トップレベルの知名度と、ライト層から好事家まで支持される技術力の高さを備えるオメガ。そんな同社が誇る第一級の実用機「シーマスター ダイバー300M マスター クロノメーター」のセラミックモデルにNATOストラップを組み合わせてインプレッションする。シーマスター ダイバー300Mは言うまでもなく超人気コレクションであり、スタンダードなステンレススティールモデルの完成度も約束された勝利にも近いものだが、果たしてセラミックモデルの実力はいかほどであろうか?
Text & Photographs by Shinichi Sato
2022年4月22掲載記事
オメガ「シーマスター ダイバー300M」人気の理由
インプレッションを始める前に、オメガ「シーマスター ダイバー300M マスター クロノメーターがなぜ人気を集めるかについてまとめておこう。オメガのパブリックイメージは、歴史があり、コレクションにはムーンウォッチの「スピードマスター」を擁して技術力が高く、オリンピックのタイムキーパーを務めるブランドといったところだろうか。
また、取り扱う店舗が多いため目に触れる機会も多く、サービスを受けやすい点も優位だ。シーマスター ダイバー300Mは、注目度の高いダイバーズウォッチの中でも、プロフェッショナル向けの高い性能と、ひと目で分かる特徴のあるデザインで人気を集めてきた。現在のデザインコードは1993年に定まったもので、まもなく30年と長きにわたる採用は人気のバロメーターであろうし、かの諜報機関工作員に支給されていることによる認知度の高さも特筆すべきだろう。
好事家から見ても、外装の完成度は高く、搭載するCal.8806およびその派生ムーブメントは、1万5000ガウスの高い耐磁性能を備えることに加え、現在のオメガの代名詞であるコーアクシャル脱進機を採用するなど加点要素が多い。また、ケースバックから覗くムーブメントの外観も、大きく、そして見栄えのするもので満足度が高い。
これらを総合して検討すれば、シーマスター ダイバー300Mの現在の高い人気は必然的である。
高い人気は高い実力から
いかにオメガのプロモーションが上手くても、実力が伴っていなければ現在の人気はないはずだ。今作を着用してみて、その実力が良く分かった。
ケース径43.5mmと大柄なモデルであるが、ラグの短いケースシェイプによって周長17.5cmの筆者の手首では飛び出しがなく、収まりが良い。どこか有機的な丸みを帯びたデザインは肌当たりが優しく、初めて着用した時から長年愛用してきたようになじんでくれた。このようなフレンドリーさはベゼルにも当てはまり、ベゼルの遊びは小さく、クリックが明確で適度な重さがあり、12角の特徴的なベゼルは指への当たりが優しい上に掴みやすい。またベゼルは、縁が薄い傾斜が付いたもので、高さ方向に飛び出しが小さく、衣服への引っ掛かりを予防している。
シーマスター ダイバー300Mのアイコンの波模様のダイアルは、今作ではわずかにグレーがかったマットなベースに、艶のあるブラックの細い模様が刻まれたものだ。このダイアルの視認性が極めて高い。インプレッション前からシーマスター ダイバーの視認性の高さを評価していたが、しばらく着用してみて改めて驚きを感じたほどだ。
薄暗い筆者の自宅のような環境では僅かに模様が見えるフラットなダイアルで、インデックスと針とのコントラストが高い。直射日光が当たると、細い波模様が光を反射して目立つが、それ以外の部分では光の反射が良好に抑えられており、インデックスと針の蓄光部分がはっきりと目立ち、コントラストが全く悪化しない。PVD仕上げのチタン製のスケルトン時分針は、指し示す時間が明瞭であるのに加えて、仕上げの筋目が僅かに虹を引いている。このあたりの処理の技術やさじ加減の上手さは、現在のオメガの底力を感じるし、評価の高さにつながっている。
ここまでの多くはシーマスター ダイバー300Mの全モデルに共通する内容であった。次にセラミックケースである今作特有の魅力について迫ってゆこう。