「クロノマット B01 42」は、ブライトリングCEOのジョージ・カーンが就任以来、提唱してきた“インフォーマル”で“オールパーパス”な“ラグスポ” である。実際に1週間以上、同機を着用したことで、身をもって体感できたその理由を述べよう。
モデルチェンジにあたり、“ラグスポ”を意識してデザインしたとクリエイティブディレクターが明言するように、初代クロノマットの意匠を受け継ぎつつも、現代の“オールパーパス”ウォッチとして外装もムーブメントも進化を遂げている。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径42.00mm、厚さ15.10mm)。200m防水。97万9000円(税込み)。
鈴木幸也(本誌):文 Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2021年11月号掲載記事]
“オールパーパス”に活躍の場が広がった新世代の歴史的アイコン
新生「クロノマット B0142」について、本誌が提唱する〝ラグスポ〞の新条件に沿って具体的に見ていこう。搭載されるキャリバー01は、フリースプラングではなく、緩急針付きである。耐衝撃性を考慮すれば、緩急針を廃したフリースプラングが望ましいが、ブライトリングは緩急針による歩度調整を優先したのだろう。着用テスト時における精度は、T24で日差マイナス1秒、T48で日差0秒、T72でも日差マイナス1秒と、誤差は非常に小さく、よく調整されていた。
ブレスレットは、初代クロノマットと同じ懐かしのルーローブレスレットを採用するが、その構造は進化を遂げている。左右のガタがなく、手首をしっかりとホールドしてくれる。加えて、各コマの腕なじみも良い。筒状のコマはひとつひとつ独立しているように見えて、実は筒ふたつでひとつのコマを構成しており、必要以上にまとわりつくことがなく、程よい滑らかさで手首に沿うため、装着感は心地よい。各コマはネジではなくピンで留められているが、脆弱なヘアピンタイプではなく、バータイプのため、ネジ留めほどではないが、ブレスレットの剛性は適切にかなえられている。
ケースとブレスレットはサテン仕上げをベースに、面取り部と中ゴマにポリッシュ仕上げが施され、節度ある艶感の中に、ポリッシュの光沢がアクセントとして効いている。文字盤を縁取るベゼルは、全面がツヤツヤに研磨され、一際目を引く。ここは、元来、パイロットウォッチであるクロノマットに、最も〝ラグスポ〞らしさを感じる部分だろう。とはいえ、15分置きに配されたライダータブの上面がヘアライン仕上げのため、ポイントとなる15分単位の視認性はしっかり確保されている。
立体的にダイヤモンドカットされたインデックスと時分針は、高級感のある鏡面を持つが、黒文字盤がマット仕上げのため、針とインデックスが文字盤に溶け込んで見えなくなることはない。同様に、3つのインダイアルもマットなシルバーカラーのため、上面を磨かれたカウンター針もしっかり読み取ることができる。加えて、アワーマーカーと時分針、さらにクロノグラフ秒針と3つのカウンター針のいずれにも蓄光塗料が塗布されているため、暗所での視認性も十分確保されている。
直径42mmというケースサイズは、今やスポーツウォッチとしては大きすぎず、標準的なものだが、ラグを短くし、かつ、すとんと落ちるルーローブレスレットの弓管部のおかげで、17cmという細めの手首であっても浮くことがなく、多くの日本人の手首にもしっくりとなじむだろう。
1週間以上、着用してみて唯一気になったのは、ケースの厚さだ。クロノグラフだから致し方ないが、15.10mmという厚さはPCを中心としたデスクワークには向かない。それ以外の場面では、ブライトリングが〝オールパーパス〞と標榜するように、快適に過ごすことができた。サテン仕上げの程よい艶感の中に、キラリと光るベゼルが目に入るたびに、ただのスポーツではなく、〝ラグスポ〞だと感じられたのは、むしろ誇らしく、快かった。
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