シャネルやエルメス、ルイ・ヴィトンの時計っていいんですか?

2022.02.11

Q:シャネルやエルメス、ルイ・ヴィトンの時計っていいんですか?

シャネルやエルメスといった、時計専業メーカーではないブランドが作る腕時計って正直どうなんでしょうか?

広田雅将

2022年2月11日掲載記事


A:3社とも、時計専業メーカーに負けないハイクオリティな時計を作っています

 最近時計好きから注目を集める、時計専業ではないメーカーが作る腕時計。今ではシャネル、エルメス、ルイ・ヴィトンといったメーカーが、魅力的な時計を作るようになりました。そこで耳にするのが、これらのメーカーが作る時計って出来はいいの? という質問。結論を言うと、とても良くなりました。

 もともと、こういったメーカーの多くは時計の製造を外部に委託していました。しかし、2000年代半ば以降、各社はできるだけ自社で生産する体制を整えるようになりました。加えて、時計メーカーから優秀な人材を招き入れることで、たちまち時計の質を改善したのです。

 好例はシャネルでしょう。セラミックスのケースを自社で製造するだけでなく、チューダーなどが設立したムーブメントメーカーのケニッシに出資。同社のムーブメントを載せる最新の「J12」は、スポーツウォッチも顔負けの性能を誇ります。

 エルメスも、名門ムーブメントメーカーのヴォーシェに出資。その後、ケースメーカーや文字盤メーカーを買収することで、スイスでも珍しい自社一貫生産体制を完成させました。同社の作る薄型時計の「スリム ドゥ エルメス」や、スポーツウォッチの「H08」などは、時計好きからも高い評価を受けるものです。

 ルイ・ヴィトンも負けていません。高級時計工房のファブリック・ドゥ・タンを買収することで、同社はミニッツリピーターのような複雑時計や、ユニークな文字盤を製造するノウハウを手に入れました。

 
タンブール

Photograph by Masanori Yoshie
ルイ・ヴィトンは2002年に腕時計の生産部門である「アトリエ オルロジュリー ルイ・ヴィトン」を創設。さらに11年には「ラ ファブリク デュ タン」を買収することで、ハイコンプリケーションウォッチの自社開発/製造ですらも可能とした。また、ラ ファブリク デュ タン ルイ・ヴィトンにはかつての生産部門と文字盤工房のレマン・カドランも統合している。

 生産体制を整えたこれらのメーカーは、近年、独自性を強調するようになりました。セラミックケースを全面に押し出すのはシャネル。またシャネルは、ハイジュエリーの時計でも高い評価を受けています。一方で、時を解釈したユニークな複雑機構を打ち出すようになったのはエルメス。ルイ・ヴィトンは、時計メーカーには決して発想できない複雑時計や、鮮やかな色を強調するようになりました。

 正直、専門ではないメーカーの作る時計は、かつてあまり高い評価を受けませんでした。しかし、各社の本気は、時計の質を大きく高めただけでなく、時計メーカーにはない個性をもたらすようになったのです。時計選びの際に、選択肢に非専業メーカーを加えるのは、もはや常識と言っていいでしょう。

 


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