Q:シャネルやエルメス、ルイ・ヴィトンの時計っていいんですか?
シャネルやエルメスといった、時計専業メーカーではないブランドが作る腕時計って正直どうなんでしょうか?
2024年12月30日更新
A:3社とも、時計専業メーカーに負けないハイクオリティな時計を作っています
最近時計好きから注目を集める、時計専業ではないメーカーが作る腕時計。今ではシャネル、エルメス、ルイ・ヴィトンといったメーカーが、魅力的な時計を作るようになりました。そこで耳にするのが、これらのメーカーが作る時計って出来はいいの? という質問。結論を言うと、とても良くなりました。
もともと、こういったメーカーの多くは時計の製造を外部に委託していました。しかし、2000年代半ば以降、各社はできるだけ自社で生産する体制を整えるようになりました。加えて、時計メーカーから優秀な人材を招き入れることで、たちまち時計の質を改善したのです。
好例はシャネルでしょう。セラミックスのケースを自社で製造するだけでなく、チューダーなどが設立したムーブメントメーカーのケニッシに出資。同社のムーブメントを載せる最新の「J12」は、スポーツウォッチも顔負けの性能を誇ります。
エルメスも、名門ムーブメントメーカーのヴォーシェに出資。その後、ケースメーカーや文字盤メーカーを買収することで、スイスでも珍しい自社一貫生産体制を完成させました。同社の作る薄型時計の「スリム ドゥ エルメス」や、スポーツウォッチの「H08」などは、時計好きからも高い評価を受けるものです。
ルイ・ヴィトンも負けていません。高級時計工房のファブリック・ドゥ・タンを買収することで、同社はミニッツリピーターのような複雑時計や、ユニークな文字盤を製造するノウハウを手に入れました。
生産体制を整えたこれらのメーカーは、近年、独自性を強調するようになりました。セラミックケースを全面に押し出すのはシャネル。またシャネルは、ハイジュエリーの時計でも高い評価を受けています。一方で、時を解釈したユニークな複雑機構を打ち出すようになったのはエルメス。ルイ・ヴィトンは、時計メーカーには決して発想できない複雑時計や、鮮やかな色を強調するようになりました。
正直、専門ではないメーカーの作る時計は、かつてあまり高い評価を受けませんでした。しかし、各社の本気は、時計の質を大きく高めただけでなく、時計メーカーにはない個性をもたらすようになったのです。時計選びの際に、選択肢に非専業メーカーを加えるのは、もはや常識と言っていいでしょう。
ケニッシ製の自動巻きムーブメントを搭載した「J12」。ベゼルの枠とリュウズに18Kイエローゴールドを採用し、かつインデックスや針をゴールドカラーに彩った華やかな1本だ。ガルバニック仕上げのイエローゴールドプレーテッドローターを備えており、トランスパレントバックから観賞できるのもポイントだ。自動巻き(Cal. 12.1)。28石。パワーリザーブ約70時間。高耐性ブラックセラミックケース(直径38mm)。200m防水。261万8000円(税込み)。
2024年、エルメスがローンチした新コレクション「エルメス カット」。ケース直径が36mmと、男女問わず着用できるサイズ感も魅力。なお、ムーブメントはヴォーシェ製のCal.H1912を搭載している。自動巻き(Cal.H1912)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径36mm)。10気圧防水。102万4100円(税込み)。
ルイ・ヴィトンの2024年新作「エスカル オトマティック」のうち、18Kローズゴールド製ケースにグレー文字盤を備えた1本。ケースフォルムや文字盤のデザインは、ブランドのアイコンであるトランクが反映されている。また、ル・セルクル・デ・オルロジェと、ブランドのアトリエであるラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンが共同開発した、同ブランド初の自社製自動巻きムーブメント、Cal.LFT023を搭載している。自動巻き(Cal.LFT023)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KRGケース(直径39mm、厚さ10.34mm)。50m防水。414万7000円(税込み)。