国内最高峰に位置する「グランドセイコー」は、常に高品質なタイムピースを世に送り出しており、外装のみならず、心臓部であるムーブメントにも妥協なく取り組み、進化させ続けている。それぞれのムーブメントの魅力と、それらを搭載したおすすめモデルを紹介しよう。
グランドセイコーとムーブメントの歴史
懐中時計が発明され、小型化の成功によって腕時計が発展してきたその歴史において、1950年代まではスイス製が高級時計の代名詞であった。
そんな中、スイス製にただ倣うのではなく、日本製としてのオリジナルな理念と哲学をもって世界に挑戦する国産最高級の腕時計を作るという思いから生まれたのが、グランドセイコーだ。
その歴史を、ムーブメントの進化とともに再確認してみたい。
初代グランドセイコーは1960年に誕生
初代グランドセイコーが誕生したのは1960年。諏訪精工舎によって59年に発表された「セイコークラウン」に、特別な調整と仕上げを施して開発された。
その後、64年にはキャリバー5722搭載の「GSセルフデーター」を発表。
67年には、「44GS」にキャリバー4420を、「62GS」にはキャリバー6245をそれぞれ載せるなど、精力的にムーブメントを開発。ムーブメントの進化とともに、グランドセイコーはブランドバリューを高めていく。
こうして数々の機械式ムーブメントを開発するも、時代はクォーツ式の流れが急速に進み、75年に生産を中止せざるを得なくなった。
しかし88年、グランドセイコーは「95GS」で復活を遂げる。それを実現したムーブメントが、クォーツ式キャリバー9581である。
そして、89年発表の「8NGS」に搭載したクォーツ式キャリバー8N65や、93年に発表された9F83を経て、グランドセイコーを代表する機械式ムーブメント・9Sの誕生へとつながっていく。
代表的なムーブメントと特徴比較
現在のグランドセイコーを支える、代表的なムーブメントを比較してみよう。機械式、クォーツ式、スプリングドライブと、タイプごとの特徴が深く理解できるだろう。
非常に高精度 9Fクォーツ
「9Fクォーツ」は、クォーツを超えたクォーツと称される、極めて高精度なムーブメントである。年差わずか±10秒という性能からも、クォリティーの高さが分かるだろう。
高い完成度を実現するために、3カ月間のエージングを水晶振動子に対して行ったり、ICと水晶とのマッチングをしたりなど、想像をはるかに超える手間をかけている。
また、トルクの弱さが指摘されるクォーツ式だが、それを克服するためにオリジナルの技術「ツインパルス制御モーター」を採用した。結果、一般的なクォーツ式では動かすことが困難な太い針の駆動をも可能にしている。
機械式の最新版 9Sメカニカル
「9Sメカニカル」も、世界の時計界を驚愕させた機械式ムーブメントだ。
半導体などで用いられる加工技術「MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)」の導入によって各パーツの強度を維持しつつ、軽量化にも成功している。
また、グランドセイコーの時計は、世界に名を馳せる高級時計ブランドが準拠するスイス公式クロノメーター検定機関のC.O.S.C.(The Contrôle Officiel Suisse des Chronomètre)以上に厳しい規格(新GS規格)が定められている。
さらに、9Sメカニカルのなかにはさらに厳しい「グランドセイコースペシャル(GSS)規格」が課せられるモデルもラインナップ。GSS規格では、平均日差+4秒~-2秒の高精度が求められることから、熟練の時計師が通常の数倍もの時間をかけてようやく達成できる精度基準のため、年にわずかしか生産できない。
機械式とクォーツ式のハイブリッド 9Rスプリングドライブ
世界中のあらゆる時計のなかでも、機械式とクォーツ式が融合したハイブリッドムーブメントを製造しているのはセイコーのみ。「9Rスプリングドライブ」は、同社の高い技術を象徴していると言えるだろう。
機械式が持つ温もりとクォーツ式が備える精度、それらがひとつのケースに同居したムーブメントは、時計史にその名を刻む画期的な開発である。
動力にはゼンマイを使用。電池を必要としないため、機械式にロマンを求めるファンを満足させつつ、平均月差±15秒という、クォーツ式と同等の高い精度も備えているのだ。
グランドセイコーはどれを選ぶ?
クォーツ、メカニカル、スプリングドライブと、各ムーブメントにはそれぞれの魅力がある。これらを搭載したモデルを、タイプ別に紹介しよう。
9Fクォーツのおすすめ
クォーツ(Cal.9F85)。SS(直径40mm)。日常生活用強化防水(10気圧)。28万円(税別)。
「SBGP009」は、2020年に新たに開発された「9F85」を搭載したモデルだ。時針を単独で動かせるため、時計を止める必要がない、つまりクォーツ式の高精度を逸することなく、時差の修正が行えるようになっている。
「SBGN011」には「9F86」が搭載されている。GMT針を加えた時針、分針、秒針の4本の軸が干渉し合わない「4軸独立ガイド構造」で、悠然とした滑らかな針の動きを実現している。
その他、逆回転防止ベゼルを装着した「SBGX335」「SBGX337」や、レザーストラップが気品を生む「SBGX331」、ファブリックストラップを使った「SBGV243」などにも注目してほしい。
クォーツ(Cal.9F86)。SS(直径40mm)。日常生活用強化防水(10気圧)。31万円(税別)。
9Sメカニカルのおすすめ
自動巻き(Cal.9S86)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS(直径44.2mm)。日常生活用強化防水(20気圧)。72万円(税別)。
「SBGJ237」は、高評価を得る自動巻きのハイビートムーブメントにGMT機能を備えたたムーブメント「9S86」を搭載するモデルである。
「SBGW257」は、1960年に誕生した初代モデルを、現在の最高の技術によってよみがえらせたモデルで、エレガントな雰囲気を放ちつつ、視認性も向上させている。
18Kピンクゴールドケースとグリーンカラーがノスタルジーと気品を感じさせる「SBGW264」や、ブルーセラミックスとブライトチタンで強烈な印象を与える「SBGJ233」などもおすすめだ。
手巻き(Cal.9S64)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。Pt(直径38mm)。日常生活用防水。400万円(税別)。
9Rスプリングドライブのおすすめ
スプリングドライブ自動巻き(Cal.9R66)。30石。パワーリザーブ約72時間。SS(直径40.5mm)。日常生活用強化防水(20気圧)。65万円(税別)。
「SBGE253」は、機械式とクォーツ式を融合したハイブリッド方式に、GMT機能も加えたモデルだ。ベゼルにはジルコニア・セラミックスを使い、美しさと強靭さを兼ね備えている。
「SBGD205」は、ダイアルにセットされたダイヤモンドやサファイアのきらめきがエレガントな雰囲気を生む美麗な数量限定モデルである。獅子座を模した星のデザイン、インデックスや分目盛りに採用された48ものテーパーバゲットダイヤモンドなど、同モデルオリジナルの仕様が施されている。
繊細な和紙を思わせる風紋の雪白ブルーのダイアルが美しい「SBGA407」や、18Kイエローゴールドとシャープなブルーのコントラストが映える「SBGE248」も要チェックだ。
スプリングドライブ手巻き(Cal.9R01)。56石。パワーリザーブ約192時間。Pt(直径43mm)。日常生活用強化防水(10気圧)。世界限定10本。2000万円(税別)。
ムーブメントの魅力を知る
ムーブメントは、単に時計を駆動させるだけの装置ではない。その性能やタイプの違いによって、時計が持つ気品や存在感にまで影響を与える、最も重要な要素なのだ。
グランドセイコーは卓越した技術力で、数々の名ムーブメントを生み出してきた。そのメカニズムや特徴を理解し、グランドセイコーの魅力をより深く知ってほしい。
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