IWCの「パイロット・ウォッチ」は空軍仕様の精度や耐久性を誇るとともに、その合理的なデザインはファッションアイテムとしても魅力的だ。電子機器に囲まれた現代人の生活でも信頼性を保証する、パイロット・ウォッチの名機を紹介しよう。
IWCとパイロット・ウォッチの歩み
IWC(International Watch Company)は質実剛健な高級腕時計メーカーとして名高く、多彩なコレクションは無駄な装飾を排したスマートなデザインでも魅力を放っている。
看板コレクションである「パイロット・ウォッチ」のバリエーションを見る前に、まずはIWCとパイロット・ウォッチの歩みを見ていこう。
ポルトギーゼと並ぶIWCの代表シリーズ
IWCは1868年、アメリカ・ボストン出身の時計師フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズによって、スイス北部のシャフハウゼンにて創業された。
ドイツ国境にほど近い地に社屋を構えたIWCは、1884年発表のデジタル表示技術「パルウェーバー・システム」搭載の懐中時計など、高級懐中時計メーカーとして合理的かつ革新的な時計製造を続けていく。
1936年には軍用パイロット・ウォッチの祖ともいえる「スペシャル・パイロット・ウォッチ(マークIX)」を発表し、1948年には「マーク11」によってパイロット・ウォッチの完成形を示した。
パイロット・ウォッチは1939年に誕生した「ポルトギーゼ」とともに、現在のIWCを代表するコレクションを形成している。
パイロット・ウォッチの主な種類
「パイロット・ウォッチ」コレクションは、空軍や飛行士と関わりの深い5つのシリーズから構成される。「マーク11」のデザインをベースとして幅広い展開を見せる、パイロット・ウォッチのシリーズについて見ていこう。
タフさが特徴のスピットファイア
2003年に登場した「スピットファイア」は、第二次世界大戦中に英国空軍で運用された同名の戦闘機にオマージュを捧げたシリーズだ。
英国空軍向けに開発されたマーク11のデザイン要素を踏襲しつつ、ストラップやダイアルはスピットファイアのコックピット内に見られるブラウンやオリーブグリーンで彩られる。
民生モデルでありながら空軍仕様の堅牢性、耐磁性能、精度を備え、急激な減圧や強力な電磁波干渉にも耐えるタフさが魅力だ。自社製ムーブメントを搭載するのみならず、独自仕様の複雑機構を搭載したモデルは、メカニズムを重視する時計愛好家を魅了する。
アメリカ海軍のために作られたトップガン
2012年に登場した「トップガン」シリーズのネーミングはアメリカ海軍の戦闘機戦術教育プログラムの愛称に由来。2007年からアメリカ海軍の精鋭パイロット向けに製造されており、超音速戦闘機での飛行にも耐える仕様だ。
空母での長期間のミッションにも耐える堅牢性や耐食性を実現するため、IWCはセラミックとチタンの利点を兼ね備えた独自素材「セラタニウム」を開発した。
セラタニウムはそれ自身が焼成の過程でマットブラックカラーを帯び、日光の反射による視認性への悪影響を抑える。
星の王子さまを意味するプティ・プランス
「プティ・プランス」は、飛行士でもあった作家アントワーヌ・ド・サンテグジュペリの名作『星の王子さま』をモチーフとしたシリーズだ。
2013年からサンテグジュペリの子孫の全面的な協力を得て発表されているプティ・プランスは、詩情を感じさせるミッドナイトブルーのダイアルが輝く、飛行と文学の世界が融合した本格的パイロット・ウォッチである。
軟鉄製のインナーケースは強力な磁力を遮断し、ケースバックにはマントをまとい、剣を手にした王子の姿が刻印される。
初期モデルの特徴を受け継ぐクラシック
「クラシック」は、1930年代から1940年代にかけて登場した初期モデルのエッセンスが色濃く反映された、パイロット・ウォッチの伝統を感じさせるシリーズである。
IWCは第二次世界大戦中に英国空軍とドイツ空軍にそれぞれ異なる仕様のパイロット・ウォッチを提供していた。
クラシックシリーズでは1936年に登場した英国空軍向けの「マークシリーズ」と、1940年に登場したドイツ空軍向けの「ビッグ・パイロット・ウォッチ」それぞれの伝統を現代に伝える。
12時位置のトライアングル・インデックスやダイヤカットの時分針など、クラシカルなコックピットデザインを継承したシリーズである。
サンテグジュペリに捧げるアントワーヌ・ド・ サンテグジュペリ
「アントワーヌ・ド・ サンテグジュペリ」シリーズは、タバコブラウンのダイアルが印象的な、サンテグジュペリに捧げる特別モデルである。
サンテグジュペリの子孫とIWCは2005年から密接に連携しており、確固たるパートナーシップの象徴として2006年からサンテグジュペリを偲ぶ特別モデルを発表し続けているのだ。
2008年に恵まれない子供や青少年を支援する慈善団体「アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ・ユース財団」が設立されて以降は、財団やパートナー団体に収益の一部を還元する活動も行っている。