2カ国、または3カ国のタイムゾーンを同時表示する「GMT」は、人気の時計機構のひとつだ。さまざまなブランドが打ち出すGMTウォッチのうち、今回は国産高級時計ブランドであるグランドセイコーのおすすめモデルを5本、紹介する。
グランドセイコーのGMTモデルのすすめ
新型コロナウイルス禍が一段落し、海外への移動制限が緩和された。そんな中で、出張や海外旅行の予定が増えた読者も少なくないだろう。物理的に移動せずとも、インターネットを介して海外の企業や人とやり取りすることもある。このように、海外との心理的距離は近くなっているが、地域によって“時差”が存在する。時差の異なる地域に赴いたり、コミュニケーションを取ったりする際、第2時間帯をスマートに把握できるGMT機構搭載モデルが実用的だ。これからGMTウォッチを買うなら、国産高級ブランドを選択肢に入れてはいかがだろうか。今回は、グランドセイコーのGMTモデルを紹介するとともに、GMT機能の特徴や、グランドセイコーの魅力について触れていく。
GMT機能とは?
腕時計の便利な機能のひとつにGMT機能がある。これは特に、国際的な取引や海外旅行の多いユーザーに向く機能だ。GMT機能の概要と、グランドセイコーにおけるGMTモデルの操作方法を見ていこう。
もうひとつの時間帯を表示できる機能
GMT機能とは、通常の針のほかに、24時間で1回転するGMT針や24時間表示の回転ベゼルを用いることで、同時にふたつまたは3つの時間帯を表示する機能だ。
時分秒針は現在時刻を表し、GMT針や回転ベゼルは第2時間帯を表す。現地時間と同時に、母国やビジネス拠点などの時間を確認できるため、ビジネス・投資・旅行と、幅広いシーンで活躍する。
GMTの操作方法
グランドセイコーのGMT機能を組み込んだムーブメントには、機械式にCal.9S66とCal.9S86、クォーツ式にCal.9F86、スプリングドライブ式にCal.9R66とCal.9R86、そしてCal.9R96がある。
現在時刻・第2時間帯ともにリュウズを操作することで合わせる。
まずGMT針と分針とを調整する。秒針が0秒位置にあるときにリュウズを2段階引き出して時刻を合わせる。続いて、1段階引き出した状態で現在時刻の時針の時刻合わせを行う。
現在時刻の時差を修正する場合は、時計を止める必要はない。リュウズを1段階引き出して、右に回すと−1時間、左に回すと+1時間となる。
また、回転ベゼル付きのモデルであれば、第3時間帯の同時表示も可能だ。
第2時間帯に対して第3時間帯の時差が+6時間だとしたら、回転ベゼルの▽印(24時位置)を反時計回りに6目盛り分回転させる。すると、GMT針が示すインナーベゼルの時刻が第2時間帯、GMT針が示す回転ベゼルの時刻が第3時間帯となる。
GMT機能搭載のおすすめモデル5選
グランドセイコーが搭載する付加機構はクロノグラフとGMTがメインとなっており、ブランドの伝統を守る丁寧な設計が魅力だ。グランドセイコーの発展を予感させるGMTモデル5選を紹介しよう。
「エレガンス コレクション」Ref.SBGJ251
2021年、“THE NATURE OF TIME”をテーマに、グランドセイコーは24節気にインスピレーションを得たモデルを4種発表した。本作は、その4種のうちのひとつ、「春分」を表現している。自動巻き(Cal.9S86)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS(直径39.5mm、厚さ14.1mm)。3気圧防水。91万3000円(税込み)。
2020年に「エレガンス コレクション」に加わったRef.SBGJ251。グランドセイコー誕生60周年の節目に当たるこの年、同ブランドは“THE NATURE OF TIME”をテーマとした新作を送り出した。このテーマに沿った新作のうち、1年を24等分し、季節の移ろいの目安とした24節季からインスピレーションを得たモデルが4種発表された。今回おすすめのグランドセイコーのGMTウォッチとして紹介するのは、24節季のうち、「春分」を表したモデルだ。
人里離れた山奥で、ひっそりと咲く「山桜」をイメージしたダイアルが本作の見どころだ。独特のパターンがあしらわれたグリーンダイアルに浮かぶピンクゴールドカラーのGMT針が、山桜のほころびとともに訪れる春を思わせるとともに、GMT針のみカラーリングが異なることで、判読性の高さももたらしている。
「スポーツ コレクション」Ref.SBGJ237
グランドセイコーというと、ビジネスシーンに合わせるシンプルなデザインをイメージするかもしれない。しかし、2017年以降、スポーツウォッチも意欲的にラインナップに加えてきた。本作も、力強くスポーティーな1本に仕上がっている。なお、ベゼルはサファイアクリスタル製だ。自動巻き(Cal.9S86)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径44.2mm、厚さ14.4mm)。20気圧防水。90万2000円(税込み)。
「スポーツ コレクション」の中でも、直径44.2mm、厚さ14.4mmと、大ぶりなケースを備えたRef.SBGJ237。4時位置にオフセットされたリュウズは着用中、手の甲に干渉しづらく、セイコーのダイバーズウォッチなどでも見られるスタイルだ。
GMT機能に加えて20気圧防水と、実用性も十分である。なお、第3時間帯表示を実現する回転ベゼルはサファイアクリスタル製で、ブルーとホワイトのツートンカラーになることで、昼夜判別も瞬時に行いやすい。
「ヘリテージ コレクション」Ref.SBGN013
クォーツ式GMTウォッチの中でも、特にベーシックなモデル。搭載するCal.9F86は、9Fクォーツ誕生25周年を記念して新開発されたムーブメントである。シンプルかつ視認性の高いダイアルからは、グランドセイコーの実用を大切にするという、真髄を感じられる。グランドセイコー「SBGN013」クォーツ(Cal.9F86)。年差±10秒。SSケース(直径40mm、厚さ12.2mm)。38万5000円(税込み)。
2020年に発表されたヘリテージコレクションの「SBGN013」は、黒ダイアルに赤いGMT針が映える、スタイリッシュなクォーツウォッチだ。第2時間帯表示をダイアルに組み込むことで、ダイアルの表示要素が無駄なくすっきりとまとまった。
「4軸独立ガイド構造」により4本の針は互いに干渉することなくなめらかに動き、時差の修正では時計を止めずに時針のみ独立して行える。
ケース径40mmというほどよいサイズ感で、ビジネスシーンはもちろんカジュアルシーンでも活躍する1本だ。
「エボリューション 9 コレクション スプリングドライブ GMT」Ref.SBGE283
「エボリューション9 コレクション」から誕生した本格スポーツウォッチのうち、スプリングドライブ式ムーブメントCal.9R66を搭載したGMTだ。自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R66)。30石。パワーリザーブ約72時間。SS(直径41mm、厚さ13.9mm)。10気圧。106万7000円(税込み)。
グランドセイコーは2020年、新たなデザイン文法を備えた「エボリューション9 コレクション」を打ち出した。このデザイン文法は、セイコースタイルを基調としつつ、腕時計の使いやすさや美しさを、いっそう追及するというものだ。本格スポーツウォッチである本作にも、エボリューション9 コレクションが大切にする優れた着用感や視認性、ザラツ研磨によって生み出される歪みのない面やシャープな稜線は健在である。
ブラックダイアルにメタリックなGMT針が映え、立体的なインデックスや力強い針は複雑な輝きを生む。
平均月差±15秒でパワーリザーブは最大約72時間、7時位置にパワーリザーブインジケーターも配し、あらゆるシーンで信頼性の高いGMTモデルとして活躍するだろう。
「スポーツ コレクション」Ref.SBGE248
水平線に昇る朝日を思わせるようなコントラストを効かせたGMT。深いブルーダイアルはサンレイ仕上げ、さらにベゼルにサファイアクリスタルを採用することで、艶感たっぷりに仕上げた。ジェットセッターの腕元に華やぎを与える1本。グランドセイコー「SBGE248」自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R66)。30石。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径44mm、厚さ14.7mm)。159万5000円(税込み)。
「スポーツ コレクション」のRef.SBGE248は、ゴールドとブルーのコントラストが美しい、上品なスプリングドライブ式GMTだ。
ベゼルとリュウズには18Kイエローゴールドをあしらい、ベゼルにはリング状にくり抜いたブルーサファイアクリスタルを配した。
ケース径44mmと大ぶりだが、本作もまたリュウズは3時位置ではなく4時位置にあるため、手首を痛めにくい点にも注目したい。旅行はもちろん、ビジネスシーンにも映えるエレガントな仕上がりだ。
コラム①グランドセイコーの成り立ちと高度な技術力
2020年に60周年を迎えたグランドセイコーは、日本が誇る高級腕時計ブランドであり、世界市場でのプレゼンスも高めている。グランドセイコーの歩みと、抜群の性能を誇るムーブメントについて見ていこう。
グランドセイコーの歩み
1960年、スイス製高級腕時計に対抗できる国産最高級腕時計を目指してセイコーから初代グランドセイコーが発売された。
翌年には輸入関税の緩和によって競争は過熱化するが、高級腕時計に相応しい精度や機能を求め、グランドセイコーは進化を続けていく。
1967年には「セイコースタイル」の基盤となる高精度な手巻きウォッチ「44GS」、88年には年差±10秒のクォーツウォッチ「95GS」、2004年には自動巻きかつパワーリザーブ最大約72時間のスプリングドライブを発表した。
世界で認められ海外市場での売上高を伸ばしていったグランドセイコーは、17年にはセイコーから独立し、高級腕時計に特化したブランドとしてさらなる高みを目指している。
独自技術を搭載した3タイプのムーブメント
グランドセイコーは「9Sメカニカル」「9Fクォーツ」「9Rスプリングドライブ」という3タイプの駆動方式を使い分け、いずれも徹底して高機能化を図っている。
9Sメカニカルは、精密加工技術MEMS(メムス)製法によってヒゲゼンマイまで自社製造し、スイス・クロノメーター規格よりも高い精度基準「グランドセイコー規格」に準拠する平均日差+5秒〜−3秒の高精度を実現した。さらに、この規格すら超える高精度をかなえた、平均日差+4~-2秒の「グランドセイコースペシャル(GSS)規格」を満たすモデルも存在する。
9Fクォーツには3カ月のエイジングを行った水晶振動子のみを採用し、駆動中は毎日540回の検温も行って誤差修正を行う。トルクが弱いというクォーツウォッチの弱点を克服し、重く太い針を回す「ツインパルス制御モーター」や、秒針の動きを安定させる「バックラッシュオートアジャスト機構」なども秀逸だ。
9Rスプリングドライブは、機械式の主ゼンマイによる大きなトルクと、クォーツ式のIC・水晶振動子による精度制御とを兼ね備える。なめらかに秒針が動くスイープ運針もこの機構の見どころだ。
コラム②グランドセイコーの特徴
グランドセイコーの腕時計の意匠の本質は、独自の「セイコースタイル」によって確立している。また、結果的にデザイン上の差異は少ないが、2017年の独立以降はこれまでにない挑戦が見られる。
グランドセイコーを特徴付けるデザイン性・実用性・ブランドイメージを、主に伝統的な解釈から見ていこう。
デザイン性の高さ
グランドセイコーの意匠として特徴的なのは、1967年の「44GS」によって確立された「セイコースタイル」と呼ばれるデザインコードで、平面を基調とした見やすく美しいデザインとなっている。
ケースは「ザラツ研磨」によって丁寧な下地処理を施してから鏡面仕上げをし、派手ではないが上質な高級感を生む。
バンドはステンレススティール製ブレスレットやクロコダイルストラップが多く、総じてビジネスシーンに親和性の高い意匠である。
実用的な機能美
グランドセイコーが追求するのは、時計の本質。つまり実用性を伴った美である。
視認性の高いダイアルや、高精度なムーブメント、誤操作の起きづらいクロノグラフ機能などがそれに当たる。
パワーリザーブの延長にもこだわり、9Sメカニカルでは最大約80時間、9Rスプリングドライブでは最大約192時間(約8日間)にも達し、末長く安心して使っていける高級腕時計が目指されている。
国内有数のブランドイメージ
グランドセイコーは国産最高級時計を目指して誕生し、2017年には高級腕時計ブランドとして独立、20年には誕生60周年を迎えた。
ムーブメントの基本設計や部品から最高水準の品質を求めてきたグランドセイコーは、精度や機構に関してスイス高級腕時計以上の評価を受けることさえある。
ブランド独立後は海外市場をより強く意識し、数百万円以上のモデルを数多くリリースするなど、世界に通用する高級ブランドとして価値は高まっている状況だ。