種類①クォーツ式時計の特徴
機械式とクォーツ式の時計には、具体的にどのような違いがあるのだろうか。まずは、クォーツ式の特徴から見てみよう。
クォーツ式の仕組み
クォーツ式は電池を動力とする時計のひとつだ。発明は1927年。この当時はサイズが大きく、やがてセイコーが小型化に成功。1969年、同社による世界初の市販クォーツ腕時計「セイコー クオーツアストロン 35SQ」が発売された。
クォーツ式腕時計は発売当初こそ高額だったが、1970年代半ばになると大量生産による普及価格を実現し、世界の時計市場を席巻。これに伴って、老舗の機械式メーカーが大打撃を受けたことから「クォーツショック」あるいは「クォーツ革命」と呼ばれることもある。
そんなクォーツ式腕時計の仕組みを解説する。針を動かすのは、ステップモーターである。そして、電圧印加することで振動する水晶振動子によって、時計に正確さがもたらされている。水晶振動子は、1秒間に、実に数万回の振動数を実現する。この振動をステップモーターが、1秒ごとの電気信号に変換して、正確に針を動かすのだ。
クォーツ式のメリット
ムーブメントの厚さがわずか1mmを実現した、“極薄”のエコドライブ ワン。光発電式アナログクォーツウォッチでは、世界最薄となる。光発電エコ・ドライブ(Cal.8845)。⽉差±15 秒。SSケース(直径36.6mm、厚さ4.5mm)。⽇常⽣活防⽔。35万2000円(税込み)。(問)シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807
クォーツ式のメリットは、なんといってもその高い精度にある。たとえ安価な時計であっても、精度は通常、月差が15~30秒程度だ。一般的な機械式時計の精度が「日差」で表されることを考えると、クォーツ式時計のメリットがよく見えてくるであろう。なお、高精度クォーツ式モデルであれば、年差数秒の範囲で納まるほど正確である。
クォーツ式は、電池寿命の長さも魅力だ。現在では優に5年以上電池を交換する必要がないモデルも多数リリースされていて、利便性の高さと大きな安心感を生み出している。
さらに日本の技術は、電池の性能を向上させるため、太陽電池を備えた「光発電クォーツ」を確立させた。光発電クォーツは光を受電することでエネルギーに変換するため、光がある環境ならば、半永久的に動き続けるのだ。
加えてクォーツ式には、磁気や衝撃、振動からの影響を受けにくいという性質も備えている。磁気によって精度が低くなったりする可能性が少なく、仮に止まっても磁気から遠ざければまた正常に作動することがほとんどだ。
こういった実用面のみならず、構造がシンプルであるためケースを薄く設計しやすく、ドレッシーな意匠を備えやすいというのも特筆すべき点である。
クォーツ式のデメリット
高精度のクォーツ式だがデメリットもある。そのひとつが、機械式時計に比べてトルクが弱い点だ。
パワーが十分ではないため、機械式と比べるとクォーツ式の多くは力強い針や、複雑な機能を搭載することが難しいのだ。もちろん前述した、ケースを薄くできることにもつながるのだが、多機能化できないことへの代償でもある。
しかし、日本のメーカーを中心として、クォーツ式のデメリットをカバーしていこうという数多くの試みがある。機械式ムーブメントに負けない強いトルクを生み出すクォーツが誕生しているのだ。
もうひとつの弱点として、安価なクォーツ式時計だと、分解できる構造になっておらず、修理が困難な場合がある、ということだ。とはいえ高級クォーツ式腕時計などであれば、機械式同様にオーバーホールによって末長く愛用できる。
ふたつ挙げたデメリットは「モデルによる」と言える。
2018年、グランドセイコーの“究極”のクォーツである9Fムーブメント誕生25周年を記念して開発されたCal.9F86搭載モデル。「4軸独立ガイド構造」により4本の針は互いに干渉することなくなめらかに動き、時差の修正では時計を止めずに時針のみ独立して行える。クォーツ(Cal.9F86)。年差±10秒。SSケース(直径40mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。38万5000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー)Tel.0120-302-617
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種類②機械式時計の特徴〜手巻き〜
自動巻きと比べると手巻き式時計はニッチで、選択肢が限られてしまう側面もある。そんな中、手巻き式時計を抑えた価格で提供する稀有なブランドがノモス グラスヒュッテだ。定番モデル「タンジェント」も手巻きの機械式ムーブメントを搭載する。手巻き(Cal.アルファ)。17石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。SSケース(直径35mm、厚さ6.2mm)。3気圧防水。27万5000円(ソリッドバックの場合、税込み)。(問)大沢商会 Tel.03-3527-2682
機械式時計に魅せられる人は多い。多数の細かな部品が精巧に組み立てられ、規則正しい動きで時を刻む様子に、ノスタルジーやロマンを感じる人もいるだろう。
その機械式には、手巻きと自動巻きの2種類がある。それぞれについて細かく説明しよう。
手巻き式の仕組み
機械式時計の動力は主ゼンマイであり、複数の部品が精密に絡み合うことによって作動する、極めて繊細な時計である。緻密な設計と複雑な構造からなる、精密機器としての一面を持つ。
一般的に機械式は、香箱車・2番車・3番車・4番車・ガンキ車・アンクル・テンプ・ヒゲゼンマイといった部品で構成されている。これらが正確に連動して針を作動させることで、機械式時計は時を刻んでいく。
手巻き式のメリット
ケース厚わずか6.79mmに抑えられた、ヴァシュロン・コンスタンタンを代表するドレスウォッチ「パトリモニー・マニュアルワインディング」。手巻き(Cal.1400)。20石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KPGケース(直径40mm、厚さ6.79mm)。3気圧防水。314万6000円(税込み)。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755
時計を動かす動力である主ゼンマイを、手動で巻き上げるタイプが手巻き時計だ。自動巻き時計、クォーツ式と比べて、最も古くから用いられている駆動方式である。
そのメリットは、自らの手でリュウズを使って主ゼンマイを巻くことで時計に動力を与え、精密機械に命を吹き込めるという喜びだろう。
日々の定期的な巻き上げが必要となることからも分かるように、手をかけるほどに深い愛着が湧くのが手巻き時計の魅力といえるだろう。
また、後述する自動巻き時計と比べるとローターを持たない分構造がシンプルで、薄型化しやすく、メンテナンス費用も抑えられる傾向にある。
手巻き式のデメリット
手巻き式は放置しておくと針が止まってしまうのが弱点。パワーリザーブ(持続時間)にもよるが、時間を確認しようと思った時に作動していないようなことも十分にあり得る。とはいえロングパワーリザーブを備えた、実用的な手巻きモデルもラインナップされている。
パワーリザーブ約192時間(約8日間)を備えたモデル。パワーリザーブインジケーターを備えているため、主ゼンマイの残量がすぐに判別できる。手巻き(Cal.59800)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約192時間。SSケース(直径45mm、厚さ13.1mm)。3気圧防水。192万5000円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868
また、モデルによって、ベストな巻き上げ方法が異なる点も、ある意味では面倒かもしれない。パーツの大きさなどが違えば主ゼンマイのサイズも異なり、適切な巻き上げ方にも微妙な違いが生まれるのである。
無理が生じると主ゼンマイが切断されてしまう場合もあるので、ゆっくりと大きく巻いて、優しく丁寧に取り扱うことが望まれる。
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種類③機械式時計の特徴〜自動巻き〜
手巻きに対するもうひとつの機械式時計が自動巻きだ。自動とはいえ、もちろん電池は使用していない。ここでは自動巻き時計の仕組みやメリット・デメリットなどについて解説していこう。
自動巻き式の仕組み
自社製のCal.01を搭載した、ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」。ブランドロゴが刻印された部分が、自動巻きの機構をつかさどるローターとなる。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.6mm)。3気圧防水。124万3000円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.03-3436-0011
自動巻きの時計は、内蔵されているローターが腕の動きに合わせて回転することで、リュウズを使わず自動的に主ゼンマイを巻き上げる仕組みだ。
ローター・切り替え車・伝え車・減速車・減速中間車・各穴車・香箱真・ゼンマイといったパーツの順に、腕の動きによる力が伝達されていく。
手にした時計が自動巻きか手巻きかを知りたければ、文字盤や裏蓋などを見てみよう。自動巻きの時計には「Automatic(オートマティック)」の文字が記載されていることが多い。また、裏蓋がシースルーであれば、ローターを確認できるだろう。
自動巻きのメリット
自動巻きの時計は、手巻き時計同様に電池がいらず、かつ一定時間装着していれば時計が止まらずに動き続ける点が大きなメリットである。
ムーブメントに搭載されたローターの働きで、いちいちリュウズを使って手で巻きあげなくとも、手首に着用しているだけで動力が生み出される。時計を毎日身に着けるユーザーに適した駆動方式といえるだろう。
さらに、着用している限り常に主ゼンマイを巻き上げるので、伝わるトルクが安定して精度を保ってくれるのも大きな利点だ。
自動巻きのデメリット
自動巻きでありながら、ケース厚わずか6.4mmに抑えた、ブルガリの“極薄”時計「オクト フィニッシモ オートマティック」。自動巻き(Cal.BVL 138)。36石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40mm、厚さ6.4mm)。100m防水。198万円(税込み)。(問)ブルガリ ジャパン Tel.0120-030-142
基本的に自動巻き式は、手巻き式の機構に自動巻きの機構を付加したもの。したがって、手巻き式と比べると、どうしても時計本体の厚みが増してしまうことになる。もっとも、技術が進化するにつれてこの点は解消されつつあり、最近では自動巻きでも薄型化を実現したモデルも登場している。
また、手巻き式にも言えることだが、クォーツ式とは異なり、長時間放置しておくと止まってしまう。さらにクォーツ時計のような高精度は望めず、1日に数秒の誤差が生じることも。極めて正確な時間にこだわる人にとっては、気になる点かもしれない。
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