Q:ムーブメントの仕上げとはなんですか?
A :時計愛好家が好む話題のひとつが、ムーブメントの仕上げです。仕上げには、時計の性能を改善するためのものと、見た目を改善するためのものの2種類があり、仕上げのレベルは価格によって変わります。同じように見える機械式時計の価格が大きく違う一因は、仕上げが違うため、と言えるでしょう。
1.時計の性能を改善するための仕上げ
機械式やクォーツ式を含むすべてのアナログ時計は、歯車の回転で時計を動かします。歯車の抵抗が減るほど駆動ロスが減るため、時計メーカーはできるだけ抵抗の小さい歯車を採用するほか、歯車を磨いて、いっそう抵抗を減らしています。また、機械式時計の心臓部であるテンワも、重さのバランスを取るために磨いたり、削ったりする場合があります。
今やムーブメントの見た目がきれいな時計が増えてきましたが、こういった部品を仕上げていなければ、性能の改善は見込めません。逆に歯車などを磨いているのに、あえて見た目を仕上げていないムーブメントもあります。そういった例には、ひと昔前のソ連や日本製のムーブメントがあります。こういったムーブメントは、見た目のためではなく、性能を良くするためにコストをかけた、と言えるでしょう。
なお数十万円以上の自社製ムーブメントは、見た目だけでなく、機能部品も仕上げてある場合が多いです。数百万を超えるムーブメントは、例外なく機能部品も仕上げている、と考えていいでしょう。
2.見た目を改善するための仕上げ
一般的に言われるムーブメントの仕上げとは、見た目を改善するための装飾を指します。例えば、ムーブメントの受けや地板に対する仕上げが該当します。きれいに仕上げてもムーブメントの性能は変わりませんが、今や多くのムーブメントが、波模様の「ジュネーブ仕上げ」や、ウロコ模様の「ペルラージュ仕上げ」を持つようになりました。
ただし、同じように見えるジュネーブ仕上げでも、機械で強く模様をつけたものと、手作業で弱く模様を着けたものでは見た目もコストも違います。ペルラージュも同様で、丸い模様を大きくつけたものと、小さな模様を細かく重ねたものとでは、やはり見た目とコストが変わります。
なお、工業的に作られたムーブメントの多くは、見えるところにのみ仕上げを施しています。価格が上がると見えない部分にも仕上げが施されるようになり、値段が上がるほど、そのレベルが上がっていく、と考えていいでしょう。
仕上げの良い時計一例
もちろん、値段が上がるほど、性能を改善するための仕上げのレベルも高くなります。現行品で、仕上げが良いと言われるムーブメント(3針に限る)を作るメーカーには、以下のものが挙げられます。
・モリッツ・グロスマン
・ショパールのL.U.C(とりわけカリテ・フルリエとジュネーブシール付き)
・ツァイトヴィンケル
・ヴティライネン
・アトリエ・ド・クロノメトリー
・アクリビア
など。パテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ ピゲ、ブレゲ、A.ランゲ&ゾーネなどのハイエンドモデルも非常に優れた仕上げを持っていますが、入手は極めて難しいです。