベストな一品を選ぶことはとても難しい。ビジネスの最前線で共に戦い、プライベートでも寄り添ってくれる、そんな時計をパートナーに、共に人生を歩んで行きたいものだ。

数あるモデルから最適な1本を見つけ出すために、知っておくべき方法がある。自分にマッチする高級腕時計を見つけるためのポイントについて押さえておこう。

用途やシーン

「一生をともにできる高級腕時計を手に入れよう」。そう思う時期が人生で何度か訪れるものだ。子供が独り立ちし、経済的・時間的余裕ができた時などがそうかもしれない。

ゴルフやテニスなどの時間も過ごすなら、落ち着きとスポーティーさを兼ね備えたデザインが適している。旅をする機会が多いなら高い防水性能を備えていると使い勝手が良い。

カジュアルなライフスタイルが中心となるならば、用途やシーンを明確にイメージしておくことが肝要だろう。ブレスレットタイプが軽快な印象になりおすすめだ。

ムーブメントや機能

腕時計の動力であるムーブメントの種類も意識しておきたい。ムーブメントとは動きや運動、動作などを意味する言葉であるが、腕時計を作動させている機構のことでもある。

ムーブメントには手巻き・自動巻き・クォーツといった種類があるのは周知のとおりだ。それぞれに特徴があり、時計ファンにとっては、その違いもまた重要なポイントだ。

そしてもうひとつ重要な点が機能。クロノグラフ、ワールドタイム、パーペチュアルカレンダーなど、どんな機能を装備しているかも時計の魅力を語る上では欠かせない。

ただ日々の使い勝手のベースになるのは「見やすさ」だ。基本的なことだが、デザインなどに目が行きがちなため、留意しておきたい。

視認性が低いものを選んでしまうと、少しずつフラストレーションがたまり、いつしか引き出しにしまいっぱなし、となることも。見やすさは、時計選びの基本であることを肝に銘じておきたい。


おすすめのメンズモデル

カルティエの歴史や特徴、そして代表的なコレクションなどを見てきた。そこに、女性らしさやユニセックスの傾向を見出した向きもあるだろう。

しかし、現代のカルティエの各コレクションには、男性をターゲットとしたモデルが多数ラインナップされている。そのなかから人気のタイプを紹介しよう。

タンク ルイ カルティエ

タンク ルイ カルティエ

© Cartier
「タンク」が誕生した当時のスタイルを踏襲し、「タンク」を創出した三代目当主の名前を冠する「タンク ルイ カルティエ」。手巻き(Cal.8971 MC)。18KPG(縦33.7×横25.5mm、厚さ6.6mm)。日常生活防水。149万1600円(税込み)。

カルティエを代表する「タンク」コレクションからは「タンク ルイ カルティエ」を紹介したい。製作を担ったルイ・カルティエ自身が愛用していたことでも知られる、いわば「タンク」の原点ともいえるモデル。

長方形のフォルムをベースとしながら、大胆なラインを有し、ラウンドしたケースコーナーで個性を主張する。リュウズ先端のサファイアがカボションカットされ、漂う気品はいかにもカルティエらしい。

サントス デュモン

サントス デュモン

© Cartier
1904年の誕生のころのスタイルを色濃く残す「サントス デュモン」。厚さは7.5mmと装着感もよく、シチュエーションを選ばないスタイルを持つ。サイズはSM、LM、XLがそろい、ムーブメントはサイズにより手巻きとクォーツの2タイプがラインナップ。手巻き(Cal.430MC)。SS(縦46.6×横33.9mm)。日常生活防水。68万2000円(税込み)。

ブラジル人飛行家のサントス=デュモンの要請を受けて製造された初代「サントス」の意匠を継承する「サントス デュモン」。サントスの依頼が、世界初の腕時計を誕生させたのは前述の通りだ。

飛行機本体に使用されるビスに着想を得たデザインは、幾何学的なフォルムとなっている。斬新さと実用性を高度に融合させた本モデルは、瞬く間にヒットし、カルティエのアイコンとなった。

ドライブ ドゥ カルティエ

ドライブ ドゥ カルティエ

Photo 2000 © Cartier
12時位置にデイト表示、レトログラード式の2タイムゾーンとデイデイト表示を備えた「ドライブ ドゥ カルティエ」。グラフィカルなデイデイト表示に独創性が感じられる。自動巻き(Cal.1904 FU-MC)。SS(縦40×横41mm、厚さ12.63mm)。日常生活防水。106万9200円(税込み)。

前衛さがカルティエらしさを感じさせるスタイリッシュなモデル「ドライブ ドゥ カルティエ」も、ぜひ手にしてほしい名作だ。1930年代のトレンドであったクッションケースをアレンジ。美しいカーブを持つ薄型ケースに仕上げた。2016年に登場したコレクションは男性らしい力強さを感じさせつつ、エレガントなテイストに満ちた時計である。

視認性の高い盤面からは、自信に満ちたカルティエの圧倒的な存在感が放たれている。2針モデル、スモールセコンドモデル、ムーンフェイズ、レトログラード、トゥールビヨンなど搭載される機構も多彩にそろう。