鍛え抜かれた“道具感”が魅力のダイバーズウォッチ。シチズン「プロマスター エコ・ドライブ ダイバー200m」をレビュー

2022.04.27

シチズン「プロマスター MARINEシリーズ エコ・ドライブ ダイバー200m」より、「BN0228-06W」をレビューする。視認性や操作性、防水性等、ツールウォッチとして必要とされる要素を高次元まで鍛えぬいた本作は、まさに「好きな人にはハマる」タイプの時計と言えるだろう。日常で酷使するも良し、アウトドア専用としてコレクションに加えておくも良しの1本だ。

野島 翼:文・写真
Text and Photographs by Tsubasa Nojima
2022年4月27日掲載記事

プロマスター MARINEシリーズ エコ・ドライブ ダイバー200m

ラグがないケースのため、腕上での収まりが良い。太い時分針や大型のインデックスは、スーパールミノバがたっぷりと塗布されており、昼夜問わず高い視認性を発揮する。サンドブラストによってざらついた表面を持つスーパーチタニウムケースは、タフな印象に仕上がっている。


現代に甦った、ライトな「プロフェッショナルダイバー」

 シチズンが誇るスポーツウォッチブランドである「プロマスター」。そのコレクションは、ダイバーズウォッチである「MARINE」、パイロットウォッチの「SKY」、フィールドウォッチ「LAND」の3つのシリーズで構成されており、それぞれがプロフェッショナルツールとして特化した性能や機能を持ち合わせている。

 今回レビューするのは、「MARINE」シリーズの「BN0228-06W」である。特徴的なケースデザインを持っているが、これは同社が1982年に発売した「プロフェッショナルダイバー」をオマージュしたものだ。発売当時は世界一とも言われた1300m防水を誇る「プロフェッショナルダイバー」は、ラグのないデザインやケース四隅に配されたプロテクター等、ユニークな外観を有していた。

プロマスター MARINEシリーズ エコ・ドライブ ダイバー200m

シチズン「プロマスター MARINEシリーズ エコ・ドライブ ダイバー200m」Ref.BN0228-06W
光発電クォーツ。スーパーチタニウム+デュラテクトDLC・デュラテクトMRK+DLC(直径45.8mm、厚さ14.3mm)。200m防水。6万500円(税込み)。

 本作のケースに採用されているのは、シチズンが独自に開発したスーパーチタニウムである。これはチタンに表面硬化技術デュラテクトを施し、ステンレススティールの約5倍の硬さを実現したものである。同社は、1970年に他社に先駆けてチタンケースの腕時計を発表しており、以来50年以上にもわたる研究を重ねた結果、実用性に優れたチタンケースを安価に生産することが可能となったのだ。

 ムーブメントは、光発電式クォーツであるエコ・ドライブを搭載する。通常のクォーツムーブメントの場合は数年おきに電池交換が必要となるが、エコ・ドライブの場合は基本的にメンテナンスフリーである。筆者は購入して10年以上が経過したエコ・ドライブ搭載モデルを所有しているが、二次電池がへたっているような印象はない。ユーザーにとっては定期的な電池交換が不要という便利さがあるが、その名に「エコ」と冠しているように、電池の廃棄を抑えるという面で環境への配慮もなされており、時計として初めてエコマーク商品にも認定されている。ただし、いくらメンテナンスフリーとはいえ、本作のようなダイバーズウォッチをダイビングに使用する場合には、稼働具合に関わらず定期的な点検を行い、劣化したパッキン等を交換する必要があることを付け加えておく。


優れた視認性と操作感を併せ持つ

 まずは外観を見ていく。先述の通り、全体のデザインは「プロフェッショナルダイバー」を踏襲している。表裏で分割式となっていたミドルケースは一体となり、それに伴ってケース4カ所にあった固定用ビスは廃されたが、プロテクターやローレット加工が施されたリュウズ、ラグのないケースは、忠実に再現されている。ダイバーズウォッチは、求められる性能や機能から自然とデザインが似通ってきてしまうものであるが、本作はシチズンならではのオリジナリティあふれたデザインである。

 サンドブラストが施された艶消しのスーパーチタニウムケースが与える印象は独特だ。最初に本作を手にしたとき、筆者はそれを時計というよりも工具等の道具に近いもののように感じた。語られずともひとつひとつのディティールの意図が分かるような飾り気のなさは、単機能に特化した道具からにじみ出る雰囲気によく似ている。恐らく、一部の人間にとっては琴線を刺激してやまないものに違いない。

 ケース四隅には突起が設けられ、ベゼルの不用意な回転を防ぐプロテクターの役割を担っている。ダイバーズウォッチのプロテクターと言えば、セイコーの「ツナ缶」の愛称で親しまれている外胴が有名であるが、本作のプロテクターはそれよりも控えめである。

プロマスター MARINEシリーズ エコ・ドライブ ダイバー200m ケースサイド

 ダイアルはブラックとグリーンの迷彩模様に仕立てられている。本作は、ダイアルを透過した光によって動力を得るエコ・ドライブを搭載しているが、ダイアルにはソーラーセルの存在を匂わせるようなものは見えない。時分秒の3本の針は、それぞれ十分なクリアランスを保って取り付けられている。一般的にスポーツウォッチは、針と針との間にある程度の余裕を持たせる。衝撃によって針がたわみ、針同士が干渉することを防ぐためである。生粋のダイバーズウォッチたる本作も、その文法に則っているというわけだ。針間が大きくなると結果的にダイアルと風防までの距離が大きくなり、間延びすることを懸念してしまうが、本作は立ち上がったチャプターリングによって、そのような印象にはなっていない。

 ISO6425 2018:ダイバーズウオッチに規定された仕様に合わせ、12カ所のインデックスにはスーパールミノバが塗布されている。3時位置はデイト窓に押されて窮屈だが、6時、9時、12時は三角形、それ以外はドット型となっているため、とっさに読み間違えるようなこともないだろう。ただし、デイト表示が比較的小さく、ディスク自体が奥まった位置に配されているため、日付の確認には少々苦労が伴う。

 ベゼルは外周の凹凸がはっきりとしているため、しっかりとグリップして回すことができる。加えて単に回しやすいだけではなく、回転に要する力が少ないことも本作の特徴だろう。例えるのであれば、高価格帯のダイバーズウォッチでは、精密な印象を受けるようなチキチキチキやカチカチカチといった感触のものが多いが、本作の場合はもう少し軽やかなシャコシャコシャコという具合である。多少ゴミが噛もうが問題なく動きそうなタフな印象を受ける。1回転60クリックのため、1分単位で素早くセットできる点も実用的だ。ベゼルの目盛りは、彫った後にグリーンの塗料が流し込まれているが、彫り自体が深いため簡単に塗料が抜けてしまうようなことはないだろう。

ダイバーズウォッチ 装着感

ケース四隅のプロテクターは、ベゼルを保護する役割を持つ。逆回転防止機構付きのベゼルには、掴みやすいように大型の凹凸が備わっている。ベゼルの回し心地は軽快であり、着用したまま片手で容易に操作することができる。

 ベルトはウレタン製のものが装着されている。非常にしなやかであるため、着け心地は良さそうだ。尾錠はダイバーズウォッチらしく大型のものが誂えてある。ソリッドな質感はケースの仕上げに合わせたものだ。

 大型のリュウズは、周囲に施されたローレット加工によって掴みやすくなっている。ねじ込み式リュウズを採用しているため、操作の際には6時方向にリュウズを回し、ねじ込みを解除する。1段引いて日付調整が可能となり、もう1段引くことで時刻調整のポジションとなる。リュウズを回した感触に引っ掛かりなどはなく、スムーズに調整することができる。