腕時計とスマートウォッチの間を埋めるフォッシルの「ハイブリッドHR」

GPS非搭載でも必要十分な機能性

 Apple Watchに代表される高機能スマートウォッチはGPSを備えるものが大多数だが、GPSの追跡には電力消費が伴う。電子ペーパーとアナログ指針により、基本機能の電力消費を抑えている本機の特徴を生かす図もあるのだろう。本機にはGPSが搭載されていないのだ。

 また、アクティビティトラッキングや前述の通知機能などの代表的なスマートウォッチ向け機能は標準で搭載されているものの、アプリケーションの追加インストール行うことができない。

 さらに通知を受けることは可能だが、受けた通知に対して返信することも不可能だ(高機能スマートウォッチの多くは音声テキスト変換機能を有する)。

 とはいえ、多くのユーザーにとって、これは大きな問題ではないだろう。確実に時を知り、必要な通知を受けとり、その概要を電子ペーパーで確認することができれば、スマートウォッチの役割の半分は満たしてくれるからだ。

ハイブリッドHR

GPSこそ搭載していないが、活動量計としては必要十分な印象。歩数や心拍数から消費カロリーを割り出すことができる上、睡眠の質に関してもトラッキングが可能だ。しかしケースは3気圧防水しかないため、大量の汗をかくような運動時の着用は避けたいところ。

 そしてスマートフォンに収録された音楽を再生するリモコン、睡眠追跡、常時心拍モニター、活動量計等の機能を備え、ランニングやウォーキングなど基本的なワークアウト計測にも対応する。

 前述のようにGPSは搭載しないため、屋外ランニングなどで正確な距離計測やルート記録などは行えないが、日々のワークアウトの記録や心拍数、おおまかなペースのチェック程度ならば充分に使える。

 このように基本的なスマートウォッチ属性を備える一方で、電子ペーパーの落ち着いた盤面表示をカスタマイズできることは素直に魅力だ。盤面にはカレンダー、天候と気温、他地域の時刻、心拍数、歩数などを表示可能で、クロノグラフのインダイアル風にスピンドルを配置するなどいくつかのデザインを選ぶこともできる。

ハイブリッドHR

ハイブリッドHRでは今後、バリエーションを拡大していく予定。3月にはダイバーズウォッチを連想させるような60分スケールが与えられた“回転ベゼル風”デザインを持つ、よりスポーティーなモデルが発売される予定だ。

 腕時計然としたフェイスや電子ペーパーならではの落ち着いた風合い、レイヤー化された盤面デザインは、まさに“正統進化型腕時計”。そのバッテリー持続時間なども考慮するならば、あえてこの製品を積極的に選ぶ理由もあるだろう。

 冒頭でも紹介したように、フォッシルは今後、スポーツ色の濃いモデルを追加予定だが、このシステムをベースに彼らが契約するファッションブランドから、さらに多様なバリエーションが登場することにも期待したい。

 ファッションと機能性の融合にこそ、ハイブリッドHRの良さを生かせるスペースがあると思う。

本田雅一
本田雅一(ほんだ・まさかず)
テクノロジージャーナリスト、オーディオ・ビジュアル評論家、商品企画・開発コンサルタント。1990年代初頭よりパソコン、IT、ネットワークサービスなどへの評論やコラムなどを執筆。現在はメーカーなどのアドバイザーを務めるほか、オーディオ・ビジュアル評論家としても活躍する。主な執筆先には、東洋経済オンラインなど。


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