2021年に創業175周年を迎えたユリス・ナルダンは、マリンクロノメーターの歴史から着想を得た航海用のデザインと耐候性を備えた実用性、そして卓越した技術を駆使したアバンギャルドな時計作りを融合させた「ダイバーX スケルトン」を発表した。豊富な撮り下ろし写真とともに紹介する。
Text by Mark Bernardo
2021年6月30日掲載記事
ダイバーズウォッチには珍しいシースルー仕様
「ダイバーX スケルトン」は、その名が表すように、ユリス・ナルダンの現行のダイバーコレクション「ダイバーX」と、エグゼクティブコレクションの「スケルトンX」が持つ要素を融合させたハイブリッドな新機軸である。直径44mmのブルーPVD加工が施されたケースは、側面にサンドブラスト仕上げ、ラグにはサテン仕上げが施され、防水性を持つリュウズの両側にはラバーのプロテクターが設けられている。逆回転防止機能付きのダイビングスケールベゼルはブルーのカーボ二ウム製で、これは2019年にユリス・ナルダンの「フリークX」で初めて採用された素材である。
カーボニウムは、航空機の胴体や翼に使用される高性能・超軽量な素材である。この素材は、切り落とされた7mm程度の炭素繊維を高圧・高温で圧縮することで、頑丈で弾力性のある素材に仕上げるもので、他の炭素複合材に比べて環境への負荷が40%も少ないというサステナブルな素材としても評価されている。この生産工程において独特のマーブル模様が得られ、完成した製品はひとつとして同じものはない。また、ドーム型のサファイアクリスタル風防を保護するため、ベゼルには凹型の反転デザインが施されており、プロフェッショナル仕様の200m防水を実現している。
ユリス・ナルダンの近年のモデルで繰り返し使われている、スケルトンの文字盤を支配するブルーPVDの「X」に存在感を出すためには、ケース、文字盤部品、ムーブメントの構造に高度な技術が求められた。蓄光塗料を塗布した針とともに浮かび上がるように見えるアワーマーカーは、目立たぬよう文字盤に固定されている必要があり、中央の「X」は、視覚的な立体感を増すために層を重ねた構造となっている。さまざまなパーツに異なる仕上げを施すことで、前面の文字盤からシースルー加工されたムーブメントの心臓部に至るまで、透明感と光の演出を引き出すことに成功した。
搭載されるキャリバーUN-372は、ユリス・ナルダンのエグゼクティブモデルに搭載されているベースキャリバーUN-171を進化させたもので、キャリバーUN-371を「完全に再設計」したものだ。このモデルでは、ユリス・ナルダンのシンボルである"X"の形をしたローターが追加され、ムーブメントの香箱にはベゼルと同じブルーのカーボニウム製のカバーが取り付けられている。香箱が蓄えるのは約96時間のパワーリザーブだ。キャリバーUN-372は、ユリス・ナルダンの他の自社製キャリバーと同様に、シリコン製テンワ、シリコン製の脱進機(ガンギ車とアンクル)など、パーツにシリコン素材を多用している。
ダイバーX スケルトンは、ユリス・ナルダンのアンカーエンブレムをあしらったブルー、またはオレンジ色のラバーストラップが取り付けられる。価格はいずれも税込み267万3000円だ。
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