国内最高峰の時計ブランドとして知られるグランドセイコーの歴史は、時計王国スイスに立ち向かうところから始まった。今日の地位を確立するまでの歩みを知れば、グランドセイコーに対する興味がより強まるだろう。
グランドセイコーとは
セイコーの高級腕時計ラインであるグランドセイコーは、どのようなブランドなのだろうか。まずは、ブランドの概要や初代モデルについて理解を深めておこう。
世界に誇る日本の高級時計ブランド
国産時計ブランドの最高峰に位置付けられるグランドセイコーは、オメガやロレックスをはじめとする、スイスの高級時計ブランドに対抗できる国産ブランドだ。
機械式とクォーツ式に加え、セイコー独自の駆動機構であるスプリングドライブを動力源とした、実用性と機能性に優れたモデルを展開している。
60年以上の歴史で築いてきた、世界基準のクオリティを備えた時計というイメージは、グランドセイコーの大きな魅力のひとつといえるだろう。
2018年にはアメリカにグランドセイコー販売に特化した新会社を設立するなど、グローバルブランドとしての一歩を踏み出している。
初代モデルは1960年に登場
セイコーは、世界と対等に渡り合える国産時計を目指し、1960年にグランドセイコーの初代モデルをリリースした。
日本の時計史に名を刻む名機「セイコークラウン」(59年製造)をベースモデルとし、セイコー初の秒針規制装置や緩急針微調整装置を採用するなど、さらなる高性能化が図られた。
初代モデルは、スイス公認歩度検定局によるクロノメーター規格(優秀級)と同精度を国内では初めて実現している。
発売当時の価格は2万5000円であり、上級国家公務員が初任給として受け取っていた金額の倍以上もする高級モデルだった。
グランドセイコーモデルの歴史
ターニングポイントとなった出来事を中心に、歴史を振り返ってみよう。独自のデザイン理念が確立したタイミングや、機構開発の変遷が理解できるだろう。
セイコースタイルのデザイン確立
「燦然と輝くウオッチ」をテーマに掲げ、1967年にデビューした「44GS」は、後のグランドセイコーにおける外装デザインに大きな影響を与えたモデルだ。
3つのデザイン方針をもとに、9つのデザイン要素を備えた44GSのスタイルは、グランドセイコーのデザイン理念「セイコースタイル」として、後継機に受け継がれることになる。
44GSの誕生以降、現在に至るまでのコレクションの多くが、日本の美を表現していると言われている。この美的感覚やシルエットは、44GSで確立したセイコースタイルを遵守し続けているからに他ならない。
世界最高のクォーツと評される9F
1969年、セイコーは世界で初めて、それまで大型であったクォーツ機構を、腕時計に収まるほど小型化することに成功した。
この技術改革は「クオーツアストロン」のモデル名で世界を駆け巡り、機械式時計製造メーカーに「クォーツショック」なる大打撃を与えた。しかし、機械式時計のグランドセイコーも、同様に鳴りを潜めることとなる。
休眠状態を経て、ブランド史上初のクォーツ機構搭載モデル「95GS」が発表されたのは88年のこと。
搭載された「9Fクオーツ」は、最高レベルの精度を実現したムーブメントであり、現在でも9F系のクォーツは高い評価を集めている。
クォーツ式モデルが追加されたことによりグランドセイコーは見事に復活し、再びその名を世に轟かせることとなった。
第3のムーブメント スプリングドライブ
機械式とクォーツ式の技術を融合した「スプリングドライブ」は、それぞれのメリットを備えた第3のムーブメントとして誕生した機構だ。
スプリングドライブの機構自体は1999年にセイコーとクレドールの時計に搭載されたが、そこからさらに約4年の研究開発を経てグランドセイコーに採用されることとなった。
効率化が図られた自動巻きシステムと、約72時間のパワーリザーブを実現したキャリバー9R65は、グランドセイコー初のスプリングドライブとして2004年にデビュー。既成概念を覆す機構として世界中の時計関係者を驚かせることになった。
現在も進化を続けているこの動力源は、今なお国内外から高い評価を獲得している。