レギュレーター式ダイアルの腕時計を多数発表し揺るがぬ地位を築いてきた、ルツェルンに本拠を置く時計ブランド、クロノスイス。近年発表されたフライング・レギュレーターシリーズの中でも特に目を引くのが「フライング・レギュレーター ナイトアンドデイ」だ。3時位置の湾曲したデイト表示、6時位置のじょうご状のスモールセコンドに加え、9時位置に昼と夜を示すドームディスプレイを組み込んだモデルである。今回は、このモデルの中で最もエレガントであろう18Kレッドゴールドモデルの着用レビューをお届けする。
Text by Mark Bernardo
外観
レギュレーターダイアルに不慣れな人には、時・分を独立表示するスタイルの文字盤から時間を瞬時に読み取るのは、はじめのうちは難易度が高く感じられるかもしれない。しかしレギュレーターに慣れて直感的に読み取れるようになった人、そして私のようにレギュレータースタイルを好む人にとって、「フライング・レギュレーター ナイトアンドデイ」は魅力的でエレガントな相棒となり得るだろう。2018年にこの時計は、優れたプロダクトデザインに対して贈られる国際的なレッド・ドット・デザイン賞(red dot design award)を受賞している。
18Kレッドゴールド製のケースは16点のパーツからなり、ベゼルとラグ、そしてラグとレザーストラップを留めるネジ山には鏡面仕上げが施されている。対してミドルケースとサファイアクリスタルを中央に備えるケースバックはサテン仕上げだ。コインエッジベゼルと、つかみやすく操作性の良いオニオン型の大きなリュウズはクロノスイスの特徴である。直径41mmに対し厚さは13.85mm、すらりとした佇まいだ。
文字盤はガルバニック加工を施したブラックカラーで、レッドゴールドとエレガントな組み合わせだ。センターの分針と12時位置のサブダイアルに配された時針はリーフ状で、ゴールドプレーテッドの中央にスーパールミノバが塗布されている。対して6時位置のスモールセコンドの針は蓄光処理がない。よって暗所での時分針は確認しやすいが、秒針は見つけにくいだろう。
12時位置、6時位置のサブダイアルはいずれもじょうご状。これはクロノスイスのフライング・レギュレーター文字盤の特徴であると同時に、印象的な3D効果を演出している。ネジ留めされたゴールド製の支柱は文字盤の層を安定させるものだ。視認性に貢献するものではないが、ケースから文字盤、ムーブメントまで、フライングレギュレーターの構造の複雑さを視覚的に思い出させる役割を果たしている。「フライング・レギュレーター ナイトアンドデイ」の名称をもたらした9時位置の昼夜表示は時間・カレンダーと連動して回転するチタン製の球体だ。日中は青空を表すブルーカラーが表示され、夜が近付くにつれ蓄光塗料が塗布されたイエローの星が半円状の開口部に現れてくる。一瞥するとこの表示はムーンフェイズ表示のように見えるが、日常使いという観点から見ると間違いなくそれより役に立つものとなっている。特に時計の時刻合わせをする際、午前と午後が一目で認識できるからだ。
ムーブメント
サテン仕上げのねじ込み式ケースバックは、サファイアクリスタルを通してフライングレギュレーターの内部構造が鑑賞できるようになっている。搭載する自動巻きキャリバーC.296は、スケルトン加工を施しボールベアリングを使用したローズゴールド製のローターを備える。ムーブメントはベースにETA 2895を使用し、そこにレギュレーター表示と昼夜表示を司る自社開発モジュールを組み合わせている。ローターの奥にはペルラージュで装飾された地板とブリッジ、そして毎時2万8800振動のテンプを見ることができる。アンクル、テンプ、ネジにはすべてポリッシュ仕上げが施されている。ムーブメントは、27石、ヴィッカーズ硬さ380で帯磁性、腐食性に優れたグルシデュール製テンワ、ニヴァロックス製ヒゲゼンマイ、インカブロック耐震装置などを備える。パワーリザーブは完全巻き上げから約42時間、つまり昼夜表示が2回転するだけの長さを保持する。
外装
ゴールドのステッチが華やかなシャイニーブラックのアリゲーターストラップが、全体の色調を整えている。留め具は18Kローズゴールド製尾錠で、表面はポリッシュ仕上げが施され、クロノスイスのブランド名がエングレービングされている。全体の印象としては、レッドゴールドとブラックの要素が相まって、カジュアルテイストよりもドレッシーな装いにしっくりとくるであろう。18Kレッドゴールドケースの採用にも関わらず、重すぎず手首での装着感は良い。少し珍しいレギュレーター式腕時計は昼夜を問わずさまざまな社交の場で会話の糸口となること請け合いだ。
Contact info: 栄光時計 Tel.03-3837-0783