Q:結局、ザラツ研磨とは何なんですか?
2020年9月13日掲載記事
A:ケースを磨く技術のひとつで、今や、日本製高級時計の代名詞的存在になっている
グランドセイコーが好んで使う手法がザラツ研磨。これはケースを磨く技術のひとつで、今や、日本製高級時計の代名詞的存在になっています。もともとザラツとは、スイスのザラツ兄弟社が製造していた研磨機に由来します。このザラツ兄弟社製研磨機を用いて行う研磨作業を現在では「ザラツ研磨」と称しています。
名前こそ知られているものの、ザラツ研磨の内実が分かりにくい理由は、あくまで下地の処理だから。一般的に、時計のケースは次のような製法で作られます。
1、金属板を鍛造してケースの形に抜く
2、表面や内側を切削して、ケースの形に整える
3、表面を磨いて下地を整える
4、研磨材を付けたバフで磨いて、最終的なケースに仕上げる
林精器製造によるグランドセイコーのザラツ研磨。(左)ザラツ研磨に用いる錫ザラツ用の板。この板に研磨剤を塗る。(右)ザラツ研磨の様子。ザラツ板を回転させ、ケースを当てていく。
Photograph by Eiichi Okuyama
Photograph by Eiichi Okuyama
ザラツ研磨が用いられるのは、3の工程です。現在多くのメーカーは、下地を整える場合でもバフを使いますが、研磨剤を付けた布を当てると、ケースの角が丸くなる場合があります。そこで日本のメーカーは、一部の高額品にバフではなく、ザラツ研磨を施して下地を整えるのです。これはバフに用いられる布ではなく、回転する錫板や紙、ラップフィルムなどに対象物を当てて、面を成形していくもの。平たい面にケースを当てて磨くため、角を落とさず面を整えられる、というメリットがあります。角張ったケースを持つ、日本製の時計に向いた手法と言えるでしょう。しかし、回転する面に対して正しい角度でケースを当てる必要があるため、できる職人は限られます。
なお、ザラツ研磨の中でも最上と言われるのが、錫板を当てて磨くもの。完全な鏡面を得られますが、最盛期の諏訪精工舎(現セイコーエプソン)でも、ひとりの職人が1日に2個しか磨けなかったそうです。もっとも、この手法は手間が掛かりすぎるため、今採用するモデルはないでしょう。
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