IWC「スピットファイア」の魅力とは?英戦闘機をルーツとした名機3選

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2023.07.06

「スピットファイア」は、高級時計ブランド、IWCが誇るパイロットウォッチのコレクションだ。ミリタリーテイストのパイロット向けラインで、ポルトギーゼなどと並ぶ人気を博す。その歴史と特徴、注目モデルについて解説しよう。

スピットファイア


IWC スピットファイアの歴史

IWCが手掛けるパイロットウォッチの中で、ミリタリーな雰囲気で人気を集めるモデルが「スピットファイア」だ。そのルーツと特徴について見てみよう。

英国戦闘機がルーツ

1936年、IWCは民間航空を対象として、過酷な環境下にも耐え得る耐久性を備え、優れた耐磁性能を有する初代パイロットウォッチモデルを誕生させた。

そして48年には英国空軍の要請を受けて、軍用モデルにおける名機「マーク11」の開発に成功するのである。

本コレクションのモチーフとなっているのが、1943年に製造された航空機「スピットファイア」号。2019年12月5日、2人の英国人、パイロット、スティーブ・ボールドビー・ブルックスとマット・ジョーンズによって世界一周の飛行を終え、グッドウッドに帰還した。

その後も、マークシリーズはパイロットモデルとしてシリーズ化され、伝統を受け継ぎながら進化を遂げている。

そのパイロットウォッチコレクションに2003年に加えられたのが「スピットファイア」だ。そもそもスピットファイアは、英国の航空技術者レジナルド・ジョセフ・ミッチェルが設計し、第2次世界大戦で活躍した名戦闘機だ。パイロットウォッチとしての高いクォリティを持つIWCにおいて、その称号を冠した1本なのである。

パイロットウォッチの派生モデル

スピットファイアはデビュー当初、マークシリーズを優雅にアレンジしたパイロットウォッチと評価されていた。

スピットファイア

20世紀初頭の航空時代に想いを馳せた、ヴィンテージ風の世界観を色濃く醸し出したブロンズケースのクロノグラフ、IW387902。

現在の「スピットファイア」は、見た目において、大きく2パターンの傾向が見て取れる。

ひとつ目は、ステンレススティール製ケースにブラックダイアルを備えたもの。こちらには、グリーンのキャンバス製ストラップないしは、ステッチの入ったカーフ製ストラップがセットされる。

そしてふたつ目が、ケースはブロンズ製のグリーンダイアルの組み合わせ。ここには、ステッチの入ったダークブラウンのカーフストラップが備わっている。

これら2モデルは、クラシカルなムードを醸し出す「スピットファイア」コレクションを象徴しており、IWCのなかでも、特別感のある存在としても位置づけられている。


IWC スピットファイアの特徴

英国空軍の名機をモチーフとするスピットファイアには、さまざまな面で特筆すべき点がある。その特徴を掘り下げていこう。

高品質なステンレススティール

まず注目してほしい点が、ケースに、IWCが独自に開発したステンレススティールを採用していることだ。軽量で高強度のステンレススティールを用いたことで、アウトドアシーンでも活用可能だ。

加えて、6気圧防水を備えているため、水と密接した仕事やレジャーにも耐え得る。また、ドーム状のサファイアクリスタルは、パイロットウォッチでは必須機能といえる気圧変化への対応も十分だ。

ステンレススティール素材は、一見するとカジュアルな印象を与えやすい。スピットファイアでは、ケースとベゼルを、サテン仕上げとポリッシュ仕上げで磨き分けており、その結果、ステンレススティールの魅力を最大限に引き出し、光を受ける向きで異なる角度に輝きを放ち、高級感を漂わせているのだ。

ヴィンテージ感を味わえるブロンズ

ケースにブロンズを採用しているモデルがある点も大きな特徴だ。ブロンズ素材は「青銅」といって、銅と錫(すず)の合金である。含まれる添加物の量の違いで、その色はさまざまに変化する。

IW387902に採用されているブロンズケース。よく見ると、サテン仕上げをベースに、エッジ部分がポリッシュ仕上げで面取りされており、繊細な職人技が見て取れる。

錫の含有量が少なければ、日本の十円硬貨に似た色となり、多ければ輝く黄金色となる。弱点としては、錆びやすさが挙げられる。酸や塩分、湿気に弱く、経年劣化がビジュアルに反映されやすいのだ。

しかし、経年による変化は、単に弱点となるだけではない。パティナ(緑青)と称される錆の発生は、エイジング効果を楽しむことができ、より深い愛着につながる。

すべてのモデルに自社製ムーブメントを搭載

パイロット・ウォッチにキャリバー69000系のクロノグラフムーブメントを採用しているIWC。その流れを汲むスピットファイアのクロノグラフ2モデルには、キャリバー69380が搭載され、ケース径を41mmに抑えている。

そのほか、キャリバー82000系は、ふたつの高品質オートマティックムーブメントが採用されている。ひとつは、セラミックパーツを用いたペラトン自動巻きキャリバー82710。もうひとつのキャリバー82760には、IWCが特許を取得したタイムゾーナー機構が備わる。

さらに、セラミックパーツを採用したキャリバー52615や、自動巻きモデルにはキャリバー32000系など、すべてのモデルに自社製ムーブメントを搭載している。

ケース背面に刻まれたエングレービング

ダイアルやベゼル、ラグ、ベルトに目が向きがちであるが、ケース背面にも視線を送ってみてほしい。そこには、戦闘機・スピットファイアを模したイラストが描かれている。

彫刻によって施されるこの意匠は、エングレービングと呼ばれる技術によるものだ。硬質な刃で金属を彫る版画で用いられる技法の1種である。

スピットファイアのエングレービング

IW326801の裏蓋に刻まれた、スピットファイアのエングレービング。所有した際の愉悦にも通ずるデザイン。