なぜ腕時計は左腕に巻くのか?

2022.01.30

Q:どうして腕時計は左腕に巻くの?

多くの人は右手が利き腕ですが、腕時計は左腕に着けることが多いです。なぜ腕時計は利き腕とは逆に着けるのでしょうか?

広田雅将

2022年1月30日掲載記事

A:衝撃を与えないために、利き手とは逆の腕に装着しはじめたため

 ほとんどの人が、時計を右ではなく左腕に巻きます。右ではなく左に巻く理由は、多くの人の利き腕が右だからです。1910年代に普及し始めた腕時計は、30年代以降、懐中時計に取って代わるようになりました。人々が腕時計を着けるようになって問題になったのが、壊れやすいことでした。機械式時計の心臓部を支える天真という部品は、髪の毛の半分から3分の1程度の細さしかありません。そのためショックを与えると、すぐに折れてしまったのです。多くの人が、利き腕ではない腕に腕時計を巻くようになったのは当然でしょう。

ハミルトン カーキ パイロット パイオニア

Photograph by Masanori Yoshie
黎明期は特に衝撃に弱かった腕時計。そのため、なるべく動かさない利き手とは逆の腕に着けられるようになったという。なお、現在ではクォーツ式はもちろん機械式も耐震装置のおかげでどちらの腕に着けても衝撃で壊れることは滅多になくなったが、機械式時計の場合は左手に着けることを前提として調整がされているため、右手に着けた場合は精度が悪化する可能性がある。

 ちなみに、30年代後半以降になると、安価な機械式時計にも、ショックを和らげる「耐震装置」という部品が付くようになりました。その結果、腕時計は普段使いに向くものになりましたが、精密な機械のため、それでも扱いには気を遣う必要があったのです。なお、いくつかの時計メーカーは左利きの人向けに時計を作っています。大きな違いは、時間を合わせるリュウズという部品が、ケースの右側ではなく、左側にあること。最も知られているのはパネライの通称「レフティ」です。

 時計が進化した結果、今では利き腕に時計を巻いても、問題は起こりにくくなりました。クォーツ時計はもちろん、複雑な機械式時計でさえ、です。しかし、厳密に言うと、左腕に巻くことを前提で作られた機械式時計を右手に巻くと、しばしば時計の遅れ進みが変わってしまいます。そういう場合は、時計をメーカーや時計師に持ち込んで、再調整をしてもらうといいでしょう。


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