アルプスの壮大な自然から着想を得た「アルパイン イーグル」は、ブランドを経営するショイフレ家3代の深い絆が生んだコレクションだ。バリエーション豊かなモデルが毎年披露され、2022年は新たなふたつのモデルを投入した。新世代のラグジュアリースポーツウォッチは進化を遂げたのだ。
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「アルパイン イーグル」コレクションで最もスリムなケースを持つ本作。イーグルの目の虹彩を表現したパターンは、既存モデルのように文字盤中心からではなく、6時位置のトゥールビヨンキャリッジから放射状に広がっている。自動巻き(Cal.L.U.C 96.24-L)。25石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約65時間。ルーセント スティール A223(直径41mm、厚さ8mm)。100m防水。1422万3000円(今夏発売予定)。
土井康希(本誌):文 Edited & Text by Kouki Doi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2022年7月号掲載記事]
アルパイン イーグルの新たな選択肢
2019年、ショパールの新たなアイコンとして誕生した「アルパイン イーグル」。ステンレススティールのケースとブレスレットが一体になったラグジュアリースポーツウォッチだ。その特徴的なデザインは、1980年に披露され、ロングセラーとなったモデル「サンモリッツ」の系譜を継いでいる。
コレクションの誕生から3年を経たアルパイン イーグルは、この短期間でラインナップを充実させた。3針+カレンダーというオーソドックスな構成を持つ「アルパイン イーグル ラージ」に始まり、サイズを抑えたユニセックスモデルの「スモール」、フライバッククロノグラフを搭載した「XL クロノ」、5万7600振動/時で時を刻む高精度機「ケイデンス8HF」、外装に貴石をちりばめた「フローズン」など多岐にわたる。毎年「次は何が来るのか?」と期待させられるアルパイン イーグルだが、2022年はふたつの新作を披露。それが「アルパイン イーグル フライング トゥールビヨン」と「アルパイン イーグル XL クロノ」のラバーストラップ仕様だ。
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コレクション初のラバーストラップモデル。スイス最大の氷河、アレッチ氷河をイメージした「アレッチブルー」(右)と、夜の山に広がる暗闇から着想を得た「ピッチブラック」(左)の2色展開だ。自動巻き(Cal.Chopard 03.05-C)。45石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。ルーセント スティール A223(直径44mm、厚さ13.15mm)。100m防水。232万1000円(今秋発売予定)。
前者は、コレクション初のフライングトゥールビヨン搭載機であり、6時位置で機能する複雑機構をスポーティーな外観の中に違和感なく落とし込んだ。19年発表の「L.U.C フライング T ツイン」で初採用されたキャリバー L.U.C 96.24-Lを積む本作だが、外装のデザインに合わせてトゥールビヨンのキャリッジに仕様変更が加えられている。アームの中央がわずかにくびれた華奢なものから改められ、アルパイン イーグルの時分針同様に両サイドが深く面取りされている。C.O.S.C.認定クロノメーターとジュネーブ・シールを同時に取得しており、精度、装飾ともに申し分ない仕上がりだ。また、マイクロローター自動巻きの傑作と名高いL.U.C 96.01-LをベースとしたL.U.C 96.24-Lの3.3mmというムーブメント厚は、時計全体の薄型化にも大きく貢献した。厚さがわずか8mmまで抑えられたケースは、既存の「ラージ」モデルと比較して圧倒的にスリムになったことは一目瞭然だろう。
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後者は、これまたコレクション初のラバーストラップを採用したモデルで、ブレスレット仕様のXL クロノにはなかった〝軽快さ〞が生まれた。一体型ラグのセンターキャップからつながるフォルムがラバーでも再現されており、ケースと違和感なくシームレスに取り付けられている。ショパールはストラップにラバー素材をいち早く取り入れたブランドであり、1995年発表の「ミッレ ミリア」にタイヤのトレッドパターンを刻んだラバーストラップを組み合わせたのが最初の試みだ。柔軟性に富む本作のラバーは耐久性に優れ、よりモダンでスポーティーなモデルに仕上がった。「アルパイン イーグル」コレクションに新たな一面を与えたモデルとなった。
加えてこれらの新作は、最大約70%のリサイクルスティールを含有する「ルーセント スティール A223」を外装に使用している。2回溶融を行うことで高硬度が得られ、金属アレルギーを引き起こしにくいうえ、貴金属のように明るく光を反射するという特性を持つ。他にもストップセコンドや十分なパワーリザーブ、高い視認性、快適な装着感など、美観だけでなく実用性が考慮されている点も共通だ。ショパールは、進化を続ける複雑系の〝ラグスポ〞に軽快さを与え、より選択肢を広げたのだ。
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