復刻ブームが続く中、「アビエーター 8」コレクションは、ブライトリングの初期のパイロットウォッチを単純に複製するだけでなくモダンな再解釈を加えている。今回は「アビエーター 8 B01 クロノグラフ 43 モスキート」を着用し、その魅力を実感してみた。
Text by Martina Richter
Text by Olaf Köster
2020年12月23日掲載記事
ブライトリング「アビエーター 8 B01 クロノグラフ 43 モスキート」
突風が嵐に変わることがあるように、ブライトリングの「アビエーター 8」コレクションの時計も多くの変化を経験してきた。2018年初頭に「ナビタイマー 8」として発表されたこのコレクションは、ゆっくりとした変化を経て現在、成熟期に入ってきた。新しいコレクションには、ブライトリングと航空を結びつける長い歴史が反映されている。
アビエーター 8へのスムーズな移行
「再びコックピットへ」というフレーズは2017年にジョージ・カーンがブライトリングのCEOとして着任した際に伝えられたものだ。彼が目指したのは、ブライトリングが航空の世界で歩んできた最初の一歩を再訪し、それを解釈し直すということにあった。1930年代初頭、航空用回転計算尺を搭載した初代ナビタイマーが1952年に発売されるよりもずっと前からブライトリングは航空機のコックピット計器を製造していた。航空用回転計算尺が廃された新コレクションがナビタイマー(現在の「8」)として発表されたことは多くの人に衝撃を与えたが、それはナビタイマー 8に、より古いブライトリングのパイロットウォッチの歴史について語る役割が課せられていたからだ。だからこそナビタイマー 8には1930~40年代に生産されたブライトリングの時計の要素が多く取り入れられているのだ。
ナビタイマー 8発表の翌年、「カーチス ウォーホーク」という限定モデルが発表されたことを機に、ブライトリングと航空との初期のつながりを象徴する「アビエーター 8」が誕生した。現在でもナビタイマー 8はブライトリングのウェブサイト上に見付けることはできるが(おそらくこれらのモデルは市場に出回った期間が短いためコレクターズアイテムとなるであろう)、回転計算尺を備えた唯一のモデルは「ナビタイマー」の名の下に存在し、新しい時計は「アビエーター 8」となり、文字盤からナビタイマーの名は消えた。
今回着用した「アビエーター 8 B01 クロノグラフ 43 モスキート」は、2019年後半に発表されたモデルだ。第2次世界大戦中に活躍した英国の航空機「デ・ハビランド モスキート」に搭載された、「Huit Aviation Department」製コックピット計器のデザインに回帰している。この「Huit Aviation Department」(フランス語で『Huit』は『8』の意)という機関は、ブライトリングによって1938年に設立され、約8日間のパワーリザーブを持つ飛行機のコックピット時計を手掛けていた。
安定した精度のムーブメント
「アビエーター 8 B01 クロノグラフ 43 モスキート」に搭載されるキャリバー01は、コラムホイール制御で垂直クラッチを採用したクロノグラフムーブメントである。2009年にブライトリング創業125周年を記念して発表されたものだ。本機に搭載されているムーブメントをよく見ると、例えば偏心錘の調整用ネジの位置や、ストップウォッチ機構のレバーの仕上げ方など、オリジナルとは若干異なる点がある。しかし、これらはいずれもC.O.S.C.認定クロノメーターであるブライトリングの優れた精度に影響を与えるものではない。精度安定試験の結果からも、その信頼性の高さが見て取れるだろう。
直径43mmのステンレススティールケースは、カーブを描く短いラグを備え、その斜面には鏡面仕上げが施されている。これはブライトリングが1930年代から60年代にかけて多用した要素だ。
また、歴史にインスパイアされたマッシュルーム型のプッシャーも、フルーテッドリュウズと同様にナビタイマーの特徴のひとつである。コラムホイール制御よってクロノグラフのプッシャーの押し感はしっかりとしている。ねじ込み式のリュウズはスクリューロックを解除する時やねじ込む際に少々力を要するが、さまざまな操作ポジションへは引き出しやすい。
溝付きの両方向回転式のベゼルの回転は非常になめらかだ。ベゼルリングはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングによって非常に深みのある漆黒のカラーとなっている。衝撃やキズに強い硬さがあり、またエレガントなメタリック調である。
デ・ハビランド モスキートを思わせるカラーアクセント
ヴィンテージのコックピット計器や時計を彷彿とさせる黒文字盤。大胆な赤とオレンジのアクセントは、第2次世界大戦中に世界有数の高速航空機として知られた1940年代の英国製デ・ハビランド モスキートの機体を想起させるようにデザインされている。蓄光塗料は時分針とアワーマーカー、文字盤外周部の5分(秒)ごとのミニッツ・セコンドトラックに塗布されている。白いスーパールミノバは明るい環境下でも黒文字盤とコントラストを成し、視認性を高めている。
5分ごとに配された内側を指す三角形のマーカー、分を示すわずかに長い線を備えたミニッツトラックは、ブライトリングのヴィンテージモデルRef.634から、また大きなアラビア数字はRef.765 AVIからインスパイアされた要素だ。3つのシルバーのサブダイアルとベゼル上のナンバリングも、これらのモデルに見られる。
ダークブラウンの丈夫なレザーストラップの背面に施された鮮やかな黄色が、ヴィンテージ感を保ちつつ非常にモダンな印象だ。かつての「ナビタイマー 8」は、「アビエイター 8」としての独自のアイデンティティーを十分に確立したと言える。
精度安定試験
着用時: | +2.9 |
文字盤上: | +0.6/+1.9 |
文字盤下: | +4.8/+4.9 |
3時上: | +2.1/-0.5 |
3時下: | +2.1/+3.9 |
3時左: | +3.3/+4.3 |
最大姿勢差: | 4.2/5.4 |
平均日差: | +2.6/+2.9 |
平均振り角 | |
水平姿勢: | 290° / 270° |
垂直姿勢: | 257° / 242° |
※この記事はクロノスドイツ版の翻訳記事です。
https://www.webchronos.net/features/55201/
https://www.webchronos.net/features/31234/
https://www.webchronos.net/features/48197/